第七十一話 卒業に向けて
気づけば、三学期に突入していた。
あの、魔法学校襲撃事件のことなど、まるでなかったかのように、日常が過ぎていく。
変わったことといえば、卒業までの時間が短くなり、どの授業も最後の授業の試験に向けて、今までの総復習が行われていることくらいだ。
それでも、カキたちはあの襲撃事件の記憶が薄れることはなく、色濃く脳裏に刻まれていた。
いろいろな感想はあるけれど、カキは前向きな感想を抱いていた。実際に戦うことができたのだから、カキとしては大満足だ。
ニコラスとしては、全力で戦う前にやめさせられてしまったので、不完全燃焼でしばらくは苛立っていたが、今はそれを力に変えて、より一層努力をしている。
もちろん、カキだって満足したままで終わっているわけではない。特訓の時間や量も増やして頑張っている。
「そろそろ接近戦闘学もテストの時期がやって来るなぁ。何とか合格できればいいけど」
ビトはかったるそうにそう言った。
「実技だろ?頑張ろうぜ」
「そりゃ、頑張るけどなぁ。ちったぁマシになったとはいえ、ニコラスが協調性がないのは間違いないし」
「あいつだって、テストとなれば多少は協力する気になるだろ」
「だといいけど」
ビトの不安はニコラスのみだ。ニコラスが一番、ビトにとって厄介だ。
カキの不出来には多少フォローができるが、協調性がない人に協力させようとするには無理がある。実際、ノーマの授業でビトはそれを経験済みだ。
「つーか、オレは武器魔術学でもニコラスとペアだからな。ま、あれはペア同士の戦いで成績つけるらしいけど」
「・・・お前、ニコラス相手じゃ成績つかないんじゃね?」
「は!?さすがにつくわ!・・・ちょっとくらい」
「何だよ、自信ねぇのかよ」
カキがぼそりと言うので、ビトはちょっと笑ってしまった。
「指揮戦略学はどんなテストなんだ?」
「あぁ、あれはな、提示された状況で犠牲を出さずに勝つための戦略を考えて、それが成功すれば合格ってテストだ」
「へぇー、何か難しそうだな」
「どんな状況を提示されるかわかんねぇから、めんどくせぇよ」
ビトは頭を掻いた。
ビトはめんどくさいことがあると、よく頭を掻くなとカキは何となく思っていた。
「テストの話してるの?」
カキとビトが話していると、シーラとマリアンがやって来た。
「魔法薬学と医療魔術学はどんなテストなんだ?」
「魔法薬学はね、指定された薬をつくるの。で、医療魔術学はペーパーテストと動物とかを使って怪我を治療するの」
「自信はある?」
「頑張ったからね、その分の成果がでたらいいなって思ってるよ」
「わ、私も、不合格にならないように頑張るつもり」
シーラとマリアンはそう言っていたが、二人なら間違いなく合格するだろうとカキは感じていた。
「ノーマ先生のテストは、また先生との戦闘だよね」
「すっげぇ、楽しみ!」
「ま、あれは勝ち負けで成績つけてるわけじゃねぇから、ちょっと気が楽だわ」
「で、でも、前よりはうまくやりたいよね」
ノーマと戦えるのは、カキにとってとても楽しみで、ほかのみんなも貴重な経験として捉えている。
「この間の襲撃事件での経験が、ちょっとでも役に立つといいよな」
「そうだね。あんなこと、絶対生徒の間じゃ経験できないもんね」
カキたちは、この間の襲撃事件で少なからず経験値を貯めている。
それが、これからのテストに、そして戦闘魔術師になってからも活きてくることを願う。




