第五十三話 協力なんて
誰が協力なんかするかと、ニコラスは憤っていた。
だからといって、自分一人で勝てるとも思ってはいない。こてんぱんにやられるだけだ。
「ニコラス、俺たちに残された道はただ一つ。それしかないことはお前だってわかってるはずだ」
「は、ふざけんな。意味ねぇんだよ、そんなの・・・!」
「じゃ、プライドを捨てずにやられっぱなしで負けんのと、プライドを捨ててでも一撃入れるの、どっちがいいんだ?」
ビトとニコラスは静かに睨み合っていた。
「正直なぁ、オレはどっちでもいいんだよ。でも、お前は勝ちてぇんだろ?だったらさぁ、選択すべきものを間違えんなよ」
ため息を漏らしながら、ビトはさらに言った。
ニコラスだってわかっている。選択すべきは『協力』だということを。
だけど、どうしてもそれを選択したくはないのだ。自分の力でどうにかしたいのだ。
「っ・・・!」
それでも、このまま終わりたくもない。
「ねぇ、いつまで話してるの?私は私で勝手にやるけど」
「あ、おい────・・・」
ビトとニコラスがいつまでも動かないから、ラウラが声をかけてきた。
そして、ビトが制止の声をあげるのとほぼ同時に、ニコラスが言葉を発した。
「今回だけだ」
ビトとラウラはニコラスを見る。
「協力、してやる。だから、何が何でも一撃は絶対に入れる・・・!」
ラウラは相変わらずの無表情だったが、ビトは、まったく、と言うようにため息を漏らした。
「んじゃ、どうするよ?」
ビトはニコラスに問いかける。
「ビト、接近戦は得意か?」
「できなくはねぇけど、得意とは言えねぇだろうなぁ。オレはどっちかと言えば後方支援のほうが合ってるだろ」
「なら、さっきまでと同様にオレとラウラで接近戦。お前は後方支援だ。だが、オレとラウラも魔術は使う」
「それを邪魔しないように先生に攻撃しろって?難しいこと言うなぁ」
ビトは頭を掻いた。
「お前ならできるだろうと考えてのことだ」
ニコラスからの思いもよらない言葉に、ビトは目を見開いた。
「・・・買い被りすぎだろ」
ため息混じりにビトが言ったのと同時に、三人は動き始めた。
その様子を見たノーマは、誰にも気づかれないように笑みを浮かべた。
「そうこなくっちゃ」
決して、協力をしたいわけではない。それはわかっている。
だけど、ニコラスは自らその選択をした。促されている部分もあるかもしれないが、自分の意思で選んだ。
そのことが、ノーマにとっては嬉しいのだ。ニコラスの成長を垣間見ることができたことが。
「あなたが本当の意味で強くなるための一歩になるはずよ」
ノーマは一人、呟いた。
ノーマにとって、大切な生徒たちが成長していく様を見るのは、何よりも嬉しいことなのだ。
これで、試合の行方はわからなくなった。今の彼らなら、一撃を入れることは可能かもしれない。
「はーい、お疲れ様」
ニコラス、ビト、ラウラは、息を切らしつつもノーマに攻撃を入れることができてそれなりに満足していた。
ノーマも、三人の健闘ぶりに大満足だった。
「少しは協力することの大切さ、わかったかしら?」
「・・・どうだかな」
ノーマの言葉に、ニコラスはそう答えたが、何かしら思うところはあった。
何はともあれ、三人とノーマとの試合は無事に終えることができた。




