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魔術師たちのカナデアイ~交錯する想いと戦い~  作者: 衣月美優
第五部 中級戦闘魔術師昇格試験
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第九十八話 人々の期待


 三次試験は、二次試験の一週間後に行われる。

「ジョシュア」

 ビトの母、フィデリアはカキの父、ジョシュアに声をかけた。

「また勝手に邪魔させてもらってるよ」

 フィデリアが一方的に話し、ジョシュアは何も答えない。今はそれが普通だった。

「カキが、中級戦闘魔術師昇格試験の三次試験に出るよ。もちろん、うちの子もね。見に行かないのかい?」

 ジョシュアは黙って、フィデリアに背を向けたまま座っている。

「カキは〈神の子〉〈救世主〉だ。だから、厳しく育ててきたんだろう?そんな息子が中級に昇格しようとしている。アンタは見るべきじゃないのかい?」

 ジョシュアは何も反応しない。

 フィデリアはため息を漏らした。

「アンタはいつまでそうやっているつもりだい?私はアンタのことが嫌いだからね、好き勝手言わせてもらうけど・・・それでも、カタリナはアンタを愛したんだ。アンタと、そして、生まれてきたカキと、幸せな家庭を築きたいと、カタリナは常々思っていた。アンタは、カタリナと、カキと、幸せになろうとちゃんと思ってたのかい?」

 ジョシュアは、カタリナの名前に少しだけ肩を揺らした。

「カキは子どもながらに、先を見据えているよ。アンタなんかより、ずいぶんしっかりしている。母親を喪っても、ちゃんと前を見て進んでるんだ。それなのに、父親であるアンタはそんな脱け殻のようになってていいのかい?」

 ジョシュアは何も答えない。

「私は、カタリナとカキの味方だからね。アンタ見てると、イライラする」

 フィデリアはそれだけ言うと、家を出ていった。




 カキは〈神の子〉〈救世主〉として、国で有名だ。そのほとんどが、カキが人より劣っていることなど知らない。

 だから、誰もが今回の三次試験を楽しみにしていた。

 三次試験は個人戦で、競技場で行われる。観覧自由の盛り上がる試験として、有名だ。

 〈神の子〉〈救世主〉の力を見れると、国中が活気に溢れていた。

「今回の試験、〈神の子〉〈救世主〉が出るんだろ?」

「楽しみだよなぁ。どれくらい強いんだろ?」

「毎年、この試験を見に行くのは楽しみだけど、今年は特に楽しみだわぁ」

 何も知らない人々は、頬を紅潮させて口々にそう言う。

「何か、お前のことずっと見てきてたから忘れてたけど・・・お前って、〈神の子〉〈救世主〉なんだよなぁ」

「な、何だよ?わかってるよ、オレだってそう呼ばれるようなやつじゃないって」

 ビトの言葉に、カキは顔をひきつらせる。

「けど、国中の人が楽しみにしてるぜ?お前の試合。こりゃあ、相当頑張んなきゃなぁ」

「・・・何か、面白がってるだろ、お前」

 カキは、国中の人の期待に押し潰されそうになっているというのに。

「あと三日かぁ。三次試験は個人戦。お前と戦う可能性もあるわけだよな」

「三次試験は勝たなきゃ受かれねぇんだよな?」

「三試合中、二試合に勝たなければ、中級戦闘魔術師には昇格できない」

「うげっ・・・勝てるかなぁ?」

「なーに弱気になってんだよ?らしくねぇなぁ」

「みんながオレに期待してるからだろ!?」

 個人戦となると、カキ一人の実力で勝たなければならない。不安にもなる。

 〈神の子〉〈救世主〉ということで、人々の期待は大きい。絶対に負けるわけにはいかない。そんな中で勝てると自信を持って言えるほど、カキは強くはない。

「心配すんなよ。実力がどうであれ、お前はお前にしかないもんを持ってるからよ」

 ビトは、カキの肩を叩き、そう言った。


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