第八十三話 ブレットからの試練
「それじゃ、スタート」
その言葉を聞くと同時に走り出したカキとニコラスは、それぞれブレットに攻撃を仕掛けた。
カキは体術を、ニコラスは魔術を、それぞれが得意なことでブレットに立ち向かおうとしていた。
だが、ブレットはそれをゆるりとかわす。べつに動きが機敏なわけでもないけれど、確実に二人の攻撃を避けていた。
「そんなんでこれからさき、やっていけんの?」
さらなるブレットからの挑発的な言葉に、カキとニコラスはスピードを、威力を上げる。
一方で、シーラはカキたちの戦いを見ながら、どう動くべきか、どうすることが一番いいのかを考えていた。
だけど、いい案は思い浮かばない。
「あぁ、いい忘れてたけど、オレは攻撃しないからね」
ブレットはゆるりと攻撃をかわしながらそう言った。
「あくまでオレは、お前たちの今の力を見たいだけだから」
ブレットは喋っているし、動きが鈍いし、やる気もなさそうなのに、隙という隙が見つからない。隙だらけなように見えて、実は隙がないのだ。
「それにしても、お前たちは見込みがあるように見えないな。見込みゼロと判断したら、日暮れ前に終わるぞ」
「まだ始まったばっかじゃんか!」
「そうだ。オレはまだ、こんなもんじゃない。こんなところでは終わらない」
こんなときばかりは、カキとニコラスは息が合う。攻撃も単調ではあるが、打ち消したりしてしまわないように攻撃を繰り出している。
今なら、とシーラは思った。
「カキ、ニコラス!考えがあるの」
シーラの言葉に、カキとニコラスは一旦うしろに下がった。
カキとニコラスはシーラの作戦を聞き、どうするかを三人で話し合った。
「正直、相手は上級戦闘魔術師だし、この作戦がうまくいくかわからない」
「けど、やんなきゃだろ?」
「虚さえつければいい。オレとカキでうまく誘導すればいい」
三人は手短に話を終わらせ、カキとニコラスは再びブレットに向かって駆け出した。
走りながら二人は、首にかけた小さな杖を大きくさせ、武器に変える。
「“ブライト・シャープ”」
「“シャドウ・フロー”」
カキの剣は光に包まれ、ニコラスの剣は黒い影に包まれる。
カキとニコラスはその剣を、同時にブレットに向かって振りかざした。
光と影が、鋭利な刃のようになってブレットに襲いかかる。
ブレットはその両方をかわすために、上空に飛んだ。
だが、さらにニコラスが上に向かって剣を振り、追撃する。
「・・・!」
ニコラスの攻撃を避けようとしたブレットだったが、それを避けたばかりに、シーラが仕掛けていた罠に捕まってしまった。
「“ペタル・ハリケーン”」
花びらの竜巻の中に、ブレットは放り込まれた。
花びらたちはブレットの回りを囲むように舞い散り、鋭くブレットに刺さる。
「────・・・合格だ」
ブレットは“スコール・クラッシュ”で花びらたちを吹き飛ばした。
カキとシーラは、合格、という言葉に喜び、ホッとしていたが、ニコラスは不満そうな表情をしていた。
「合格?上級戦闘魔術師のアンタなら、魔術に捕まる前に対処できたはずだ。なぜ、それをしなかった?」
「オレは、お前たちの今の力を見たいと言った。それがわかったからいいというのもあるが、最大の理由がある」
「最大の理由?」
ニコラスは怪訝そうな表情を浮かべる。
「協調性だよ。一人で戦うのではなく、仲間と共に戦えるか。お前たちが協力してオレに挑んできたから、オレはあの罠を避けなかった」
ブレットの言葉に、まだ納得してはいないようだが、ニコラスは黙った。
「ま、これからも協調性を大事にしてくれ」
ブレットの言葉に、カキとシーラは大きく頷いた。




