↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国を読む者たち I - 統学院の五人  作者: なみみか
戦いの前の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/77

第47-1話 (オマケ) ガイウス、大地に立つ(1)

【要注意。本話は単なる妄想です。本編中における事実ではありません。】


あれを最初に見た時、私は純粋に軍人として評価していた。


これは強調しておきたい。


本当に。


最初は。


     *


総合軍事演習、最終日。


私は白軍中央部隊に派遣された中央軍兵士の一人として、学生指揮官の補助についていた。


精霊兵はよくできている。


隊列を組み、命令に従い、設定された疲労に応じて動きが鈍る。損耗判定を受ければ、その場で行動を停止する。


部隊指揮を学ぶ教材としては、生身の兵士を何百人も動員するより、はるかに合理的だ。


ただし、精霊兵は精霊兵である。


命令を聞き違えない。勝手な判断もしない。足が痛いのを隠して歩き続けたり、逆に大して疲れていないのに疲れた顔をしたりもしない。


だから総合演習では、各隊に私たち中央軍の兵士も配置されていた。


学生に、人間を動かす感覚を覚えさせるためだ。


その日。


青軍中央が動いた。


「来ます!」


白軍の学生指揮官が声を上げた。


正面。


青軍の精霊兵が前進する。


その先頭近くに、一人の学生がいた。


大きい。


まず、そう思った。


「青軍指揮官、前に出すぎじゃない?」


隣にいたエッダが言った。


「でも、部隊はついてきてるよ」


ニナが答える。


私は相手の動きを見た。


右を開ける。こちらの魔法攻撃を誘う。防御側の意識がそちらへ寄った瞬間、中央を押す。


「うまい」


「判断、速いね」


「声も通る」


ここまでは正常だった。


軍人としての観察。


何も問題はない。


青軍指揮官がさらに近づいてきた。


身体強化。


速い。


踏み込み、こちらの防御幕へ攻撃を入れる。


光が散った。


「強っ」


思わず声が出た。


エッダが頷く。


「身体強化、かなり乗ってる」


ニナは黙って見ている。


青軍の学生が叫ぶ。


泥を踏み、剣を振り、また指示を出す。


近づく。


顔が見える。


若い。


当然だ。


学生なのだから。


でも。


肌がきれい。


私は一瞬、自分が何を観察しているのか分からなくなった。


いや。


待て。


軍人として重要な情報かもしれない。


健康状態は重要だ。


顔色がいい。身体もできている。歯もきれい。


髪もある。


……髪?


私は横を見た。


エッダが見ている。


ものすごく見ている。


さらに横。


ニナも見ている。


三人の視線が交わった。


誰も何も言わなかった。


その時、私は初めて理解した。


今日の敵は。


青軍だけではない。


挿絵(By みてみん)


     *


演習終了後。


女性兵舎。


「ガイウス」


エッダが言った。


私は寝台から顔を上げる。


「何?」


「名前」


「誰の?」


エッダが私を見る。


そんなことも分からないのか、という顔だった。


「青軍中央」


「ああ」


知っていた。


もちろん知っていた。


でも、知らなかったふりをした。


これは牽制である。


「ガイウス・レオニス。統学院四年。軍務志望」


ニナが言った。


私とエッダが同時に振り向く。


「なんでそこまで知ってるの?」


「聞いた」


「誰に」


「派遣下士官」


「いつ!?」


「帰り」


速い。


この女。


演習では斥候だった。


本職でも斥候である。


情報収集能力が違う。


エッダが腕を組んだ。


「四年か」


「そうみたい」


「じゃあ卒業間近ね」


私は頷く。


統学院四年。


軍務志望。


総合軍事演習で前線指揮。


しかも、あれだけ暴れた。


中央軍へ進む可能性は高い。


士官候補としては、かなり有望なのではないだろうか。


強い。若い。健康。将来性あり。


私は頭の中に浮かんだ言葉を慌てて消した。


何を査定しているんだ、私は。


エッダが言った。


「まあ、年下は趣味じゃないけど」


「何歳差?」


「聞くな」


ニナがぽつりと言った。


「ガイくん」


私とエッダが同時に振り向いた。


「今なんて?」


「ガイくん」


「まだ一言も話してないでしょ!」


「呼ぶだけなら自由」


「自由じゃない!」


「何が?」


答えられなかった。


エッダが鼻で笑った。


「二人とも馬鹿ね」


「何よ」


「そもそも、もう会わないでしょ」


沈黙。


それだった。


演習は終わった。


私たちは中央軍へ戻る。


向こうは統学院。


卒業後に中央軍へ来るとしても、部隊はいくつあると思っているのか。


同じ駐屯地。


同じ部隊。


まして、同じ中隊。


そんなもの。


「……無理ね」


「うん」


「寝よっか」


「そうしよ」


その夜。


ガイウス・レオニスは、我々三名の人生から消えた。


はずだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。