第五十話 どんなに自分が嫌になっても
ノーマとの試合に向けて、そして、戦闘魔術師に向けて、カキは特訓を重ねていた。
魔術より体術のほうができるカキは、今は体術を磨くことにした。もちろん、魔術のほうもおろそかにはしていないが。
毎日ひたすらに、特訓、特訓。
ときには、ラウラに教えてもらいながら、ただひたすらに一生懸命にやっている。
「はーい、じゃあ、今日の第二試合!カキくん、マリアンちゃん、ジャスパーくんの三人チームよ」
「よっしゃー!ついに俺の出番!」
ノーマの言葉に、カキは嬉しそうに飛び上がった。
「お前、うるさい」
隣で急に大声を出してきたので、ビトは鬱陶しそうにそう言った。
「いいだろ、楽しみにしてたんだから!」
「お前に勝てるわけないだろ」
「いいんだよ!そんなことは!」
勝ち負けが重要ではないとノーマも言っていたし、勝てないことくらいカキにだってわかっている。
実際に戦ってみることに意味があるのだ。まだ戦闘魔術師ですらないカキたちが、現役の戦闘魔術師と戦えるということは、貴重な経験となるのだから。
「それじゃ、頑張って協力して私を倒しにかかってね」
ウィンクをしてノーマがそう言い、試合が始まった。
カキとジャスパーは一気にノーマに向かって駆け出した。思考回路が似ているのだろうか。
二人はノーマに体術で仕掛けていく。
「え、えっと・・・」
マリアンはどうするべきかわからず、若干挙動不審ではあったが、魔術での後方支援が妥当な判断だとし、魔術を繰り出した。
「“フェイル・カッター”」
木の葉がノーマ目掛けて鋭く飛んでいく。
「私が求めてるのは協力よ?共に戦う仲間の動きも考えて動かなきゃ」
ノーマの言う通り、三人の動きはちぐはぐで、今にも仲間同士で傷つけ合いそうな状況だ。
マリアンは細心の注意を払いながら魔術を発動しているが、カキやジャスパーの動きに若干翻弄されている。
「狙うべきは何かをよく考えて。自分がすべき行動をよく考えて」
ノーマは三人の攻撃を避けながら、言い聞かせるようにそう言う。
三人とも、誰も攻撃のタイミングが合っていないのだ。そう言うのも無理はない。
「────・・・ジャスパー、下がるぞ!」
ノーマの言葉を受けて、カキはジャスパーと共にマリアンのもとまで下がった。
「マリアン、この中で一番頭が回るのはマリアンだ。そして、確実に魔術を発動できるのも」
カキはそう前置きをして話し始めた。
「オレは、魔術も体術もまだまだで、役には立たない。そんな自分が嫌いだ。だけど、一人じゃ無理でも、誰かと一緒なら何とかやれるかもしれないんだ・・・!だから、三人で協力して、せめて一撃でもノーマ先生に入れよう!」
カキの必死な訴えに、ジャスパーは力強くカキの肩を叩いた。
「よっしゃ!頑張ろーぜ!このまま負けるのは悔しいしな」
「うん・・・!私も、頑張って作戦考える。三人で頑張ろう」
ここからが、本当の試合のスタート地点だ。
結論から言うと、一撃は一応入れることはできた。
とはいえ、ほんのかすり傷程度で、本当の戦闘ならば完全にこちらの負けである。
だけど、それでも、一撃を入れることができたことに、カキもジャスパーもマリアンもとても喜んだ。
「うん。はじめは危うかったけど、ちゃんと協力できたじゃない。だからこそ、一撃を入れることができたのよ」
ノーマも嬉しそうにそう言った。
「今回のことを忘れないでね。協力することの大切さを。経験は絶対に無駄にならないわ」
ノーマの言葉を胸に、カキたちは一歩前進する。




