第六十五話 迫り来る危機
ドーン、と大きな地響きのような音がした瞬間、教師たちは慌てて外の様子を見に行った。
「ノーマさん」
「エベさん・・・!」
エベラルドに声をかけられて、ノーマは振り返る。
「外、見てこられましたか?」
「いえ、まだ。生徒がまだ教室にいると思うので、とりあえずそっちに向かおうと」
ノーマもエベラルドも冷静に対処法を考えている。
「では、ほかの先生方に状況を訊いてきます」
ノーマはそう言って正門の方へ向かい、エベラルドは教室に向かって駆け出した。
カキは、ビトの制止の声も聞かずに教室を飛び出していった。
階段を駆け下りていると、エベラルドが階段を駆け上がってきた。
「エベ先生!」
「カキ!みんなはまだ教室にいるか?」
「うん、いる。誰も帰ったやつはいないよ。それより、さっきの音は何だったんだ?正門の方が砂ぼこりで全然見えないし」
「それはオレにもわからん。今、ほかの先生方が見に行っているから、お前も教室で待機してろ」
「でも・・・!」
「何もなければすぐに帰れる。ほら、教室に行くぞ」
エベラルドに促されて、カキは渋々エベラルドと共に教室に戻ることにした。
そこに、続々とカキのクラスメイトたちが慌てた様子でやって来た。
「あ、先生・・・!」
「外、見た!?何か、大変なことになってるよ!」
「どっか避難しなきゃヤバイんじゃね?」
クラスメイトたちは、それぞれエベラルドに訴えかける。
「待て待て、落ち着け。一体、何があったんだ?」
「何か、ヤバそうな奴等が外にいるよ。たぶん、戦闘魔術師。先生たちが応戦してるけど、数も多いし結構強いみたいだ」
ビトが冷静にエベラルドに状況を説明する。
「何!?」
「今は先生たちが頑張ってるけど、もし正門を突破されたら、いずれここにもやって来るよ。オレたちはどうしたらいい、先生?」
ビトはずっと冷静なまま、エベラルドに訊く。
「避難だ!みんな、オレについて来い」
エベラルドはすぐにそう答え、カキたちを誘導しようとした。
が────・・・
「避難なんて、させないわよ」
「・・・!」
妖艶な女の人の声が響き渡り、エベラルドは声の方にすぐさま振り向き、持っていた短剣を振りかざした。
キン、と金属のぶつかる音がした。相手が長剣を手にしていたのだ。恐らくは、杖を武器に変えたものだ。
「あら、若い先生ね。ふふ、結構タイプよ」
「何が目的だ?何のためにここを襲う?」
エベラルドは応戦しながら、相手に目的を問う。
「ふふ、そんなことは今はどうでもいいのよ。戦いを楽しみましょう?あなたも戦闘魔術師でしょう?」
「あいにく、戦っている暇はないんだ。大人しく捕まってくれ」
「やぁよ。こんなところで捕まってなんかあげないわ。私を楽しませてくれるなら、考えなくもないけど」
「・・・っ!」
相手はかなり強い。中級魔術師のエベラルドでは、防戦で手一杯だ。
それでなくても、派手な戦いはできない。生徒が近くにいるのだから。
「ふふ、先生っていうのは大変ね。生徒を守らなくてはならないものね」
「っ!そうだよ。絶対に、生徒を危険に晒すわけにはいかない!」
だけど、もうエベラルドだけではここを守りきれそうにもなかった。
どうやってここを乗りきるか、必死に考えを巡らせていた。
そんなときだった。急に、相手が自分から離れたのは。
自分から距離をとったわけではない。何か攻撃されてよろけたのだ。
「オレだって戦う!守られてるだけじゃ、強くなんかなれねぇから!」
誰もがその光景に目を見開いた。
「────・・・カキ!?」




