第四十話 カキたちの特訓〈後編〉
カキは相変わらずシーラに教えられながら魔術の特訓をしていたが、ビトやマリアン、ケヴィンは仕切っていたカキがそんな調子なので、各々が適当に魔術の練習をしていた。
「ビトくん、カキくんの手伝いしなくていいの?シーラちゃん一人じゃ大変じゃない?」
「やだよ、めんどくさい。そう言うお前が手伝ってやればいいだろ?」
ケヴィンの言葉に怪訝そうな顔をしてビトが答える。
「んー、いや、僕も遠慮するよ。彼の手伝いは大変だろうし。シーラちゃんなら一人でもうまくやれそうだし」
そんなビトに対し、ケヴィンは少し考えてからそう答えた。
「何でだよ・・・」
ビトはケヴィンにカキの手伝いをしてほしかった、というより、少し離れてもらいたかったから、脱力したように呟く。
そんな二人のやり取りなど知らず、今もなおカキはシーラに教えられながら、少しずつ魔術を発動できるようになった。
「だいぶできるようになったね、カキ」
「あぁ!シーラのおかげだ。サンキューな」
シーラの嬉しそうな笑顔に、カキもまた嬉しそうに答える。
「ううん、カキが頑張ったからだよ。大体の基礎はできるようになったから、これからだってなんとかなるよ」
そんなカキに対して、シーラはさらにエールを送ってくれた。
「ねぇ、ちょっと気になってたんだけどさ、どうして特訓しようと思ったの?もしかして、この間のニコラスに影響されて?」
「あぁ、そうだよ。ニコラスはオレが思っていた以上にすごかった。今のままじゃ、あいつには追いつけないから・・・だから、今まで以上に頑張りたいって思ったんだよ」
シーラからの問いかけに、カキは強い意思を持った目で答える。
「ま、こうやって手伝ってもらわないとまともにできないんだけど」
頭に手をあてて、困ったような笑みを浮かべてカキはさらに言った。
そんなカキを見て、シーラは自然と笑ってしまった。
その後、やっとカキはビトたちにも声をかけて、今度こそ五人で魔術の特訓をすることにした。
夕方になり、カキたちはそれぞれ家へと帰ることにした。
「シーラちゃん、マリアンちゃん、家どこ?一緒に帰ろう」
ケヴィンはシーラとマリアンに訊く。
「は?ふざけんな。お前一人で帰れ」
だけど、シーラやマリアンが答えるよりさきにビトが答えた。
「別にいいじゃないかー。ビトくん、僕に冷たすぎない?」
「うるせぇ。俺はマリアンと家が隣なんだよ。お前がシーラやマリアンと帰ることにしたら、必然的に俺も一緒に帰ることになるだろ」
「まぁまぁ、いいじゃない。みんなで帰ろう?」
言い合いをするビトとケヴィンの間にシーラが割って入る。
「カキ、帰るよー」
「悪い、オレ、もうちょっとやって帰るわ」
シーラはビトとケヴィンの間に入りながら、カキに声をかけて来たが、カキはそれを断った。
「そう?じゃあ、私たちはさきに帰るね。また明日」
「おう、また明日」
シーラとカキは挨拶を交わし、シーラはビトたちを引き連れて帰っていった。
それを見送ったカキは、ふぅっと息を吐き出して、一人で魔術の特訓を始めた。その目は真剣そのものだ。
カキは普通の人よりも劣る。人一倍特訓しなければ、ニコラスには敵わない。
ただそれだけが、カキをここまで頑張らせる原動力となっている。
それに、頑張ることしかカキにはできないのだ。それ以外にカキには取り柄がないから。
ひたすらに、何かを目標にして諦めずに頑張ること、ただそれだけしか。




