第五十一話 実力はあるけれど
「こいつら、マジで協調性なさすぎ・・・!」
ビトは好き勝手に動くニコラスとラウラに対し、イラついた様子で口にした。
今日のノーマの授業で最後の試合のメンバーとなったのがビトとニコラスとラウラだった。
実力でいえば、もっとも強い組み合わせだろう。何しろ、天才と呼ばれるニコラスがいるのだから。
ラウラもニコラスに負けず劣らずの実力があるし、ビトだって人並み以上の実力がある。
だから、今回こそはいくらノーマでもやられてしまうのではないかと誰もが思った。
中級魔術師とはいえ、三対一ではノーマのほうが不利だ。相手が子供とはいえ実力者ならなおさら。
だけど、ノーマはこう言ったのだ。
「ま、実力はあるけれど、たぶん一撃も入れられないよ」
みんな、その言葉にビックリしてしまった。
カキたちでさえ一撃は入れられたのに、一体ノーマは何を言っているのだろうか。
「言ってくれんなぁ、ノーマ先生。ま、オレも同意見だけど」
カキの隣にいたビトは、複雑な笑みを浮かべながらそう言った。
「な、何でだよ?」
「わかんねぇの?この試合は、『協力すること』が大前提としてあるんだよ。オレはともかく、あの二人が協力なんてすると思うか?」
意味がわからないというカキに対し、ビトはそう答えた。
「しかも、先生は今、『一撃も入れられない』と口にした。たぶんこの一言で、ニコラスは冷静さを欠いてるはずだぜ」
「あー・・・」
ビトの言葉に、カキも納得してしまった。
これで本当に一撃も入れられなかったら、理不尽にカキはニコラスに怒られることだろう。無言か、そうでないかは別にして。
「ビト、頑張って一撃入れられるようにしろよ。ヘタすりゃ、お前もとばっちりを食うかもしれねぇからよ」
カキはそんなふうに、ビトにエールを送った。
そんなわけで試合が始まったわけだが、ビトの言っていた通り、ニコラスもラウラも好き勝手に動いている。協力なんていう言葉は、この二人の中には存在しないらしい。
おかげで、ビトはまともに攻撃を与えることもできず、呆れ果てている。そして、若干イラついてもいる。
「・・・っとに、こいつらとチームなんてついてねぇ」
小言を言いながら、もう勝ち目はないと諦めている。
そんなビトのことなど気にもせず、ニコラスもラウラもノーマに攻撃を仕掛けていく。
だが、全然あたりもしなければ掠りもしない。
そのことに、ニコラスはかなりイラついている。
ラウラに関しては、相変わらずの無関心といった態度だが。
「ダメよ、感情に身を任せちゃ。もっと冷静になって。今のままじゃ勝てないってことは、あなただってわかっているでしょう?」
「うるさいっ」
ノーマはニコラスを宥めるようにそう言うが、ニコラスは聞く耳を持たない。
「力だけじゃどうにもならないことだってある。力以外にも大切なことはあるの。それを、私はずっと言い続けている。聡明なあなたなら、それが何かわかりきっているでしょう?あなたでなくても、ここにいる誰もがわかりきっているのだから」
「そんなことはどうでもいい・・・!」
今のニコラスは、苛立ちのままに攻撃している。
そんな攻撃じゃ、ノーマには簡単に避けられてしまう。
ニコラスだって、わかってはいる。どうすることが勝利への近道なのか。




