第六十四話 頭で考えるよりも
カキは、気づけばナタリオを倒れさせていた。
「やるじゃない、カキくん」
嬉しそうに声をかけてきたノーマに、一瞬、何が起きたのかわからずにきょとんとしていた。
「え・・・?あれ?オレが倒した、のか?」
いまだに、いまいち状況を掴みきれていない。
「カキくん、すごいよ。僕も結構頑張ったんだけどな・・・」
ナタリオは、立ち上がりながらそう言ってきた。
「魔術もちゃんと発動してたし、一学期よりもずっとよくなってるよ」
ナタリオは、さらにそう言った。
「あんまり実感ない感じかな?」
カキの様子を見たノーマは、そう言いながら近づいてきた。
「なんか、何にも考えずに動いてたのに、気がついたら終わってた、みたいな・・・」
「頭使わずにを実行したわけだ」
「そう、なのかな・・・?」
まだまだ、どういう状況なのかカキは理解しきれていない。
「頭で考えるよりもさきに、体が動いてたってことね」
「・・・!そう!そんな感じ!」
ノーマの言葉に、カキはすっきりしたような表情を浮かべた。モヤモヤが晴れたような感じだ。
「いいじゃない。そういう感覚も大切よ」
ノーマはそう言って、カキのことを褒めた。
「カキくん、いきなり実践したんだ。すごい・・・」
ナタリオも、感嘆の声を漏らす。
「本当ね。いきなりそれを実践できるって結構すごいことよ。その感覚、忘れないようにね。これからも活きてくるわ」
ノーマは、さらにそう言って褒めた。
カキは何だか照れてしまって、うまく言葉にはできなかったが、今回のことを忘れないようにしようと誓った。
「まぁ、でも、いつでもそうやって動くのが正解ってわけでもないから、状況を判断できる力も必要よ」
「わかった!」
カキは元気よく返事をして、またナタリオとバトルを始めた。
今日はノーマの授業があって、それは、すなわち七時間目まで授業があったということ。戦闘コースは帰る時間が遅いということだ。
「帰ろうぜー」
カキがそう声をかけたときだった。
ドーン、と大きな地響きのような音がした。恐らくは、正門の方からだ。
「な、何だ!?」
まだ教室から出た生徒はおらず、みんな今の音にざわついていた。
みんな、教室の窓から音のした正門の方を見てみる。
正門の方では、何やら砂ぼこりがたっていて、何が起きたのかは見ることができない。
でも、確実に“何か”は起きている。
「何だろう」
「何か降ってきたのか?」
「先生たちが出てきてるな」
「ってか、何か慌ててるっぽくね?」
「え、待って。怖いんだけど・・・」
みんな、口々にいろいろなことを言う。感情も、人それぞれだ。
「何だろうね」
「うん・・・ちょっと、怖いな」
シーラとマリアンも、不安そうな表情で窓のそとを見つめる。
「大丈夫だよ。先生たちがいるんだし。何も不安になることなんてないよ」
ケヴィンはそう言って、シーラとマリアンに近づく。
「お前が危ないわ。離れろ」
そんなケヴィンの襟をビトは後ろから掴み、シーラとマリアンから離す。
「けどさ、先生たちだってオレたちがまだ学校にいるのはわかってるよな?なのに誰も来ないって、ちょっと変じゃね?」
「じゃ、じゃあ、何かとんでもないことが起きてるってこと・・・!?」
ジャスパーの言葉に、ナタリオは青ざめる。
たしかに、ジャスパーの言っていることも一理あるかもしれない。あの大きな音が鳴ってから、誰もこの教室にやって来ていない。それは少しおかしい。
「・・・オレ、ちょっと見てくる」
カキはそう言って、走って教室を出ていった。
「は!?おい、カキ!」
ビトはカキを止めようとしたが、一歩遅かった。
「・・・ったく、あのバカ!」




