第四十九話 ノーマが最も伝えたいこと
拘束から外れたノーマは、シーラたちから少し距離をとった。
ノーマは、相手が生徒だからといって、決して甘く見ているわけではない。年齢と実力が比例するわけではないと、重々承知しているからだ。
とはいえ、残り時間はわずか。
恐らく、三人にはもうこれ以上の策はない。あっても、さっき以上ではないだろう。
「まだだよ、二人とも!」
シーラはそう言うと同時に、ノーマに向かって駆け出す。
それと同時に、ケヴィンも反対側からノーマに向かって駆け出す。
ナタリオは動かず、魔方陣を描きだした。
「“フュー・ロッシィ”」
シーラとケヴィンを援護するように、ノーマに向かって火の球を撃ち続けた。
だけど、ノーマにとっては想定の範囲内。簡単に三人の攻撃をかわしていた。
そして、試合は終了となった。
「三人ともおつかれさま。なかなかいい試合だったよ」
試合が終わったあと、ノーマは三人を労った。
その後、生徒全員に対して話し出した。
「私がみんなに一番伝えたいことはね、仲間と協力すること。協調性が、戦闘において最も重要だと私は考えてる。今の三人の試合でも、きちんと協力していて、私はすごくよかったと思う。勝ち負けだけが重要なことではないもの」
シーラたちの試合の中でも、ノーマは言っていた。
────私に勝ちたいなら、協力は必須よ
これは、決してノーマ相手だけに言えることではない。誰と戦うにしろ、協力は必須。重要だ。
「それからね、一緒に戦う仲間を大切にしてほしい。戦闘魔術師はいつ、どこで命を落とすかわからない。だから、どんなときも仲間を大切にして。仲間のことを考えて。そして、できることなら、仲間を失わないように戦ってほしい」
ノーマの言葉には何か重みを感じた。
戦闘魔術師にとって、あたりまえの日常はあたりまえではない。いつだって、死と隣り合わせ。
今はあたりまえみたいにここにいるが、いつかは自分の知らないところで、あるいは自分の目の前で命を落とすかもしれない。
戦闘魔術師はそういう仕事で、そういう運命なのだと誰もがわかっている。
「大丈夫。みんなは強くなるよ。自分の身も仲間の身も守れるようになれる。だから、がんばって私を倒すつもりで戦ってね」
ノーマは優しく微笑んでそう伝えた。
カキたちが戦闘魔術師として仕事に就くのはまだ先の話。
だけど、あっという間にその時はやって来る。しっかり準備しておかなければならない。
死と隣り合わせの仕事だからこそ、真剣に、一生懸命毎日の授業をこなしていかなければ。
「さて、では次の試合をしましょうか」
ノーマの言葉で、次の試合のチームが発表された。
ノーマの言葉によって、より強くなろうと決意したカキは、帰るなり特訓を始めた。
いつ、ノーマと試合することになっても大丈夫なように、とまでは無理かもしれないが、少しでもそのときには強くなっていられるように。
どうしても魔術はうまくならない。正確に言えば、うまくはなっているのだが、このスピードでは全然みんなに追いつけない。
ノーマが言っていたように、本当に強くなれるのだろうか、と疑問に思ってしまう。
誰かの身を守るどころか、自分の身すら今のカキには守ることができないだろう。足手まといなのは目に見えている。
どうしてここまで自分には魔術の才能がないのかと、怒りが込み上げてくる。
せめて魔術ができない分、体術が人並み以上に優れていればよかったが、人並み程度しかカキにはできない。
「どこが〈神の子〉だって言うんだ・・・」
自分の身すら守れない自分は、神の子などと呼ばれるような存在ではない。
日を重ねるごとに、カキの中にその想いが強くなるばかりだった。




