第四十三話 王族への侵入者
カキがラウラに魔術の特訓に付き合ってもらっていたとき、王族敷地内の警報が鳴り響いた。
「な、何だ?」
警報なんて滅多に鳴るものじゃないから、カキは驚いて口にする。
ラウラはといえば、厳しい目付きで周囲を警戒しており、カキと同い年とは思えないほど冷静だ。
「“フュー・ロッシィ”」
ラウラは、気配を感じてとある木に向かって、正確に言えばそのうしろに隠れている人に向かって魔術を放った。
木のうしろにいた人は、それをかわしてカキとラウラのほうへと近づいてきた。
「カキ、ここを動かないで」
ラウラはそう言うのと同時に、近づいてきた人と体術で応戦した。
「何が目的で侵入してきたのかしら?」
「ガキに話すことはねぇよ!お前らはオレたちの人質となればいいんだ!」
オレたち、と言ったということは、その侵入者はほかに仲間がいるということだろう。
「“アイス・ダッギュ”」
侵入者の男は、そう魔術名を唱えた。
ラウラはすぐに侵入者から距離をとったが、相手の魔術によって腕に傷を負った。
「ラウラ!」
カキはラウラの腕から流れる血を見て、思わず叫ぶ。
だけど、ラウラは涼しい顔をして
「このくらい平気、よ」
と、答えた。
侵入者が使った魔術“アイス・ダッギュ”とは、氷でできた剣を作り出す氷属性魔術だ。
氷でできた剣は鋭く、簡単に相手を傷つけることができる。
「そっちがそれを使うなら、こっちだって使わせてもらうわ」
ラウラは侵入者を見据えて、魔方陣をすばやく描く。
「“ファイアー・ダッギュ”」
そう唱えた刹那、ラウラの手に炎でできた剣が握られていた。火属性魔術だ。
「な・・・!?この手の魔術はまだお前らの年齢じゃできないはず・・・!」
侵入者は目を見開き、ラウラに吠えた。
だけど、ラウラはそんなことは無視して、侵入者に向かって駆け出した。
反応が遅れた侵入者は、武器をラウラに溶かされてしまった。
だけど、それでも侵入者は簡単にはやられまいと、体術でラウルと距離をとった。
「さすがは王の養女ってか?でも、そう簡単にオレはやられねぇぞ」
侵入者はさっきより真剣な眼差しになって、ラウラに襲いかかろうとした。
が────・・・
「ぐわっ!」
侵入者の頭に、どこからやって来たのだろうか、ノーマの踵落としが命中した。
カキとラウラは思いもよらない助太刀に、目を見開く。
「カキくん、ラウラちゃん、大丈夫!?」
侵入者の意識を飛ばし、縄で縛った後にノーマはカキとラウラのもとへと駆け寄った。
「お、オレは大丈夫だけど、ラウラが・・・」
「ラウラちゃん、腕怪我してるじゃない!とにかく、はやくベルトラン様のところへ行きましょう?」
ノーマはカキには家に帰るよう言って、侵入者を引きずりながらラウラと共にベルトランのもとへと向かった。
ラウラにさきにベルトランのもとへ行ってもらって、ノーマは侵入者を門衛に引き渡した。
「ベルトラン様、戻りました」
「おぉ、ご苦労だった」
ノーマがベルトランのもとへ行ったとき、ベルトランはラウラの治療を行っていた。
「お前がいてくれて助かったよ。それで、侵入者のことは何かわかったか?」
「これから調べるところです。ベルトラン様に直接報告されるかと・・・私は信用されていませんから」
「そうか・・・まぁ、大きな組織でなければいいのだが」
王族に何かしらの不満を持っているものは少なくはない。
だからこそ、今回のように侵入者がやって来たりするのだ。
「何にせよ、警備体制をもっと厳重にしなければな」
ベルトランの言葉に、ノーマは強く頷いた。




