第二十一話 同じ気持ちなら
五分という試合時間は短いようで長い。もう五分なんか経ってしまったんじゃないかとカキは思っていたが、実際は二分くらいの出来事だった。
まだカキとニコラスのろうそくは消されていない。ニコラスが守っている。
ビトはカキとニコラスの動きに警戒しつつ、今のところ何もしてこない。
だけど、このままの状態で試合が終わると、カキとニコラスの勝利となる。だから、ビトはきっと何か仕掛けてくる。
「じゃあ、そろそろこっちも一つ、消させてもらおうか」
ビトはそう言い、動いた。
今度はペアのほうがビトの前に出た。カキはそれに合わせて動く。
カキはビトのペアに向けて水の魔術を撃った。少しでも気を逸らさせるために。
ビトはニコラスに任せることにした。ビトは頭が良いから、きっとカキには思い付かない動きをする。だから、ニコラスに任せる。
突然、ビトは右の方に向かって駆け出した。ニコラスはそれに警戒心を強める。
ビトは走りながらも攻撃してきた。すべてニコラスが防いでいたが。それでも、ニコラスはビトのすばやい攻撃についていくのに精一杯だった。
ビトはそれを狙っていた。
ビトは角まできたところで止まり、魔術を撃った。当然、それはニコラスに防がれたが、その直後にろうそくの火が消えた。
ニコラスは少し驚いた顔をした。が、すぐにいつもの冷静な表情を浮かべ
「連続で魔術を撃っていたのか」
と、呟いた。
そう、ビトは魔術を連続で撃ったのだ。同じ角度、同じ大きさのものを。ひとつ前の魔術を防いでも、すぐうしろにあったものは防ぎきれない。ビトはそれを狙ったのだ。
「これで同点。こっちも勝つつもりでいくからな。やられっぱなしじゃカッコ悪いしよ」
結局、引き分けのまま五分経ってしまったので、ろうそくの火が落ちるまでの延長戦が始まった。
「オレたちは優勝を目指す!一つくらい消されたってなんてことはない」
カキはそう言い放った。
「オレたちだってやるときはやるんだ。ぜってー負けねぇ────・・・」
カキが喋っている途中でニコラスがうしろからカキの頭に水の魔術を撃った。
「うるさい。はやく動け。ろうそくの蝋が溶けきったら延長戦の意味がねぇんだよ、バカが」
ニコラスが機嫌の悪そうな顔でカキに言った。
「うっせー。わかってるよ。つーか、バカっていうな!」
カキはニコラスを指さしながら言った。
カキは無鉄砲に魔術を撃った。それこそ関係ない方向にだって。
カキがそうやっている間に、ニコラスはどう仕掛けるか考えていた。ただ撃っただけじゃ勝てないから。
そして、ようやくニコラスが動いた。ビトの陣地の頭上に向かって魔術を撃ったのだ。
もちろん、ニコラスが動き出してもカキは変わらず自分のやりたいように動いている。
ニコラスはビトの陣地の頭上に大きめの魔術を放ち、それに向かってさらに魔術を撃った。そうやって、雨のように雫を降らせたのだ。
「おいおい、マジかよ・・・」
さすがにビトもこれには対処できず、また、その雫がうまい具合にろうそくの火のもとへと降ったので、ビトの陣地のろうそくの火はすべて消えた。
カキもニコラスの行動に驚き、口を開けたまま少しの間、状況が理解できなかった。
それはみんな同じだったようで、少しの沈黙が起きた。誰もが、何が起きたのかわからないというような顔をして、カキたちを見ている。
だが、やがて審判の先生が声をあげた。
「────・・・勝者、カキとニコラス!」
その瞬間にその場が、わっ、と盛り上がった。
「はぁ・・・やっぱ、ニコラスがいちゃ勝てねぇよなぁ」
ビトはやっと終わったと言わんばかりに呟いた。
「お疲れ、ビト。やっぱり、オレたちが勝っただろ?」
カキはビトのもとへ行き、ニッ、と笑って言った。
「・・・あぁ、そうだな。まぁ、今回は二人とも同じ目標に向かってたからじゃねぇの?同じ方向を向いてたから、それが勝つことに繋がったんだろ」
ビトはそう言った。
カキはさらに笑って、このまま優勝するから、とビトにちゃんと見ておくように言った。




