第四十四話 魔術だけでは
ラウラ、ノーマと別れて家に帰ったカキは、さっきのラウラと侵入者の戦いを思い返していた。
突然のことではあったが、カキは何もすることができなかった。そのことを気に病んでいた。
そうやってカキが何もできなかった間に、ラウラは一人で戦っていたのに。
ラウラは女の子で、普通に考えたらカキが戦って守らなければならなかったのに。
どうすることもできなかった。
戦っていたところで、カキの場合は負けが目に見えてはいただろうが、それでも少しでも力になるべきだった。
カキは大きくため息を漏らした。
次の日、カキはいつものように魔術の特訓をしていた。若干、心ここにあらずという状況で。
そこへ、ふらっとラウラがやって来た。
「ラウラ!腕、大丈夫か?」
ラウラのことが視界に入った瞬間、カキは声をあげた。
「大丈夫よ。包帯巻いてるだけだし。言ったでしょ?このくらい平気だって」
ラウラはカキがどうしてそこまで心配しているのかわからないといった様子だ。
「ラウラはすごいな。俺は何もできなかったのに、一人で戦ってさ」
「べつに、大したことないわ。お義父様によって鍛えられてるのよ」
「それにしたって、あの状況で動けるのはすげぇよ」
相変わらず淡々と話すラウラに、今のカキでは敵わないと思い知らされる。
カキは魔術さえうまく使えればとずっと思っていた。
だけど、それだけではダメなことが今回のことでわかった。
どんな状況でも、動くことができなければ何の意味もない。
とはいえ、やはりある程度の力をつけなければ、例えば昨日ならラウラの足手まといになるだけだ。
「よし」
カキは気持ちを切り替えて、今日も魔術の特訓を精一杯やることにした。
「ラウラ、“フェイル・カッター”を見せてくれ」
「わかった、わ」
ラウラはすぐに魔方陣を描き始めた。
「“フェイル・カッター”」
そう魔術名を唱え、その魔術は奥の木に放たれた。
“フェイル・カッター”は、葉っぱで物を切る緑属性魔術だ。
ラウラの“フェイル・カッター”は見事に、木の枝を切り落とした。さすがだ。
「んじゃ、次。“ドナ・スピア”」
「“ドナ・スピア”」
ラウラはまたしても木に向かって魔術を放った。
“ドナ・スピア”とは、雷でできた槍のような氷柱のようなものを放つ魔術だ。
ラウラの“ドナ・スピア”は、木を貫いていた。
「すっげー・・・」
カキはそう言葉にするしかできなかった。
ラウラの魔術は、昨日のも今日のもレベルが高い。カキには簡単に真似できない。
このレベルの高さも、ベルトランが養女にした理由の一つなのだろうか。
「お前、ほんと、何なの?」
「何って、私は私だけど」
「いや、そんなこと言ってんじゃないんだけど」
すごいけど、こういうところがな。ラウラらしいけど、ともカキは思ったが。
すごいやつは関わりがたい雰囲気を纏っているのがカキの周りではわりと溢れている。実力があれば、思考回路が普通とは違うのだろうか。
ラウラには魔術だけではなく、それだけでは足りないということも教えてもらったことだし、二学期までにもう少し成長したいとカキは思った。




