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亡霊のアルゴリズム(冷徹なる処刑装置)  作者: 風風風


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第2章  資産接触プロトコル  【 第6話 】 沈黙の感染

「バカな……!

人間を排除した完璧なシステムのはずだ!

なぜ届く!?」


『亡霊』は激昂し、キーボードを叩きつけた。

だが、

画面の向こうから伸びてきた警察の「デジタル捜査網」は、

彼が

頼みにしていたAIの計算能力すらも飲み込みながら、

東南アジアの彼の潜伏先へとまっすぐに迫っていた。

スコールが止み、蒸し暑い湿気が満ちる熱帯都市の夜。


「警察だ! 動くな!」


突如として

プレハブ風高層一室の重厚なドアが爆破破砕され、

現地特殊部隊と日本の国際刑事課捜査官が

一斉に雪崩れ込んだ。


端末の電源を強制シャットダウンしようと

手を伸ばした『亡霊』だったが、

間一髪で屈強な捜査員に取り押さえられ、

冷たい床へ叩きつけられた。


「コードネーム『亡霊』……本名、

黒田将司くろだ まさし

電子計算機使用詐欺および組織犯罪処罰法違反の容疑で

逮捕状が出ている」


捜査官が告げる。


「な……なぜだ……!

俺は日本に一歩も足を踏み入れていない!

現地で人間も使っていない!

なぜこの場所が特定できた!?」


床に顔を押し付けられたまま、

黒田(亡霊)は狂ったように叫んだ。


「お前は人間を排除すれば完璧になれると思ったんだろう」

後方から歩み出た松永警部補が、

黒田の眼前で警察手帳を突きつけた。


「だがな、無人端末を使おうが、AIを使おうが、

お前が攻撃した『桐生忠雄』という老人は実在する人間だ。

人間を標的にする限り、そこには必ず生活の血が通う。

それを拾い上げ、泥臭く網を追うのが俺たち警察の仕事だ」


志村が特殊デバイスを端末に接続し、

サーバーの生データを押収していく。


「『Project ZEROHAND』の全データ並びに資産流出ルート、

すべて差し押さえました。

桐生氏の資産も、凍結手続きにより大部分が回収可能です」


黒田の顔から、完全に血の気が引いた。

自分が完璧だと信じて疑わなかった「無人の要塞」は、

人間の執念によって呆気なく瓦解したのだ。



数日後。関東近郊、K市の桐生宅。


「……そうですか。そんなことが、わしの知らんところで……」


縁側で松永と志村から説明を受けた桐生忠雄は、

お茶の入った湯呑みを手に、深く息を吐いた。


「怪しい電話も、怪しい訪問者もなかったのに……

知らん間に自分の人生が消されそうになっていたとはのう」


「ご安心ください、桐生さん。

信用金庫と連携し、

口座のセキュリティは最新の生体認証に更新されました。

流出しかけたご資産も、すべて戻ってきます」

志村が温かい声で伝えると、桐生は何度も頭を下げた。


「ありがとうございます。

便利になるのはええが、おっかない世の中になったもんだ……」


庭の木々を揺らす風が、静かに縁側を吹き抜けていく。

老人の平穏な日常は、間一髪のところで守られたのだ。



夕刻の警視庁前。


「松永さん、

黒田が構築していた『分散型無人換金プロトコル』の

解析が終わりました。

彼らが残した闇のプログラムはすべて無害化されましたよ」


志村が晴れやかな顔で缶コーヒーを差し出す。

松永はそれを受け取り、一口飲んだ。


「そうか。だが志村、相手が人間からAIに変わり、

どれだけ不可視になろうとも、

犯罪の根底にあるのは『他人の人生を掠め取る強欲』だ。

形が変われば、捜査の手法を変えるまでさ」


「はい。

案件屋も、AIを使う指示役も、僕たちが絶対に逃がしません」


見上げる空には、

夕闇とともに街の灯りがひとつ、またひとつと灯り始めていた。


スマート化が進み、便利さと隣り合わせで進化し続ける悪意。

しかし、それを見つめ、守り続ける捜査員たちの目がある限り、

闇の網がこの街を完全に覆い尽くすことはない。


片桐蓮が光へ歩み出し、桐生忠雄の平穏が守られたように。

人間とテクノロジーの狭間で繰り広げられる知恵比べの果てに、

警察の執念は、これからも不屈の盾となって立ち塞がり続けるのだ。


――【第二部:進化する影】完――


©2026 [風風風]. All rights reserved.

案件屋・神崎、

AI統括役『亡霊』こと黒田の逮捕を経て、

トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の

主たる情報網と自律型システムは壊滅したかに思われた。

だが、警視庁サイバー犯罪対策課のモニターの前に立つ

志村刑事の表情には、……。


明日も、19:20 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

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