第八十七話 賊討伐、だったはずが
次の日の朝、カキたちがそろそろ賊討伐のために出発しようとしていたときだった。
「賊がやって来た!」
慌てふためいた様子で、村人がカキたちのもとへやって来た。
カキたちが表に出ると、たしかに賊が六人やって来ていたが、どうも様子がおかしい。村人よりも賊のほうが怯えた顔をしているのだ。顔が真っ青で、今にも倒れてしまいそうに。
しかも、よく見てみると傷を負っているようにも見える。
「止まれ。お前たちが鉱山に居座っている賊か?」
ブレットが賊の前に立ち、尋ねる。
「あ、あぁ、そうだ。だけど、もうあそこには手を出さねぇ。だから、オレたちを助けてくれ!」
六人のうちの一人がそう叫ぶので、ブレットは眉間にシワを寄せた。
「助けてくれ?一体、何から助けろって言うんだ」
「あいつらが何者かは知らねぇ。わかるのは、恐ろしく強いやつらだってことだ。オレたちの仲間の何人かが殺された。オレたちだけは、何とか逃げ出せたんだ」
「それが本当だとしても、お前たちは拘束させてもらうぞ」
「あぁ、構わねぇ。命さえ助かるなら・・・」
賊たちは、自らの意思で縄をかけられていった。
「さて、賊討伐じゃなくなると、オレたちの手には終えない仕事になるかもな」
「えー!じゃあ、何にもしないで帰るのか?」
「それは、状況次第だな。ノーマ、様子を見てきてくれ」
「はい」
ノーマが様子を見に行っている間、カキたちは賊たちに詳しい話を訊くことにした。
程なくして、ノーマが帰って来た。
「どうだった?」
「一度、国に帰ったほうがいいかと思います。あれは私たちだけでは、ましてや下級戦闘魔術師の彼らに戦わせるには無理があります」
「そんなに強そうなのか?それとも数が多いのか?」
「数は、たぶん、十人ほどです。でも、あいつらは強いです」
「あいつら・・・会ったことがあるのか?」
ノーマの口ぶりに、ブレットは訝しげに訊いた。
「・・・はい。あいつらは、魔法学校襲撃事件の実行犯です」
ノーマの言葉に、カキ、シーラ、ニコラスは、顔色を変えた。
「魔法学校襲撃事件・・・たしか、お前らも遭遇したんだよな?」
ブレットの問いかけに、カキは何度も首を縦に振る。
「たしかに、帰ったほうが良さそうだな。ただ・・・何が目的かわからない以上、この村にやって来ないとも言い切れない。賊が六人もここに逃げ込んでるんだ。追ってこないとも限らない」
ブレットを除く、四人の顔が強ばった。
「それって、戦うってことか?」
「できればそれは避けたい・・・が、やむを得ない状況があるってことだ」
カキの言葉に、ブレットは淡々と答える。
「でも先生・・・」
「わかってる。基本はオレとお前で戦う。三人を守るためにな。できるだけ被害がでないようにやれれば言うことはないが」
「難しいこと言いますね」
「臨機応変に対応するしかないからな」
ブレットとノーマの気持ちも固まり、カキたちは国へと戻ることになった。
村を出て、鉱山の洞穴を見た場所に近づいた頃、やつらは姿を現した。
「これはこれは、国王のお気に入りとその御一行さん」
「あら、やだ、ぼくたちもいるじゃない」
銀髪の男、ラルフと、妖艶な声を響かせるララだ。
「ねぇ、ラルフ。戦ってもいいでしょう?」
「・・・なるべく、はやく終わらせろ」
「ふふ、努力するわ」
二人の会話に、ブレットとノーマは身構える。
魔法学校襲撃事件の危機が、また目の前に。




