第八十話 合わない一人と一匹
ナタリオと別れてからも、いろいろな妖精を見てきたが、カキの妖精はどこにもいなかった。
「どこにいるんだよ、オレの妖精・・・ひょっとして、オレが気づかなかっただけで、どっかで見つけてたのか?」
カキは、弱音を吐きつつも足を止めようとはしない。諦めるつもりはさらさらないのだ。
「────・・・ん?何だ、あの光?」
カキは、森を突き抜けるような一筋の光に気づいた。
────去れ
その光のほうから、そんな声が聞こえた気がした。
────去れ
また聞こえる。
「去れって言われると、行きたくなるってもんだよな」
カキはニヤリと笑い、光のほうへと駆け出した。
そこは、暖かな光に溢れていて心が安らぐような、そんな感じがした。
「すげぇ・・・」
どこか神秘的なものを感じるこの場所に、カキは簡単の声を漏らす。
『小僧、オレは去れと言ったはずだ』
光の中からオレンジ色の妖精が現れ、どっしりとした声が響いた。
「去れって言われたら行きたくなるもんだろ」
『お前のものさしで考えるな』
「それより、お前、何て名前だ?何の加護を持ってるんだ?ってか、お前だな、オレの妖精」
『教える義理はない。それに、誰がお前のような小僧の妖精なものか』
「いいや、絶対お前はオレの妖精だ!身体中がお前をオレの妖精だと訴えている」
カキは自信たっぷりに言うが、妖精は顔色ひとつ変えず、不機嫌そうな顔のままだ。
『オレは妖精の中でも格が違うんだ。お前のような小僧のものになるものか。もっと強そうなやつや賢そうなやつなら考えないこともないがな』
「たしかに、オレは強くもないし賢くもない。けど、お前がオレの妖精なのは間違いないんだ。だから、オレはお前が欲しい」
『欲しいからといって、手に入れられるものではないわ!言うことを聞かんやつは嫌いだ!早急に去れ!』
妖精は怒りだし、カキに攻撃を仕掛けてきた。
妖精自身は凄まじい速さで移動を繰り返し、その中でカキに光の球を飛ばしてくる。
「ちょ・・・!いきなり何すんだ!?」
『お前はオレに相応しくない。去らぬのなら、力ずくで去らせるのみ!』
カキは、ひたすらに攻撃を避けていく。避けるのだけは得意だ。
「話し合いっつーのはないのかよ!?」
『オレもお前も意見を曲げるつもりがないなら、そんなことをするのは時間の無駄だ!』
たしかにそのとおりだ。どちらも意見を曲げるつもりはない。
だけど、攻撃されたって、カキはここを去るつもりはない。
カキはしばらく考えた末に、攻撃を避けるのをやめて、突っ立った。
『・・・何のつもりだ?』
妖精はその様子を見て、訝しげな表情をする。攻撃もやめて、妖精も止まった。
「オレはお前が欲しいから、だから避けない。お前の気が済むまで攻撃してくれ。そんで、オレと一緒に来てくれ」
『何度も言わせるな。オレはお前のような小僧の妖精になるつもりはない』
「だけど、オレにだって退けない理由がある!」
カキが真剣な顔で叫ぶので、妖精は思わず口を閉ざした。
「オレは王族の人間なのに、何より、〈神の子〉〈救世主〉と呼ばれるような存在なのに、強くない。むしろ弱いし、人よりできないことが多い。けど、オレは自分自身に恥じない戦闘魔術師になりたい!そのために、お前が必要だ。戦闘魔術師になるためには妖精がいるからな。だから、オレと一緒に来てくれ!」
カキの心からの真剣な言葉に、眼差しに、妖精は心を打たれた。
『────・・・強いやつ、賢いやつがいいが、お前の存在も貴重だ。お前のこれからを、オレは見たくなった』
妖精は、ニヤリと笑った。
『オレはトラル。光の加護を持つ妖精だ。これより、お前の妖精となってやる』
トラルの言葉に、カキは喜びの声をあげた。
これで、カキは下級戦闘魔術師への道を開くことができた。
新たな世界は、どのような道になっているのだろうか。




