↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡霊のアルゴリズム(冷徹なる処刑装置)  作者: 風風風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/54

第2章  資産接触プロトコル  【 第4話 】 無人化資金移動シナリオ

〈Phase 3:無人化資金移動シナリオ シミュレーション開始〉


システムが演算を始める中、

『蜘蛛』は椅子の背にもたれ、モニターの光を見つめた。

人間を一人も使わずに、

老人の人生の蓄えを消し去る計画が、いよいよ最終段階に近づいていた。

熱帯都市の高層ビル、その一室。

モニターに映る自らのコードネームを、

彼は静かに書き換えた。

〈蜘蛛〉から〈亡霊〉へ。

理由は単純だった。

「蜘蛛」という名は、

あくまで糸をめぐらし

反応を促す存在に過ぎない。

だが今、彼が構築しているのは、

日本全国に張り巡らせた見えない糸――

案件屋という無自覚な手足、

AIという神経系、

そして金融インフラという獲物の巣そのものを、

静かに支配するシステムだった。

触媒ではなく、網の中心にいる者。

それにふさわしい名前が必要だった。


「亡霊は自ら獲物を追わない。

網を張り、震動を読み、

獲物が力尽きるのを待つだけでいい」


亡霊はそう呟くと、

桐生忠雄の案件に関する

シミュレーション結果を呼び出した。

無人契約手続きシステムを利用した

資金移動シナリオは、

AIによる数千回の演算の末、

ひとつの最適解にたどり着いていた。


〈成功確率:94.2%

/人的介在必要度:最小(遠隔操作のみ)〉


これまでの犯罪モデルなら

必ず必要とされた「出し子」――現金を

物理的に引き出す末端の実行役――を、

AIは

巧妙に迂回するルートを見つけ出していた。

地方銀行の実証実験システムの穴を突き、

桐生の資産を一度、

名義の追跡が困難な複数の

電子マネー口座へと分散させる計画だった。



しかし亡霊には、

ひとつだけ気がかりな点があった。


AIが提示したシナリオの最終段階――

分散させた資金を、

最終的に自分たちの実利益として

回収する部分に、

依然として「わずかな人間の介在」が

残っていたのだ。


〈最終換金プロセス:電子マネー

残高の実物資産化には、

提携先店舗経由の物理的操作が必要

/リスクスコア:31〉


わずか31という低リスク評価であっても、

亡霊にとってそれは看過できない綻びだった。

網のどこか一箇所にでも人間の手が触れれば、

その一点から

警察の捜査が糸をたどってくる可能性がある。


「まだ完全じゃない」


亡霊は端末を操作し、

AIに新たな学習タスクを与えた。

日本各地で摘発されたトクリュウ事件の

判例データ、

警察の捜査手法に関する公開資料、

さらには

過去に摘発された「出し子」たちの

供述内容の断片までを、

片っ端から読み込ませていく。


目的はただひとつ。

最終換金プロセスに残る「人間の手」を、

完全に排除する方法を見つけ出すことだった。


AIは膨大なデータの中から、

ある共通点を浮かび上がらせた。

摘発された出し子たちは例外なく、

防犯カメラの映像か、

店舗スタッフの証言によって特定されていた。

ならば、

答えは単純だ――人間の姿を、

そもそも現場に存在させなければいい。



AIが導き出した解決策は、

亡霊の想像を超えるものだった。


近年、無人店舗や

セルフレジ型の電子マネーチャージ機が

全国的に普及していた。

深夜無人営業のコンビニ、

駅構内の無人両替機、

さらには一部地域で実証実験中の

「無人現金化キオスク」。

これらの機器の多くは、

防犯カメラこそ設置されているものの、

リアルタイムでの人間による監視は

行われていない。


AIが提案したのは、

こうした無人端末を遠隔から複数同時に、

かつ短時間で操作する

「分散型無人換金ルート」だった。

一台あたりの引き出し額を小さく抑え、

全国数十カ所の

無人端末に処理を分散させることで、

どの防犯カメラの映像にも

「特定できる人間」を映り込ませない。


「見事だ。人間をだますより、

人間そのものを消す方が確実らしい」


亡霊は満足げにモニターを見つめた。

桐生忠雄の資産は、

これから数日かけて、

誰の顔も映らないまま

静かに消えていくことになる。


だが同時に、システムは

ひとつの新たな出力を提示していた。


〈本シナリオの実行には、

無人端末群の遠隔制御を担う

専用インフラの構築が必要。

推定開発期間:3ヶ月〉


亡霊は椅子にもたれ、

モニターの光を見つめながら、

次の段階への準備を静かに始めた。

日本のどこかで、老人の知らぬ間に、

彼の人生の蓄えを飲み込む網が、

着実に編み上げられていた。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

2026年6月。警視庁サイバー犯罪対策課。

「松永さん、

全国の無人店舗やセルフレジ型チャージ機で、

不可解なエラーパケットが同時多発しています」

志村刑事がモニターに日本地図を映し出した。

東京、大阪、福岡――都市部の

駅構内や深夜の無人店舗に設置された端末が、……。


明日も、19:20 に、投稿します。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。