第九十二話 技術を磨け
カキたちは、結果的に何もすることなく仕事が終わってしまい、国に帰っていっていた。
カキはいつもの調子が戻ってきて、とりあえず元気そうだ。
「それじゃ、今日は解散」
国に着き、ブレットが解散を促した。
「先生、今回の件、私からもベルトランさまに報告しておきます」
「あぁ、頼む。オレも、あとで報告書を提出しに行くよ」
ノーマは、急いでベルトランのもとへと向かった。
「魔法学校襲撃事件の実行犯、か」
ノーマから話を聞いたベルトランは、難しい顔をしていた。
「彼らが何を目的にしているのか、いまだにわかっていません。今回のことも、この国への小さすぎる恩を売っておくとは言っていましたが、ただの戯れ言に過ぎません」
「そうだな。まだまだ警戒が必要だ」
「────・・・中級戦闘魔術師昇格試験の日程、遅らせてもいいのでは?今やるのは危険かと。幸い、今年はこの国だけでの開催ですので、支障はきたさないかと」
ノーマは、言いづらそうに提案した。
「いや、こんなときだからこそ、より強い戦闘魔術師を増やすために、遅らすわけにはいかない。この国を守るための力だ。少しでもはやく、多くの人を強く育成したい」
ベルトランの言葉に、ノーマは反論することができなかった。
ノーマは、ベルトランのそばでひざまずき、宣言した。
「では、私は命に代えても、貴方さまをお護りいたします。必ず・・・!」
「命には代えるな。お前も、この国に必要な戦力なのだから」
「国王のほうが、国にとっては大事です」
ノーマは、固く誓うのだ。ベルトランを必ず護ると。そのために、ノーマはこの国にいるのだと。
一週間ほど経って、ブレットはカキたちにある書類を渡した。
「二ヶ月後、中級戦闘魔術師昇格試験が行われる。今渡したのは、参加を表明するための書類だ。どうせ、お前たちは出たいんだろ?」
「中級戦闘魔術師昇格試験・・・!?そりゃ、もちろん!」
カキは、目を輝かせて答えた。
中級戦闘魔術師昇格試験は、一年に一度だけ行われるもので、ほかの国と合同でやることもある。その名のとおり、中級戦闘魔術師になるための試験だ。
中級戦闘魔術師になれば、今までよりさらに難易度の高い仕事をこなせるようになる。それに、行動範囲も広がる。
「ま、出たいと言うならべつに止めはしないが・・・中級戦闘魔術師昇格試験は、かなりの難易度だ。受かりたいなら技術を磨いていかなければならない。それに、今年はこの国だけで行うから、少し難しいぞ」
「どういうこと?」
「この国の中だけでとなると、大体手の内がわかっている。とくに、同じ世代ばかりが受けるからな。同期と戦うことにもなるだろう。手の内がわかるということは、一見有利にも思えるが、逆に言えば癖や弱点を知られているから、そこを突かれやすくなる」
「なるほど・・・」
ブレットの説明にカキは、うんうん、と頷いた。
「だから、技術を磨くのはもちろんだが、自分の戦闘スタイルを一度見直しておくことも必要だ。自分で自分の戦い方は把握しておけよ。後々、役に立つから」
「わかった!」
「というわけで、今日から仕事はいつもどおりにやるが、それに加えて修行もしていく。お前ら、中級戦闘魔術師になりたいなら、しっかりついてこいよ」
「おう!」
「はい!」
そうして、カキたちは己の戦闘スタイルを把握するため、そして、技術を磨くために、仕事をこなしながら合間を縫って修行に明け暮れることになった。




