第八十一話 卒業
今日は魔法学校の卒業式。
「卒業できんのは嬉しいけど、この服が気に入らねぇ」
カキは自分の服装を見ながら、そう言った。
生徒たちはもちろん、教師や保護者たちも正装をする。その中でもカキたち王族は、さらにその上に王族のコートを羽織らねばならず、カキにはそれが邪魔で仕方ない。
「おはよう、カキ」
「ラウラ・・・あぁ、そうか、お前もか」
「何が?」
「そのコート。邪魔だよなぁ、これ」
「そう?べつに何も気にならないけど」
カキとラウラでは感覚が違うのだ。共感できるとは限らない。
「カキ、妖精は?」
卒業式では、戦闘コースの生徒たちは自分の妖精も連れていかなければならない。
「あー・・・いるにはいるけど・・・」
カキは、トラルのいるほうを指差した。
「・・・何であんなに離れたところにいるの?」
「オレのことが気に入らねぇんだよ、あいつは」
「へぇ・・・ところで、名前は?」
「トラル。光の加護を持つ妖精だって」
今日は実質、みんなの妖精たちを初めて見る。
教室の中は、いつものクラスメイトの顔と見知らぬ妖精たちで溢れていた。
「ラウラちゃん、君の妖精は?」
カキとラウラが話していると、ケヴィンがやって来た。
「この子、よ。フロウ。氷の加護を持つ妖精」
「わぁ、ラウラちゃんに似てきれいな妖精だね」
「お前の妖精は?」
カキが訊くと、ケヴィンは無駄にカッコつけて妖精を見せてきた。
「この子さ。名前はフィフィ。火の加護を持つ妖精だよ」
「・・・何か、呆れた顔してね?」
『ケヴィンの女好きに呆れているのだよ』
「心外だなぁ、フィフィ。僕は女の子たちを愛でているだけさ」
『何が違うんだ・・・』
ケヴィンとフィフィは、性格が正反対なようだ。すでにフィフィが疲れきっているようにも見える。
「みんないるか?移動するから廊下に並べ」
エベラルドがざわついた教室に入ってきた。
ついに、卒業式が始まる。
卒業式は厳かに終わった。
カキたちは教室に戻り、エベラルドの話を聞く。
「今日でお前たちも魔法学校を卒業だ。だが、あまり卒業の余韻にも浸ってはいられない。明日からお前たちは下級戦闘魔術師として、それぞれ上級戦闘魔術師のもと、仕事をこなしていくことになる。明日、チーム分けがあるからここに集まるように」
エベラルドはいつもどおり、みんなに話をする。
「まぁ、卒業してもお前たちがオレの生徒だったことには変わりはない。これからの活躍を期待しているぞ」
エベラルドから生徒たちに送られた言葉は、カキたちの心に染み込んだ。
エベラルドの話が終わると、みんな友達と写真を撮ったり、明日からのことを話したり、笑顔で過ごしていた。
涙を流す者はいない。今生の別れではないから。
涙は、いつかの別れのときまでとっておく。できれば、その日はずっとずっとさきであることを願って。
「ただいまぁ」
「おかえり、カキ。それから、卒業おめでとう」
カキが家に帰ると、カタリナがいつものように温かく迎えてくれた。
「いよいよ明日から下級戦闘魔術師ね。この日が来たこと、嬉しく思うわ。これからもがんばってね」
「うん。ありがとう、母さん」
カタリナが自分のことのように喜んでくれるので、カキも笑顔で答えた。
明日、これから共にするメンバーが発表される。カキたちを導いてくれる上級戦闘魔術師も。
カキはそれを心から楽しみにしながら、この日は眠りについた。




