第四十二話 夏休み、だけど、特訓の日々
夏休みに入って一週間。
今もなお、カキは魔術の特訓を毎日欠かさずしている。
「カキ?」
「ラウラか」
カキは王族の敷地内で魔術の特訓をよくしている。それは今も。
だから、たまたま王族の敷地内を歩いていたラウラに見つかった。
「何してるの?」
「魔術の特訓だよ」
ラウラはカキのそばまでやって来た。
「特訓?どうしてそんなことするの?」
たんたんとした口調から威圧感を感じるが、カキも少しは慣れてきた。
「オレ、魔術苦手だからさ。特訓でもしねぇと全然みんなに追いつかないから」
カキは自虐的に笑いながら言う。
「そういえば、ラウラって魔術得意だったよな?ちょっと教えてくれねぇ?」
カキは思い出したように口にした。
「教える・・・?私、そういうのわからないんだけど」
ラウラは首を傾げて答える。
「あー、じゃ、見本見せてよ」
「それくらいならいいけど。何の魔術?」
「じゃあ、とりあえず、“ソーン・ソイル”から頼む」
ラウラはカキの言葉通り、“ソーン・ソイル”の魔方陣を描き、出した。
「“ソーン・ソイル”」
“ソーン・ソイル”とは防御として使うことの多い、土の壁を出す戦闘魔術だ。
ラウラの“ソーン・ソイル”は見事に発動され、カキとの間に高い土の壁が出てきた。
「すげぇ・・・」
カキは出てきた土の壁を見上げながら、感嘆の声を漏らした。
これだけの高さをカキたちの年齢で出せるのはなかなかすごいことだ。
ラウラは出し終えると、すぐにその魔術を消した。
「これでいい?」
「お前、すごいな」
あれだけの高さのものを作ったのに、全くもって疲れが見えないラウラに対し、カキはもはやあきれた様子で言った。
ラウラはカキの反応など、全くもって気にしてなんかいなかったが。
「次は何をやればいい?」
淡々と、ラウラはカキに訊く。
「えっと、じゃあ、“アクア・コーゲル”」
カキはラウラの淡々とした様子に、たどたどしく答えた。
ラウラはさっきと同様に、魔方陣を描いてから魔術名を口にする。
「“アクア・コーゲル”」
“アクア・コーゲル”は簡単に言えば水でできた球を撃つ水属性魔術だ。
つまり、“フュー・ロッシィ”の水バージョンだ。
ラウラは“アクア・コーゲル”を弾丸のように何発か木にむかって撃った。
「大きさも変えれるけど」
「あ、いや、十分だ」
ラウラはたぶん、ニコラスに勝るとも劣らない魔術力を持ってる。
カキがニコラスを越えるためには、ラウラを越えることが必須条件だ。
「なぁ、ラウラ」
「何?」
「もしよかったらなんだけど・・・たまにでいいからこの夏休みの間、オレの魔術の特訓に付き合ってくれねぇか?」
ニコラスには絶対に頼めないし、頼んだところで断られる。
だけど、ラウラなら付き合ってくれると考えて、カキは頼んだ。
「こんなことをするだけでいいならいいけど」
「本当か!?」
ラウラの返答に、カキはパァッと笑顔を浮かべて言った。
そんなカキに対し、ラウラはカキがどうしてそんなに嬉しそうなのかわからず、首をかしげていた。
「じゃ、頼むな。オレ、毎日ここで特訓してるから、暇なときに来てくれ」
カキはそう言って、次にやってほしい魔術を口にしようとした。
が、その瞬間に王族敷地内の警報が鳴り響いた。
一体、何があったというのだろうか。




