【第2部】「自律分散型スマート集落」 第4章:プロトタイプの根本的な再構築(3) 法改正と新たな盾
「俺たちがやらなきゃいけないのは、犯人を捕まえることだけじゃない」
松永は固い決意を込めて言った。
「流出した情報の『死滅』だ。
この残骸を拾って次の犯罪を企む第二、第三の神崎を、俺たちは絶対に生まれないように叩き潰し続ける」
「警察庁から正式に通達が出たぞ。
2025年から2026年にかけて推し進められてきた
『情報源・案件屋に対する集中取締期間』の成果と、今後の法整備についての追及方針だ」
警視庁サイバー犯罪対策課のミーティングルーム。
松永警部補の言葉に、志村刑事ら捜査員たちが一斉に真剣な表情を向けた。
ホワイトボードには、
神崎の摘発を皮切りに全国で展開された「案件屋」追放作戦の相関図が書き込まれている。
「神崎の件をきっかけに、
トクリュウの資金源であり生命線でもある
『個人情報の不法売買』に対する法的な規制と罰則が大幅に強化された」
松永は資料を掲げた。
「これまでは単なる不法な名簿屋や情報提供者として軽微な罪で済んでいた連中も、
強盗や詐欺の『共謀罪』『教唆罪』を厳格に適用し、
実刑を前提とした徹底的な摘発が行われる。
さらに、通信事業者やプラットフォーム側にも、
闇バイト関連のキーワードや暗号化アプリへ誘導するアカウントの自動凍結措置が義務化されつつある」
「制度とテクノロジーの両面で、
案件屋の『ビジネスモデル』そのものを破壊する仕組みができてきたわけですね」
志村が力強く頷く。
「ああ。これによって
『自分は情報を横流ししているだけだから捕まらない』
という言い訳は二度と通用しなくなった。
案件屋は、強盗犯と同等の重大犯罪者として追い詰められる」
松永は窓の外に目をやった。
眼下には、平和な日常を送る東京の街並みが広がっている。
「だが、どんなに法やシステムを強化しても、
最後に必要なのは『人の意識』だ。
バイト感覚で軽い気持ちで個人情報を差し出してしまう若者たち、
そして見知らぬ訪問者や電話に無警戒な高齢者たち。
この両方の意識を変えない限り、第二の案件屋は形を変えて現れる」
警察による徹底した摘発と法整備という「盾」。
そして、社会全体が闇バイトの裏にあるカラクリと「案件屋」の存在を知り、
対策を講じるという「光」。
両輪が噛み合い始めたことで、
SNSの影で日本中を脅かしていたトクリュウの強大な「情報網」は、
確かに崩壊への道をたどり始めていた。
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桜の蕾が膨らみ始めた2026年春の街角。
片桐蓮は、ボランティア団体が主催する「シニア向け防犯サロン」の会場で、
小さなパイプ椅子を並べていた。
裁判で言い渡されたのは、懲役二年・執行猶予四年の有罪判決。
実刑は免れたものの、大学を去り、
家族や社会へかけた迷惑の重さは今も彼の肩に重くのしかかっている。
それでも蓮は、……。
明日も、19:20 に、投稿します。
よろしくお願いいたします。




