第七十三話 今度はライバルとして
接近戦闘学のテストを無事に終わらせたカキに、次にやって来たのは武器魔術学のテストだ。
この授業のテストはペアでの戦いだ。カキにとって、相手はニコラスとなる。
接近戦闘学では味方としてテストに挑んだが、今度はそういうわけにはいかない。全力で挑んだって、勝てるはずもない相手なのだ。相当な気合いを入れなければ。
「これからテストをしていくわけだが、その前にどういう点を重視して成績をつけるのかを説明しておこう」
ユリシーズは、手短に話をした。
重視する点は、技術と個々にあった使い方、戦い方ができているかというところだ。
「それでは、早速始めていくぞ」
ユリシーズは、いつものように淡々と事を進めていった。
「────・・・じゃ、次。カキとニコラス」
半分ほどの人たちが終わったところで、カキとニコラスの番が回ってきた。
カキとニコラスは、それぞれ杖を武器に変えて、臨戦体制に入った。
「それでは、始め!」
カキとニコラスは、ユリシーズの合図とともに駆け出した。
キン、と刃がぶつかる音がする。
「・・・っ!ずりぃよなぁ、お前は。二刀流なんだから」
「ずるいわけじゃない。素質の問題だ」
「っとに、ムカつくな・・・天才ってのは」
カキとニコラスは言葉を交わしながら、剣を交える。
「その上、努力もしやがる。敵うわけねぇわな」
「じゃあ、とっとと諦めて降参しろ」
「イヤだね。それでもオレはお前に勝ちたい」
「お前のそういうところ、嫌いだ」
「嫌いで結構だよ。お前はオレにとってライバルだ。嫌われてたってかまわない。お前と勝負さえできればいいんだ」
「わけわかんねぇ・・・つーか、うざい」
カキとニコラスは一進一退の攻防を繰り広げる。
だけど、カキはそこから一歩踏み出すことができなかった。ニコラスが本気で戦っていないことがわかりきっていたから。そうでなければ、一進一退の攻防を繰り広げる前に倒されている。
なら、なぜニコラスは本気を出してこない?
カキ相手じゃ、本気を出す気にもならないということか?
いや、そんなことで本気を出さないニコラスじゃない。ニコラスはいつだって本気でやっている。
カキ相手だからといって、手を抜くわけがない。むしろ、喜んで本気を出して一瞬で勝負を終わらせるだろう。
じゃあ、どうして?
カキはいろいろ思考を巡らせて、一旦ニコラスから距離をとった。
ニコラスは、そんなカキの出方を伺っているようだ。
「“ドナ・ブリック”」
カキは静かに魔術名を呟き、剣に雷を纏わせた。
「たいしてうまくもない魔術を使うのか・・・なら、オレも使わせてもらう。“フュー・リーン”」
ニコラスも魔術を使い、剣に炎を纏わせた。
「時間も限られてるからな。そろそろ終わりにしてやる」
ニコラスはそう言うと、一気にカキとの距離を詰めた。
そんなニコラスに対して、カキは剣を思いっきり振りかざす。
だが、それはニコラスに避けられ、逆にニコラスが胴体を回転させたその重みで剣を振りかざしてきた。
カキは剣で一撃目は防いだが、もう一方の剣は防ぎきることができずに叩きつけられた。
「がぁっ・・・」
完全に、ニコラスの勝ちだった。剣の重みが、そもそも違ったのだ。
「ちくしょー・・・」
結局、一撃も入れれずに終わったことが、カキには歯痒かった。
それでも、ニコラスの剣を少しでも受け止められたのだから、今回は良かったことにしようと、明るく受け入れた。
そんなカキに対して、ニコラスの表情は翳っていた。
「ムカつくのはこっちだ・・・」
最初のほう、本気ではなかったとはいえ、剣を受け止められたことがショックだった。
「────・・・でも、お前に追い抜かされるつもりはねぇよ」




