第三十話 夏休みの課題
「なぁー、この自分の目指す戦闘魔術師はどんなものか、具体的に書けっていう宿題やった?」
カキはビトと遊びに行った先でそう訊いた。
「あぁ、あれなら二週間くらい前に終わらせたけど」
ビトはそう答える。
「オレ、まだなんだけど。っていうか、どんなこと書けばいいのかわかんないんだけど」
カキは困ったように言う。
「お前なぁ、今ごろ何言ってんだよ。来週には夏休み終わるんだぞ?そういうのははやく終わらせとけよ」
ビトが呆れたような顔でカキを見る。
もう来週には夏休みが終わる。それなのに、カキは一番面倒くさい宿題が残っている。終業式にエベラルドにはやめに終わらせたほうがいいと言われていたにも関わらず。
「でもさー、書こうと思っても悩んじゃって。結局、ずっとやってないみたいなことになってるんだよな」
カキは、もうどうしようもない、というように言った。
「思いついたこと書いとけばいいんだよ。何だっていいんだから。自分自身のことなんだからよ」
アドバイスしているつもりなのか、冷たく突き放しているつもりなのかはわからないが、ビトはゲームをしながら答えた。
「ま、でも、みんなの前で発表できるくらいにはしとけよ」
ビトはさらにそう言った。
カキはビトの言葉の意味がわからず首を傾げていると、ビトがそれに気づいて少し驚いた様子で
「え、何、お前忘れたの?休み明けに発表してもらうってエベ先生が言ってたろ」
と言った。
それを聞いて、カキは青ざめ慌てた。
「忘れてたっ・・・!」
「遊んでる場合じゃねぇよ。お前はとっとと帰って宿題しろ」
ゲームばかりでカキに目もくれないビトにそう言われて強制的に帰らされたカキは、帰り道を歩きながら考えていた。
「あれっ、カキ?」
考えることに集中しすぎて周りのことなど見えていなかったカキは、声をかけられて少し驚きながらその方向を見た。
そこには買い物帰りと思われるシーラがいた。
「シーラ、ちょっと聞いてほしいんだけど」
カキは宿題のアドバイスをもらうチャンスとばかりにシーラにそう言った。
シーラは笑顔で受け入れ、近くのファストフード店に入ることにした。
「あー、あの宿題ね。たしかにちょっと難しいよね」
シーラはカキの話を聞いて同意した。
「私は、ただただ自分の思い描く未来を書き連ねたよ。お母さんやお父さんの話なんかも参考にしながら。ついでに、そうなるためにはどうするべきかも少し書いたな」
難しいよね、と言いながらもかなりしっかりと書いているようだった。まぁ、こういう宿題はシーラの得意分野だからだろうが。
「自分はこうなっていたいっていう希望とかでいいと思うんだよね。それとか、自分が尊敬している戦闘魔術師がいるならその人みたいになりたい、みたいなことでもいいと思うし」
シーラはカキに具体的にアドバイスをした。
だけど、カキは考え込んで唸っていた。
「オレが思い描く未来、オレの尊敬している人・・・?」
カキは家に帰ってから、宿題をするために机に向かっていた。
しばらく考え込んではいたが、考えれば考えるほどわけがわからなくなったので、考えるのをやめた。それが正解だったのか、今は頭の中がすっきりしている。
おかげで、思ったよりもよく鉛筆を握る手が動いた。ただただ、思いついたことを書いていく。
新学期、さっそく宿題の発表があった。
そして、カキの番になり、宿題で悩んでいたとは思えない明るい様子で話し始めた。
「オレの目指す戦闘魔術師は────・・・」




