第四十一話 認められたいのも
夏の暑さと、そんな炎天下の中で魔術の特訓をしていることで、カキは汗だくだった。
あれから毎日のように魔術の特訓をしていたカキだが、今日は特に真剣に取り組んでいた。
その原因は昨日の夜、父のジョシュアとの言い合いにあった。
それは、晩ごはんも食べ終わった頃。ジョシュアが任務から帰ってきて少し経った頃のことだ。
「カキ、お前、学校の授業はどうなんだ?ちゃんとやっているんだろうな?」
「父さんの言うちゃんとやってるってのがどういうことかわかんねぇけど、俺なりにちゃんとやってるよ」
ジョシュアの言い方にカキはムカつきながらも答える。
「お前なりにやってちゃ、まともにやれていないんだろう。そんなことで戦闘魔術師になれると思っているのか?」
このジョシュアの言葉に、カキは完全にキレた。
「父さんには関係ないだろ!」
「あるに決まってるだろう。お前は俺の子で、何より、〈神の子〉なのだから」
「っ・・・!」
ジョシュアのいたって冷静な返答に、カキは声にならない叫びをあげた。
〈神の子〉〈救世主〉であるということは、カキにとっては重荷だ。それ相応の力を持っていないから。
だから、そう呼ばれることはカキにとっては一番嫌なことなのだ。そういうふうにしか見られないことも。
「それだというのに、お前の成績はちっとも上がらない。戦闘魔術師はそんなに簡単な仕事じゃない。いつまでもそんなようなら、〈神の子〉だろうとなんだろうと、戦闘魔術師になるのは諦めろ。そもそも、お前が〈神の子〉だということが、何かの間違いだったのだ」
カキの気持ちなどそっちのけでジョシュアは言葉を並べる。
「諦めるか!戦闘魔術師になるために、毎日特訓してんだよ!見てろよ?今に強くなってやるから」
カキはそう叫んで、自分の部屋へと戻った。
そんなやり取りがあって、カキは今、魔術の特訓に燃えているのだ。
たとえ全然人並みにできなくても、うまくいかないことのほうが多くても、とにかくやる。数打ちゃ当たるみたいな考え方だ。
とにかくカキはジョシュアを見返してやりたかった。
自分はこんなところでは終わらない。
やればできるんだ。
どこまでだって強くなってやる。
そんなところを、そんな気持ちを込めて。ただそれしか、今のカキの頭にはなかった。
去年の実技合宿のとき、ニコラスとのことでビトに言われた。
────認められたいんじゃねぇの?
まさに今、カキはジョシュアに認められたいという想いで頑張っていた。
カキにとって認めてもらいたい相手はニコラスだけではないのだ。
だけど、ジョシュアに対してはただ認められたいという気持ちだけではない。
ジョシュアはいつもカキのことを〈神の子〉〈救世主〉というものを基準としてしか見ていない。それがカキにとってすごくイラつくのだ。
ただでさえ、ジョシュアはカキのことを見ていない。いつだって仕事で家にはいないことのほうが多いのだから、見れるわけがないのだ。
だから、カキがどれだけ成長しているかをジョシュアは知らない。
ジョシュアにカキというただ一人の人を見てほしいのだ。〈神の子〉〈救世主〉だということを忘れて、ただ見てほしいのだ。
カキの想いはただそれだけ。
だけど、ただそれだけのことでカキを頑張らせているのだ。
「いつかギャフンと言わせてやる!」




