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魔術師たちのカナデアイ~交錯する想いと戦い~  作者: 衣月美優
第三部 戦闘魔術師への道
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第五十二話 勝つため、だけど


 ニコラスの攻撃もラウラの攻撃もノーマには当たらず、ビトに関してはもう攻撃するつもりもない。

 ビトからしてみれば、ニコラスもラウラも『協力』なんてことを考えずに戦っているのだから、やる気もなくす。

「ねぇ、ニコラスくん。変な意地張ってないで、とるべき行動を────・・・」

「うるさい!アンタはこの試合もそうだが、これまでの試合でも一度も魔術を使っていない。やるからには本気でやれよ。アンタがそんなんじゃ、意味ねぇんだよ、こんな試合・・・!」

 ノーマの言葉を遮って、ニコラスは荒々しく言う。

「前にも言ったはずだ。オレは誰の手も届かない戦闘魔術師になる、と。そのためには、アンタに本気でやってもらわねぇと、意味ねぇんだよ」

 改めて、意味がない、と言い放つニコラスに対し、ノーマは数秒考えを巡らせ、ニコラスから距離をとった。

 ニコラスもラウラも自分に近づこうとしないのを見て、ノーマはため息をついた。

「そこまで言われたら仕方ないわね。本気で相手してあげる。でも────・・・」

 そこで言葉を区切って、目視では確認できないほどの速さでニコラスのそばまで行き、耳元で囁いた。

「一瞬で終わっても、文句言わないでね」

「・・・!」

 それと同時に、ニコラスは一気に吹き飛ばされた。

 それを見た瞬間、ラウラが魔方陣を描き、魔術を発動しようとしたが、発動させる前にノーマによって吹き飛ばされた。

「は?嘘だろ?」

「ごめんね、ビトくん」

「・・・っ!」

 そして、ビトも呆気なく吹き飛ばされた。

 あまりの出来事に、カキたちは声も出せなかった。

 ノーマは風属性魔術の“スコール・クラッシュ”を使ったと思われるが、カキたちにはまったく魔術を発動したところが確認できなかった。

 “スコール・クラッシュ”は、疾風による攻撃で、威力によっては余裕で骨が砕け散るほどのものだ。

「本当に一瞬で終わっちゃった?」

 ノーマがそう言った瞬間だった。

 バカでかい火の球が、物凄い勢いでノーマに向かって放たれた。

 ニコラスの“フュー・ロッシィ”だ。

「さすがにまだ終わってなかったか」

 ノーマはそう呟くと“シールド”を発動し、火の球を防いだ。

 次いで、ラウラの“アクア・コーゲル”も、難なく防ぐ。

「くそっ!簡単にやられてたまるか・・・!」

 ニコラスは一歩ずつ前に進みながら呟く。

 こんなところで、ニコラスは立ち止まってはいられないのだ。

「くそ・・・くそがっ」

 勝たなきゃならないんだよ。負けるわけにはいかないんだよ。

 そう思えば思うほど、怒りや悔しさで胸が潰されそうになる。

「負けるのも勉強よ。負けたからこそ、得るものだってある」

「負けるにしたって、こんなやられっぱなしでたまるか!」

 ノーマは真面目な顔でそう言うが、ニコラスには響かない。

 ニコラスの中に、焦りの感情が出てきた。

 だけど、『協力』するということに踏み出すことができない。

 ニコラスは、自分自身の力のみで勝ちたいのだ。そんなことは不可能だと、嫌というほど思い知らされている状況なのに。

 悔しさと焦りによって、いつもの冷静さを欠いてる。下唇を強く噛む。

「────・・・ニコラス、諦めろ」

 そんな状況下で、ビトの気の抜けた声が響いた。

「・・・は?」

 ニコラスは、怪訝そうな表情でビトの顔を見る。

「勝ちてぇんなら、協力とやらをしようぜ」

 ビトは冷静に、そう告げた。


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