第八十六話 妖精との合わせ技
夕方になって、ブレットによるカキたちの修行が始まった。
修行のために、わざわざ森の中に入る。
「じゃ、さっそく始めていくぞ。まずは、この木をできるだけはやく倒してみろ。体術でも魔術でも、自分が得意なことでいい。ただし、杖による武器は使わないこと」
ブレットの指示で、カキたちはそれぞれ木に攻撃を仕掛けた。
「“アクア・コーゲル”」
「“フェイル・カッター”」
ニコラスとシーラは、難なく木を倒した。
「“ドナ・ブリック”」
カキは木に向かって突進していった。
“ドナ・ブリック”は間違いなく、木に当たった。
だけど、威力が弱くて見た目には何の変化もない。中は多少のダメージを受けているのかもしれないが、まったく倒れそうにない。
カキは意地になって、“ドナ・ブリック”を木に当てまくった。
数十回当てた頃、ようやく、ゆっくりと木が倒れていった。
「・・・カキはもう少し頑張れよ。じゃ、次。今度は妖精と共に倒してみろ」
「妖精と?」
「そうだ。ま、言葉じゃわからないだろうから、実際に見てもらう。ノーマ」
「えっ、私ですか?」
突然振られたノーマは、驚いてブレットを見る。
「ひょっとして、私のことも試してます・・・?」
「・・・」
「・・・わかりました」
ブレットは何も答えないので、ノーマは諦めてやることにした。
ノーマは、深呼吸をしたあと、妖精の名を呼ぶ。
「マリリ」
マリリはノーマの前に現れ、体から水を放出した。
ノーマはマリリのうしろに手をかざした。
「“アクア・ドラル”」
ノーマが口にした途端、マリリを中心に鋭い竜巻のようなドリルのような水流、それも激流が発生し、木を貫通させた。その後、木は支えを失い、倒れていった。
「とまぁ、こういうものだ。妖精と共にやることで、威力が上がったり、妖精としかできない魔術を発動できる」
ブレットの言葉に、そして、ノーマとマリリの魔術に、カキはごくりと喉を鳴らす。
ノーマが出した魔術は、マリリとノーマにのみ使える魔術だ。魔術の名前も、自分たちで決める。
「今はまだここまでできないだろうが、妖精と力を合わせると今まで以上の力が出る。妖精との意思疎通なんかもしっかりするように」
「い、意思疎通・・・」
カキは、顔をひきつらせた。
トラルとうまくやっていける気が、カキにはまったくしない。ずっと、トラルはカキから離れたところにいて、近づいてこようとしないのだ。意思疎通なんてできるわけがない。
「トラル」
トラルがいるであろう方向に向かって声をかけるが、返事はない。
「なぁ、話だけでもいいからさ」
カキはいろいろと声をかけたが、一向に返事はない。
カキは、ふとニコラスやシーラのほうに目をやった。
「“シャドウ・ナーデル”」
ニコラスはさっそくシドドと新しい技をつくったようだった。名前まで決まっている。
“シャドウ・ナーデル”は、影でできた無数の鋭い針が勢いよく降ってくる魔術のようだ。
「さっそく新技をつくるとは・・・さすが、学年トップで卒業した天才児ということか」
ブレットは、ニコラスの様子を見ながら呟く。
一方で、シーラはもとからある魔術の威力を上げるために、フワラと試行錯誤しているようだった。
また、カキだけが置いていかれているようでカキは焦りつつも、トラルが歩み寄ってくれなければどうしようもないと落ち着こうともしている。
カキがトラルと共に戦える日は来るのだろうか。




