第六十三話 バランスって難しい
二学期に突入し、どの授業も卒業に向けてさらに高度なものが求められるようになった。
実技戦闘学も例外ではない。むしろ、実践に必要な基礎なので、どの授業よりも高度なものが求められる。
カキは、一学期の間にナタリオに教えてもらったこともあり、魔術も少しずつうまくなってきていた。とはいえ、まだみんなに追いついたとは言い難い。
それでも、カキは求められるものに応えられるように、精一杯やっていくだけだ。
「よっしゃ!頑張るとするか!」
カキは気合い十分だった。
「一学期に、体術と魔術を組み合わせて戦えるようになろうって言ったでしょ?そのためには、体術と魔術のバランスが大事だって。だから、二学期はそのバランスをよく考えて戦えるようになりましょう」
ノーマの話を聞きながら、カキはそんな高度なことができるようになるだろうかと、少し不安を感じていた。
ただでさえ、まだまだ魔術はうまく使えていないのだ。不安に思うのも無理はない。
だけど、カキは諦めるつもりもない。ただ、前を向き続けるだけだ。
「なぁ、ナタリオ。体術と魔術のバランスってどんなんだ?」
「えっ?ぼ、僕に訊かれても・・・」
「難しいよなー、やっぱ」
突然の質問に戸惑うナタリオに対し、カキは頭を掻きながら呟く。
「あんまり難しく考えることもないわよ」
いつからいたのだろうか。ノーマがカキとナタリオの会話を聞いて、言ってきた。
「あんまり頭で考えてばかりだと、隙が生まれちゃったりするからね。もちろん、頭を使うことは大事だけど。でも、体術はこれくらいで魔術はこれくらいって考えながら動くと、逆に動きにムラができそうじゃない?」
ノーマはわかりやすいように、噛み砕いた説明をした。
でも、あまり納得できていなさそうなカキを見て、さらに説明を続ける。
「たとえば、相手が火属性魔術を発動したとするじゃない?そしたら、直感的に水属性の魔術が効果的だって思う。避けれるものなら避けようとする。そういう直感みたいなものって、意外と戦闘の中では大事になってくるの。まぁ、つまりは、バランスっていうのもそういう直感で動いてると、意外とバランスがとれてたりするってこと」
うまく言えなかったと、苦い表情をしていたノーマだったが、ある程度カキに伝わったようだった。
「うーん・・・なるほど。じゃ、オレはとりあえず直感に頼ってみよっかな。頭使うのは苦手だし」
カキはそう言って、ナタリオと練習を始めた。
「よし!やるぞ、ナタリオ!」
「う、うん・・・!」
カキはかけ声と共に、ナタリオに向かって駆け出した。
ナタリオは、距離を詰められる前に魔術を発動する。
「“フュー・ロッシィ”」
ナタリオは何発もカキに向かって撃っていく。
カキはそれを素早く避けながら、徐々にナタリオに迫っていく。
負けじとナタリオも魔術を撃ち続けるが、なかなかカキに当たらない。
「“ドナ・ブリック”!」
カキは、ナタリオとの距離が十センチにまで迫ったところで、手に雷を宿した。
「そ・・・“ソーン・ソイル”」
ナタリオはすぐに土の壁を造ろうとしたが、間に合わなかった。
「うわっ・・・!」
ナタリオは、カキの“ドナ・ブリック”によって、体が痺れた。とはいっても、威力はそこまでではない。少し強めの静電気に当たったくらいだ。
ナタリオはカキに押される形で地面に倒れこんだ。
「やるじゃない、カキくん」
少し離れたところで見ていたノーマは、嬉しそうに声をかけた。




