↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師たちのカナデアイ~交錯する想いと戦い~  作者: 衣月美優
第四部 卒業試験、下級戦闘魔術師へ
90/657

第八十九話 夢属性魔術の影響


 ノーマによって、カキたち三人はラルフやララと少し離れたところにいた。

 カキたちは半分意識を失っていて、目が虚ろだ。

「“フレイガーベ”」

 ノーマは、解除の魔術を唱えた。

「あ・・・」

「・・・!」

「大丈夫?」

 意識が戻ってきたシーラとニコラスに、ノーマは声をかける。

「な、何・・・?」

「夢属性魔術・・・幻術の類いね。精神的に追い詰めるものだから、見た目に傷はできないけど・・・二人は大丈夫?」

「あ、はい・・・」

「・・・」

 ニコラスは答えないが、すぐに意識が戻ってきたので、まだ大丈夫なほうだろう。

 問題は────・・・

「カキくん」

 夢属性魔術は解けているはずだが、いまだに夢の中をさ迷っているような感じがする。どこを見ているのかもわからず、ボーッとしている。

「カキくん」

 今度は声をかけるだけでなく、肩を軽く叩いた。

 カキは、ビクッとし、ゆっくりと顔をあげた。

「大丈夫・・・?」

 シーラやニコラスに訊いたときよりも、慎重に、丁寧にノーマは訊いた。

 カキは何も答えない。ノーマの声がちゃんと届いているかも怪しい。

 カキの様子を見ながら、ノーマはゆっくりと優しく話す。

「ここでは何も起きていないわ。大丈夫。誰も何も起きていない。ブレット先生も、まだ戦っているけど大丈夫」

 そして、今度は少し真剣な表情になって言った。

「これは、余計なお世話かもしれないけど・・・二人には話してみてもいいんじゃない?これからも一緒に活動する以上、二人も知っておいた方がいいと思うし。もちろん、無理強いはしない。言いたくなければいいの。あなたが辛くないほうを選んで」

 カキは相変わらず何も答えない。

 でも、ノーマの声が聞こえていないわけではないと思う。理解も、たぶんできている。

「じゃ、私は少し様子を見てくるね。先生のことも気になるし・・・あまり遠くへは行かないから、あなたたちはここを動かないでね」

 ノーマはそれだけ言うと、カキたちのもとを離れていった。

 ノーマが離れていってから少しして、カキはやっと口を開いた。

「オレさ、今、ビトの家に住まわしてもらってるんだ」

「え?」

 突然の言葉に、シーラは戸惑う。

「一週間くらい前、母さんが死んだんだ」

「え・・・」

 今度はシーラだけでなく、ニコラスも少し目を見開いた。

「病気だったんだって。オレはそんなこと全然知らなかった。父さんも・・・たしかに、最近様子がおかしいとは思ってたけど、まさか病気だったなんて」

「うそ・・・だって、カキ、ちゃんと仕事に来てたじゃない。いつもと変わんなかったし・・・本当は、無理してたの・・・?」

 シーラは驚きを隠せず、カキに訊く。

「ちゃんと仕事に来てたのは、じっとしてられなかったから。それに、一人でいたくなかったから・・・母さんが死んだのを知ってるのは、うちの親族とブレット隊長とノーマ先生と、ビトん家くらいだ」

 カキの言葉に、シーラは何も言えなかった。


 ノーマはブレットの様子を見に行くために、駆け出していた。

 走りながら、ずっと、カキのことを考えていた。

(あの子たちに手出しはさせないと言っておきながら、私は何をしているの?夢属性魔術は、ただでさえ子どもには影響力があるというのに・・・)

 カキの母の死を知っていたがために、ノーマは不甲斐ない想いを抱えていた。

 でも、済んでしまったことを悔やんでばかりはいられない。前を向いて、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしなければ。

 彼らをもっとちゃんと守れるように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。