第二十六話 謎多き転校生
カキたちが四年生になってから二週間くらい経った頃。
「新年度始まったばかりだが、このクラスに転校生が来た。入ってくれ」
朝、エベラルドが教室に来るなりそう言った。
エベラルドの言葉で教室に入ってきたのは、艶々した黒髪ストレートの少女だった。
「ラウラ・ウィールドンです。よろしくお願いします」
エベラルドに促されてやった自己紹介は、決まり文句のように感情のこもっていないような、淡々とした様子だった。
何より、虚ろな目に血色の悪い肌は、きれいな髪や服装に対して不釣り合いな感じがした。何か病気でも患っているのかと心配してしまうほどに真っ白い肌だった。
だけど、そんなことより何よりも、その名前に教室内はざわめきに包まれた。
「え、ウィールドンって・・・ベルトラン国王の家名だよな?」
「何か関係あるのかな?」
「でもさ、とくに顔が似てるとかそう言う感じではないよな?」
生徒たちはそれぞれそんな風に言い合う。たぶん、ラウラが王族の腕章をつけていたこともあるからだろう。
「みんな、静かに!みんなが気づいているように、ラウラはベルトラン国王と関係がある。彼女はベルトラン国王の養女だ」
生徒たちを静め、エベラルドはそう言った。
その言葉に、また生徒たちがざわめいたが、エベラルドがラウラに窓側の一番前の席に座るように言って、転校生の紹介は終わった。
「まぁ、転校生が来るんだろうなってことは薄々気づいてたけど。なぜか今日の朝から席が増えてたし」
休み時間、ビトがカキの席に来てラウラのほうを見ながらそう言った。
「で?お前は知ってたのか?あのラウラって子のこと。お前、王族だろ?」
ビトはカキに目をやり、そう訊いた。
「いや、全然。さっきはじめて知ったよ」
カキはそう答える。
ビトは、ふぅん、と訊いてきたくせに興味なさそうな感じだった。
「でも、国王さまもどうして養女なんか・・・祖父と孫くらい年齢差あるよね?」
今度はシーラが言った。
「さぁ?でも、ベルトランのじいちゃんは困ってる人とかほっとけない人だから・・・」
カキは、うーん、と唸りながら答えた。
「国王さま、優しい方だもんね」
マリアンもそう言った。
と、そんな風にカキたちが話しているところに、さっきまで生徒たちに囲まれていたラウラが立っていた。
「あなたが、カキ・ギリッシュよね?」
「え?あぁ、そうだけど・・・」
カキのほうを見ながらそう訊くラウラに、カキは戸惑いながらも答えた。
「お義父さまに謝っておくように頼まれたの。私のことを知らせなくてごめんなさいって」
鈴のようにかわいらしくもキリッとした声でラウラは言った。
「あぁ、そんなこと・・・別に、謝るようなことでもないと思うけど」
カキは相変わらず戸惑いながら答える。
「そう。とりあえず、伝えたから。これからよろしく」
ラウラはカキの返答に対して、別にどうでもいいというような感じだった。
「あ、あなたたちもよろしくね」
ラウラはビトたちにも目を向けて言った。
「あ、うん。よろしくね。私は────・・・」
シーラがラウラに自分の名前を告げようとしたとき、ラウラがそれを遮った。
「シーラ・オルコットでしょ?あなたはマリアン・オリスト、それで、あなたはビト・ヘニング」
ラウラは三人の名前をピタリと当てた。
三人も含め、カキも驚いた。
「え、どうして・・・?」
シーラが口を開き、訊いた。
「お義父さまが、クラスメイトの顔と名前を教えてくれたの。このクラスの人たちはみんな覚えたわ」
ラウラは何てことない感じで答えた。
カキたちはそれを聞いて納得した。
だけど、それにしたって、何だか変わった子が来たものだ。纏う空気がほかの子たちと全然違う。
ベルトランはなぜ、ラウラを養女にしたのだろうか?
カキはそんなことを思っていた。




