第三十五話 話、そして
「久しぶりだな、カキ。前に会ったのは去年の夏だったか?」
「久しぶり、ベルトランのじいちゃん。去年の夏休み以来だな」
カキとベルトランはそんな挨拶を交わした。
「カキ、お前の家には言ってあるから、今日はうちで夕飯を食べよう。そのあと、家まで送るよ」
カキはそう言われて、ベルトランの家で夕飯を食べることになった。
夕飯を食べながら、ベルトランは最近の話を訊いてきた。
「戦闘コースに入って、専門的なことが多くて難しいけど、でもすっげぇ楽しい」
カキは楽しそうに話した。
「同じ戦闘魔術師を目指すのに、みんな全然タイプが違ったりしておもしろい。今年仲良くなったやつらも全然違うタイプで、一緒にいて楽しいし、なんか刺激になるっていうか・・・とにかく去年までとはいろいろ変わっておもしろい」
「ほぉ、そうか。楽しくやれているのはとても良いことだ。仲間にも恵まれているようだし、頑張って戦闘魔術師になるんだぞ?」
ベルトランの言葉に、カキは大きく頷いた。
夜八時頃、カキはベルトランと共に家へと帰っていた。ラウラとはベルトランの家で別れた。
カキは一応、王族なのでベルトランの家から多少は離れているが、王族家の敷地内ということで夜歩いていても大して危なくもない。
だけど、ベルトランはまだ話したいことがあるらしく、ちょっと回り道をしてカキの家へと向かった。
「ラウラのことだが、わしから何も話していなくてすまなかったな。しかも、もう冬になってしまった」
「いや、べつにいいよ。じいちゃんも忙しいんだし、しょうがないよ」
申し訳なさそうに言うベルトランに、カキはそう答える。
「ラウラのことなんだが、ちょっとお前に頼みたいことがあるんだ」
ベルトランは少しの間のあと、実は、というように話し始めた。
「ラウラは普通の人に比べて喜怒哀楽などの様々な感情が乏しい。というよりも、ほとんどないと言っても過言ではない。だからこれから先、人間関係などでうまくいかないこともあるだろう」
そこでだ、とベルトランは言葉を区切って強調した。
「カキにそれをうまく対処してほしい。対処と言っても難しいことじゃなくて、悪い関係にならないようにうまくやってほしい。カキならできるとわしは信じとる。それから、ラウラにたくさんの感情を教えてやってほしい。お前のやり方でかまわんから」
ベルトランは笑って言う。カキにしか頼めないのだと、ほかの人ではなくカキではないと駄目なのだと。
難しいことじゃないとベルトランは言ったが、カキにはとても難しいように感じる。
だけど、ベルトランがここまで頼むのだから頑張りたいと思った。それに、ラウラのことは気になっていたからちょうどいいとも思った。
「わかった。まぁ、ラウラがほかの人とは違うなっていうのは感じてたし、ラウラのためにもがんばるよ」
カキはそう答えた。
そんな話をしているうちに、いつの間にか家に着いていた。ベルトランに挨拶をしてカキは家へと入る。
カキは頑張るべきことを新たに見つけ、自然とやる気に満ちていた。
そんなやる気に満ちてから数ヶ月。カキは五年生になった。
五年生になったことでまたやる気に満ち満ちていたカキは、新たな一年を明るく迎える。もちろん、今までも明るく迎えていたが、またそれ以上に。
五年生、また違った生活となるだろうがクラスメイトは変わらない。
だけど、同じメンバーだが、去年一年で成長している。今年はどれだけ成長できるだろうか。




