第五十六話 初授業、接近戦闘学
今日は、カキにとって初めての選択科目、接近戦闘学がある。
カキはウキウキした気持ちでいたのだが。
「げ。お前も受けるのかよ、この授業」
「げ、とはなんだよ!」
「ま、接近戦闘学なら体術もあるから、魔術ができねぇお前にはピッタリか」
「んだとぉ!?」
さっそく、ニコラスとの言い争いだ。
「ま、周りに置いてかれないよう、精々頑張るんだな」
嫌味ったらしく言うニコラスに対し、カキはムカつきながらも何も言い返さなかった。
「ニコラスもいるとはなぁ。あんまり揉めるなよ?」
「あいつの言い方の問題だろ!?」
さっきのやり取りを見ていたビトに、カキはそう言い返す。
「チャイム鳴ったぞー」
そう言って入ってきたのは、今年も担任となったエベラルドだった。
カキたちにとって、三年生からの四年間、ずっと担任だった先生となる。
「エベ先生がこの授業の担当なのかよ」
カキが若干嫌そうな顔で、ぼそりと呟く。
「文句あるのか、カキ?」
「げ!地獄耳・・・」
「全部聞こえてるからな!」
そして、カキにとっては四年間、目をつけられ続けた先生でもある。
とはいえ、嫌いなわけではない。良い先生だと思っている。
「それじゃ、さっそく今日から授業始めてくからな。とりあえず、今学期は体術を中心にやっていくぞ」
エベラルドの言葉に、みんな返事をした。
接近戦闘学は当然、実技だ。
つまり、ペアあるいは数人の単位で授業を受けることになる。
「で、何でオレがお前らと同じ班なんだ・・・!?」
ニコラスがイラついた様子でそう言った。勉強合宿のときと同じように。
「しょうがないだろ。お前が余ってたんだから」
本当に、勉強合宿と同じようなやりとりだ。
違うことがあるとすれば、メンバーだろうか。
カキとビトとニコラス、そしてナタリオの四人だった。
「っていうか、ナタリオがこの授業受けるとは思ってなかった」
「ぼ、僕も最初は視野に入れてなかったけど、苦手だからこそやろうかなって」
カキの言葉に、しどろもどろにナタリオは答える。
「ま、自分自身で選んだほうがやる気にもなるよな。オレは言われたとおりに受けてるだけだ」
ビトは、ナタリオは正しいというふうに言った。
「何でもいいが、オレを入れたからにはちゃんとやってくれよ」
カキたちのことなど最早どうでもよくなったニコラスは、冷たく告げた。
「そりゃ、ちゃんとはやるけどよ」
「カキには誰も期待してないから安心しろ」
「は!?おま、ふざけんなぁぁあ!」
カキが口を挟めば、すぐ言い争いに発展する。カキとニコラスはいつだってこの調子だ。
「ったく、また始まったよ」
「と、止めなくていいの、ビトくん?」
「ほっとけ。首突っ込むほうがめんどくせぇ」
カキとニコラスの関係性にはとっくの昔に諦めているビトに対し、ナタリオはおろおろと二人を交互に見る。
この班は大丈夫なんだろうかと、エベラルドは思いながら四人の様子を見ていた。
カキとニコラスが同じ班だというだけで、もう心配なのだが。四人の様子を見る限り、足並みがバラつきそうな感じだ。
とはいえ、今さら変えられないので、そのまま授業を始めることになった。
どのみち、いずれは共に戦う仲間となるのだから、今から慣れていくのも大事なことだ。将来のために、許容しなければならないのだ。
「班はできたな。じゃ、さっそく実践やっていくぞ」
エベラルドは明るくそう言った。




