第六十九話 学校の平和を取り戻すために
カキとニコラスは女と睨みあっていた。
誰が先に仕掛けるか。どうやって仕掛けるか。
先に駆け出したのは、言うまでもなくカキだった。また“ドナ・ブリック”を手に宿して突進していく。
「また同じ魔術?同じことをしたって通用するわけないでしょう」
呆れたように女は口にする。
「同じじゃねぇよ・・・!」
カキがそう口にすると同時に、ニコラスがものすごい速さで女に迫っていた。
「いつの間に・・・!?」
女は目を見開いた。
「────・・・なぁーんてね」
女は、すぐに余裕の笑みを浮かべて右足を地面におもいっきり叩きつけた。
「うわっ」
「・・・っ!」
ものすごい突風で、カキとニコラスは踏ん張りこそしたが、少なからず吹き飛ばされた。
「ふふ、甘いわよ。その程度で私を倒せるなんて思わないでくれる?」
女にとってみれば、生徒二人を相手にするなど容易いことで、ずっと余裕だ。
カキとニコラスの二人で女の相手をしているが、その間にもビトたちほかのクラスメイトたちやエベラルドも戦っているのだ。
だからこそ、カキとニコラスは女との戦いに集中できる。何の邪魔も入らない。
でも、それに甘んじるわけにもいかない。相手側が優勢なのは間違いがないのだから。いつまでこのまま戦っていられるかもわからない。応援が来るかもわからない。
「・・・はやくケリをつけなきゃな」
カキは一人、呟いていた。
「もっと楽しませてよ、ぼくたち。楽しませられないなら、周りのみんなも一瞬で捻り潰しちゃうわよ?」
女は終始、笑みを浮かべている。ずっと楽しそうだ。
「はっ・・・まだ、始まったばっかだろうが」
ニコラスも、口元に笑みを浮かべながら答える。
「それもそうね。ふふ、ぼくのこと気に入ったかも。ゾクゾクする・・・」
「気持ちわりぃ」
女の言葉と表情に、ニコラスは怪訝な顔をしている。
「お、オレだっているんだからな!?」
何となく、置いてけぼりにされている気がして、カキが口を挟んだ。
「あら、わかってるわよ。ちゃんとぼくのことも相手してあげる。ぼくもおもしろい子だもの」
女は楽しそうに、そして嬉しそうにカキを見た。
「さぁ、もっと楽しませてちょうだい」
頬を赤らめながら言う女に、カキは少しゾッとしたが、臆することはなかった。
「やってやろうじゃん・・・!」
カキは、魔術は使わずに体術のみで戦おうと女に接近していった。
「ぼくはおもしろいけど、弱いのよねぇ。私を楽しませるほどの力なんて、全然ないわ」
「力の差なんかどうでもいい!オレは、この学校を守りたいって想いだけで勝ってやる!」
「そう・・・ふふ、そういうところがおもしろいのよねぇ」
女はカキの攻撃をすべて避ける。無駄な動きもないし、隙もない。
「でも、ごめんなさいね。これ以上ぼくと戦っても、これ以上の楽しさは得られなさそうだから────・・・終わらせてもらうわね」
女は、その言葉と同時にカキの背後に回り込み、カキを殴り倒した。
「がっ・・・!」
カキは意識を失い、その場に倒れこんだ。
「さぁ、今度はぼくの番よ。ぼくのほうが力があるようだし、私を楽しませてくれるわよね?」
女は笑みを浮かべながら、ニコラスを挑発した。
「楽しませるかどうかは知らねぇが、そいつよりは長く戦ってやるよ」
「ふふ、それは楽しみだわぁ」
「言っておくが、勝つのはオレだ。お前を倒すまで、オレは倒れない」
「ますます楽しくなりそう・・・!」
ニコラスの言葉に、女は心底楽しそうな表情を浮かべた。
ニコラスも女も、周りのことなど考えていない。自分たちの戦いのことで頭がいっぱいだ。
学校は守られるのか、それとも壊されるのか。
すべてはきっと、この戦いで決まる。




