第五十九話 武器魔術学でも
武器魔術学では、自分だけの武器を使うことができる。どんな武器になるかはその人次第だ。
だから、カキはすごく楽しみにしていた。
「うわっ!またお前いるのかよ」
「それはこっちのセリフだ・・・!」
カキとニコラスは嫌そうな顔を全面に出した。
二人は、全授業同じものを受けることになったのだ。正反対なのに、こうも息が合うとは驚きしかない。
そして、例のごとくペアとなった。
「・・・もうお前とペアになったことはどうでもいい。だけど、絶対に足を引っ張るなよ」
「そりゃ、オレだってベストは尽くすつもりに決まってるだろ!」
「気持ちだけじゃどうにもならないんだよ!」
当然のように言い争いも起こる。
この二人はどこにいようが、何をしていようが、結局は言い争いに発展するのだ。誰も止められはしない。
先生だって、もう呆れ果てて何も言わない。何を言っても聞かないことは、学校中に広まっているといっても過言ではない。
武器魔術学の担当の先生は、ユリシーズ・ボイデルだった。過去に実践魔術学でお世話になった先生だ。
「静かにしろ、カキ、ニコラス。今から説明するぞ」
相変わらず、厳しい顔つきでカキとニコラスを注意した。
「さっそくだが、それぞれ持っている杖を武器に変えてもらう。武器にするのは簡単だ。ただ念じて魔力を杖に流せばいい」
ユリシーズは説明とともに、自分の杖を武器に変えて見せた。
ユリシーズの武器は、上下両方に刃がついた槍状のものだった。
「武器は人それぞれ違う。自分に合ったものになるからな。じゃ、とりあえず変えてみろ」
ユリシーズの言葉により、みんなが杖に魔力を流して武器に変えていった。
「うぉっ、すげー・・・」
カキの武器は、赤いラインの入った大きな剣だった。
「・・・ってか、え!?何でお前、二つになってんの!?」
カキは自分の武器に感動したのも束の間、ニコラスの武器に驚いた。
ニコラスの武器は吸い込まれそうな青色の刃の剣だった。
カキの剣に比べたら一般的な剣だったが、なぜか二つに分裂していたのだ。
「ほぅ・・・これは珍しい。武器が二つにできるのは、千人に一人と言われている。私も初めて見た」
ユリシーズは感嘆の声を漏らす。
「はぁ?お前、何なの?」
「オレはオレだ。他の誰でもない」
「あー・・・はいはい。何か、前にもこんなやり取りを誰かとしたような・・・」
カキはぼそりと呟く。
それにしても、ニコラスは二刀流。武器が二つあることによって、さらにカキが不利になっている。
「・・・ぜってー、怒られる」
カキは、ニコラスにとって満足に戦える相手ではないので、すでに不安の声を漏らした。
こてんぱんにやられる様子が、容易に想像できた。今の時点で、勝てる気などない。
だけど、ただ負け続けるつもりだってない。宣言したとおり、自分のベストは尽くすつもりだ。それは、ニコラスのためではなく、自分自身のために。
「カキ、武器に変えられただけで満足するなよ?」
「へ?」
突然、ニコラスにそう言われたので、カキはすっとんきょうな声を出す。
「魔術を使わねぇと、これは武器としての役割を果たさねぇんだからな」
「・・・!そうだった!」
ニコラスに言われるまで、すっかり忘れていた。
カキは武器魔術学でうまくやっていけるのだろうか。それもニコラスと。
「やっべぇ・・・自信なくなってきた」
でも、諦めるつもりはない。
カキはカキなりに、学んでいくのだ。




