第六十話 魔術と体術のバランス
「みんなも六年生になったわね。ということで、この授業では今までの復習も兼ねて、体術と魔術の合わせ技をやっていきましょう」
今日もノーマは笑顔でカキたちに説明した。
「体術と魔術の両方で、しっかり戦えるようになりましょう。戦闘魔術師に必要なことよ」
実技戦闘学は、ほとんど習うべきことは習っているので、あとはそれらを合わせてどれだけ強くなれるかだ。
「それじゃ、ペアでそれぞれ実践してみて。まずはやってみるのが一番!」
ノーマがそう言うので、カキたちはそれぞれペアで体術と魔術を使いながら実践練習を始めた。
「よっしゃ!じゃ、やるぞ、ナタリオ」
「う、うん。お手柔らかに・・・」
ナタリオは相変わらずビクついた様子だ。カキより実力は十分にあるというのに。
とりあえず、カキは体術でナタリオに迫っていった。
ナタリオはそれをかわしつつ、魔術の発動のタイミングを窺っているようだった。
だから、カキは魔術を発動されないように、連続して体術を仕掛けていく。
だが、このままだとカキは体術しかできていないことになる。魔術も使っていかなければ意味がない。
カキは何の魔術を、いつ発動させるか考えながら、ナタリオに仕掛けていた。
考えに頭がいっぱいになってしまったからだろうか。カキの動きに隙ができはじめた。
ナタリオはそれを見逃さず、魔術を発動した。
「“スコール・クラッシュ”」
「・・・!」
反応に遅れたカキは、避けることができずに吹き飛ばされてしまった。そこまでの威力はなかったのだが、それでもカキを飛ばすほどの力はあった。
「くっそー・・・」
カキは立ち上がりながら、もう何でもいいから魔術を発動させようと考えた。
「“アクア・コーゲル”」
一応、カキの魔術は発動したのだが、ナタリオのもとに届く前に威力が失われてしまった。
「な・・・何でなんだよ」
カキは自分の魔術力に自分で呆れてしまった。
「ちょっと、ナタリオ。一旦、休戦しようぜ」
「え?う、うん」
ヤル気満々だったはずのカキは、若干沈んだ様子でナタリオに言った。
「あのさ、やっぱりオレがちゃんと魔術できなきゃ意味ねぇからよ。悪いんだけど、オレが魔術うまくできるように、教えてくんねぇか?」
「え、えぇ!?ぼ、僕が!?む、ムリだよ!」
カキの言葉に、ナタリオは首を横に振りまくる。
「大丈夫だって。お前のほうがオレよりできるんだし。まぁ、オレよりできないやつなんてほぼいねぇけど・・・」
「で、でも、僕が教えるなんてそんな・・・ムリだよ、ムリ!」
「そんなことねぇって。自信持てよ。それに、オレがちゃんとできなきゃ、お前も困るだろ?・・・って、何か脅してるみたいだな。悪い。そんなイヤならべつにいいんだけど」
カキがそんなふうに言うので、ナタリオは困ってしまった。
「い、イヤってわけじゃないけど・・・」
ナタリオには、カキが言ったとおり、自信がないだけだ。
ナタリオは自問自答をし始めた。
魔術はたしかに人並みにはできる。
だけど、教えるなんてこと自分には無理だ。
でも、それは無理だと決めつけているだけで、やってみなければわからないんじゃないか。
友達が困っているのに、それを助けないのか。それでいいのか、自分は。
しばらく考えた末に、ナタリオは答えを見つけ出した。
「わ、わかった。僕にできる範囲でよければ、教えるよ」
だって、戦闘魔術師を目指しているのだから。困っている人を、それも友達を助けないわけにはいかない。
ナタリオの返答に、カキは、ぱぁっと笑顔になった。
「本当か!?サンキュー、ナタリオ!」
その笑顔を見て、ナタリオはきっとこれが正解なのだと改めて思った。




