第四十六話 負けて敗けて
ビトとジャスパーとの対戦後、三回ほどカキとナタリオのペアで試合をすることはあったが、やはりどれも敗北という形で幕を閉じた。
そして、ついにノーマが決めたチームでのノーマとの試合が行われることになった。
カキはそのことに興奮しているが、それと同時にこれまでの結果から不安も感じていた。
だから、というわけでもないが、魔術の特訓の時間を多くした。
今まで、魔術はナタリオに任せて、カキは体術でばかり攻めていた。魔術はとことんダメなことは、カキが一番わかっているから。
いくら夏休みにラウラに教えてもらったと言っても、やはりそんなに簡単には習得できない。
下手に魔術を出して勝率を下げるくらいなら、と体術ばかり繰り出していたが、さすがにこのままでは魔術が本当にダメになってしまう。
だからこそ、魔術の特訓の時間を増やしたのだ。少しでも、うまく扱えるようになるために。
「カキって、本当に魔術が苦手なんだね。全然できてない」
「そのとおりだけど、わざわざ口に出すなよ!」
今も、夏休みほどではないが、ラウラに魔術を教えてもらっている。見るだけでも十分勉強になる。
ただ、やはりラウラはレベルが高いから、勉強にはなるのだが、へこみもする。
「くそー・・・やっぱり、俺には魔術の才能がないってことなのか・・・」
カキはぶつぶつと小言を言う。
「そんなこと言ってたって、うまくならないと思うけど」
「うるさいな、わかってるよ!」
冷静にラウラに言われ、カキは言い返しながら魔術を木に向かって放った。
カキが放ったのは水の球を撃つ“アクア・コーゲル”だが、木まで届くことなく、その場でチョロチョロと水が流れ出ただけになってしまった。
「何なんだ・・・何で、こんなにできないんだ!」
叫んだってしょうがないのだが、叫ばずにはいられず、カキは今にも投げ出しそうな勢いで叫ぶ。
「ほんと、何でできないの?」
さっきまで頬杖ついて座っていたラウラは、立ち上がり、カキが放とうとした“アクア・コーゲル”を撃った。
水の球は勢いよく木にあたり、はじけ散った。
「ここまではいかなくても、もう少し飛ばせてもいいんじゃない?」
ラウラの言葉は、チクチクとカキに突き刺さる。
ラウラの言っていることはわかるが、言い方ってものがあるだろう。もう少しオブラートに言えないものか。
とはいえ、カキにラウラを突き放すことはできない。ベルトランにラウラのことを頼まれているから。
だから、ラウラの態度に慣れていくしかないと自分に言い聞かせ、カキは魔術の特訓を再開した。
「はーい、今日から私が決めたチームと私とで試合をしていきたいと思います」
ついにこの日がやって来た。
カキたち多くの生徒にとって、そして、ノーマにとっても楽しみにしていたことだった。
「では、記念すべき最初のチームは・・・ケヴィンくん、シーラちゃん、ナタリオくんの三人よ」
最初に試合をすることができず、がっかりするカキの隣で、ナタリオがガタガタと震えていた。
「おい、大丈夫か?頑張れよ。お前ならできるって」
そんなナタリオの様子に気づき、カキはそう声をかけた。
「ただでさえイヤなのに、一番なんて・・・ムリムリムリ」
そんなカキの声など届いていないようで、ナタリオは、ムリムリムリ、と呟き続けていた。




