第六十六話 魔法学校、最大の危機
エベラルドと別れたノーマは、急いで正門の方へと向かう。
これから、よくないことが起こる。
ノーマは漠然と、そんなふうに考えていた。
職員室近くまで来て、何人かの先生がバタバタと入れ替わり立ち替わり出入りを繰り返しているのが目に入った。どの先生の表情も、強ばっている。
こんな慌ただしくしている中、とてもじゃないがノーマは声をかけられなかったので、自らの目で確認するためにも正門へとまた駆け出した。
正門付近までやって来ると、そこはちょっとした惨状となっていた。
ノーマは、思わず目を見開く。
「・・・何なの?あなたたち・・・!」
数人の戦闘魔術師の先生たちが倒れているそばに一人ずつ、そして、学校から誰も出させないようにするためか、何人もの人が正門に立ちふさがっている。
「おや。あなたはひょっとして、国王のお気に入りの方ではありませんか?学校で講師をしているという噂は本当でしたか」
真ん中に立っている眼鏡をかけた銀髪の男がそう言ってきた。
「私のことはどうでもいいのよ。あなたたちは何者なの?目的は何!?」
ノーマは男を鋭い視線で睨みつけながら訊く。
「我々が何者か、というのは答えにくい質問ですね。正解と呼べるものがわかりませんから。ですが、目的なら答えられます。と言っても、明確な目的ではないですが」
男が無駄な前置きをすることに、ノーマは少々苛立っていた。
「我々の目的は、我々の仲間に相応しい人を見定めることです。今日のところは、ですが」
「あなたたちの仲間に相応しい?」
「そうです。我々の仲間に相応しい人が、この学校にいると魔術によって知ることができました。だから、我々はここへやって来ました。手荒なことをしていますが、今日のところは死人を出すつもりはないから安心してください」
「これだけ傷を負わしておいて、何を言っているの!?」
ノーマは、倒れて傷だらけの先生たちを見て、そう叫ぶ。
「致命傷は負わしていません。それに、この人たちががどうなろうと、我々には関係ないことです」
「・・・!」
男が冷たくそう答えるので、ノーマは怒りで何も言えなかった。
「とにかく、我々はいずれ仲間になるであろう人物を探しています。そこを、通してもらいますよ」
「誰が・・・っ!」
「やれ」
ノーマ一人に対して、十人もの人たちが襲いかかった。
だけど、ノーマは怯むことなく、冷静にそれぞれに対処し、倒していく。
「さすが、国王のお気に入りというところですか」
さっきからずっと言葉を交わしている男は、一歩も動かずにただ戦いを見ているだけだ。
ノーマの驚異的な身のこなしに、ノーマに襲いかかってくる敵は歯が立たない。どんどん倒されていく。
それが、ノーマには引っ掛かった。
中級魔術師であるノーマでさえ、わりと簡単に倒せているというのに、上級魔術師が数人がかりで戦って倒されるだろうか。それも、あんなにも傷を負わされて。
だけど、手を抜かれているとも感じない。ノーマのことを国王のお気に入りだと言っているのに、手を抜くのもおかしい。
「────・・・もういいでしょう。あなたの実力はわかりました」
ずっとノーマの戦いを見ていた男は、ふいにそう言うと、手をノーマに向けた。
「“トゥッド・ブルーメ”」
男が魔術名を口にした数秒後、体の内側から焼けるような激痛をノーマは感じた
「がぁ・・・っ!」
激痛のせいで動けず、感覚も麻痺していく。体は、重力に従って地面に叩きつけられる。
「殺さない程度に、傷を負わせておけ」
男は冷たく仲間に言い、ノーマの体にほかの先生たちと同じように傷を負わせた。
「残った者は手分けして中を探していくぞ」
「中の奴も殺さない程度なら戦っても構わないのよね?」
「あぁ、構わない」
「ふふ、楽しめるかしら?」
女は妖艶に話しながら、中へと入っていった。




