第三十七話 戦闘魔術で
今日はノーマの授業である実技戦闘学がある日だ。
五年生になってから数えると、三回目の授業だ。二週間に一度というのは変わっていない。
前回と前々回の授業で、いくつかの戦闘魔術を教えてもらった。と言っても、ほとんどが去年からある戦闘魔術学という授業で教えてもらったものだが。
でも、戦闘魔術学ではその魔術の効果や欠点などを教えてもらうだけで、実際に使ったことはない。知識だけ授けてもらっていると言ったところだろうか。
だから、実際に使ったのは実技戦闘学がはじめて。カキにとっては、やはり難しいとしか言えなかった。
今日の授業では、おさらいとしてペアでお互いに魔術を繰り出すこととなった。
「じゃあ、まずは火属性の戦闘魔術、“フュー・ロッシィ”から始めましょう」
ノーマの言葉によって、“フュー・ロッシィ”から始まることとなった。
“フュー・ロッシィ”とは、火の球を撃つというシンプルな魔術だ。
しかし、シンプルだからこそ奥が深い。火の玉の大きさや繰り出す速さなどによって威力を自在に変えられる。
威力を自在に変えられると言っても、術者がそれに見あった魔力や魔術力を持っていなければそんなことは不可能だ。
カキたち五年生の実力なら、小さいものなら魔力は少量ですむので緻密なコントロールさえできれば繰り出せる。ただし、一般的にそれができる五年生は極わずか。
逆に、大きいものならどんなに大きくても顔の大きさぐらいだろう。戦闘魔術師なら自分の体の数十倍の大きさにできる者もいるが。
顔の大きさほどなら、一般的な五年生の魔力から考えれば半数ほどはできるだろう。
問題は速さだ。これは本当に個人差が大きい。
五年生の平均値としては速くても馬が走るのと同じくらいの速さだ。これは普通の戦闘魔術師に比べると遅く、普通の人でも余裕で目で追える。
とはいえ、これらはあくまで平均値。例外はある。
カキたちは各々、ペアと距離をとって向かい合って立った。どちらが先にするかも決め、撃たれるほうは、防衛魔術“シールド”を使う準備をする。
ちなみに、撃つほうは魔方陣を作らなければならない。“シールド”のように自身の魔力で作る壁とは違って、魔力を火に変えるためには魔方陣が必要だからだ。
攻撃魔術はもちろん、防御魔術も大体のものは魔方陣が必要なのだ。
だけど、ある程度簡単なものや慣れたものなら普通の戦闘魔術師は魔方陣を作らない。作らなくても魔術を使う技術があるからだ。
しかし、まだ戦闘魔術師ではないカキたちは慣れるためにも魔方陣から作っていく。
そのため、撃つほうにも準備が必要だ。
「あ、ニコラスくん」
そんな中、思い出したようにノーマはニコラスに声をかける。
「今日は私が相手をするわ」
今日、ニコラスのペアは休んでいた。
だから、ノーマがニコラスの相手をするらしい。もちろん、ノーマは攻撃側には回らない。
ニコラスは黙ってそれを受け入れた。というよりも、ニコラスに拒否権はない。
だけど、ニコラスにとってこれは悪いことではない。むしろ良いことだ。
なぜなら、ニコラスはペアに対して手を抜かなければならないと思っていたから。そうしなければ、相手に傷を追わせる可能性があるから。
今日、偶然にもそのペアが休みということで、全力を出すことができる。教師相手に手を抜く必要などない。
「じゃ、いつでもどうぞ。ニコラスくんなら魔方陣の作り方は覚えてるわよね?」
「必要ない」
ノーマの言葉をニコラスはばっさりと切り捨てた。
その言葉とそのすぐあとのニコラスの魔術を放つ動作から、ノーマは厳しい顔つきになり、すぐさま“シールド”を発動した。
「“フュー・ロッシィ”」
ニコラスが呟いた瞬間、ニコラスが拳銃のように人差し指を前につきだしたその指から、体より一回りほど大きい炎が凄まじい勢いでノーマに向かって放たれた。
カキたち周りの生徒はもちろん、ノーマも激しく驚いた。
「・・・ありえない」
ノーマはそう呟いた。




