第九十七話 協調性、未来への一歩のため
カキ、シーラ、ニコラスの三人は、二次試験にようやく挑むことになった。
正直なところ、シーラは二人をまとめると決意したけど、不安でいっぱいだった。カキはともかく、ニコラスを納得させる術を知らない。というよりも、わからない。
結局のところ、無理だとならなければニコラスは自分の意志を曲げてはくれない。
だから、シーラはこう声をかける。
「二人とも、絶対に二次試験に受かろうね。協力して勝とうね」
受かるということ、勝つということを絶対条件にする。そうすれば、ニコラスが協力してくれる可能性が上がる。
何より、今回は中級戦闘魔術師への昇格が懸かっているのだ。こんなところで落とされるわけにはいかないと、ニコラスだって考えているはずだ。
きっと、大丈夫。きっと、うまくいく。
「おう!」
「当然だ」
二人の返答には、揺るがない自信がある。落ちないという、負けないという。
「それでは、始め!」
カキたちの三次試験に進出するための、中級戦闘魔術師になるための一歩のための二次試験が始まった。
カキとニコラスの受かりたい、勝ちたいという気持ちは、シーラが想像しているよりもずっと、大きかった。ひしひしと伝わるほどに、二人の攻撃は重みを感じたし、揃っていた。
シーラも、二人に負けてはいられない。二人の攻撃をサポートするために、シーラは魔術を発動する。
カキとニコラスとは違い、シーラは後方支援を得意としている。前に出れば、二人の邪魔になると思い、サポートに徹する。
だけど、ニコラスはともかく、カキの攻撃が一向に当たらない。魔術の成功率も以前よりは上がっているが、低いことには変わりがない。
「カキ、お前は体術に集中しろ」
ニコラスは、カキにそう指示した。
このままでは、受かりはすれど、負ける可能性が高い。それほど、相手に通用していない。
「どうすんだよ?このままじゃ負けるぞ」
「じゃあ、お前が戦うのをやめればいい」
「それじゃあ、試験に受からないでしょ!」
カキとニコラスの会話に、シーラは口を挟む。
妖精も杖も使えないこの試験。相手は一人といえど中級以上の戦闘魔術師。勝つためには、実力も必要かもしれないが、戦略が重要となるだろう。
シーラは、勝つために思考を巡らせていた。
何としても、勝たなければならない。勝たなければ、二人が今後協力してくれることがさらに減るかもしれない。それは避けたい。
「────・・・ニコラス!」
シーラは、ニコラスにナイフを投げた。
ニコラスはそれを受け取り、シーラを見る。
「・・・そういうことか」
シーラがニコラスにそのナイフを投げたわけ。それはわかった。
だけど、なぜニコラスなのか。シーラ本人が相手に投げつけてもいいはず。
違う。これは、ニコラスでないとダメなのだ。カキにナイフを当てないように相手に投げつけられるのは、カキがどう動くかわかる、カキの動きに合わせられるニコラスでないと。
ニコラスは、相手にナイフを投げつけるタイミングを計っていた。完全に当てる必要はない。かするだけでもいいのだ。
ニコラスは、相手に向かってナイフを投げつけた。
相手の腕をかすり、少し血が滲んだ。
「・・・!?」
相手は急に動きが止まり、ぐしゃりと地面に倒れた。
「思ったよりも、きつい薬を塗ったな」
「シーラ特製の痺れ薬よ」
「え、何?何?」
カキは頭がついていっていなかったが、三人で協力して無事に二次試験に受かることができた。
次は、個人戦の三次試験。




