表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡霊のアルゴリズム(冷徹なる処刑装置)  作者: 風風風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/35

【第2部】「自律分散型スマート集落」  第1章:初期プロトタイプが稼働(3)  資産家スコアシート

「おい、次のエリアのデータを早く上げろ」


テレグラムの画面に、リクルート窓口からの冷たい催促が届く。

片桐蓮は、世田谷区の別の住宅街を歩きながら、額の汗を拭った。手元のクリップボードには、数軒の住宅の「特徴」がびっしりと書き込まれている。


最初はただのアンケート調査だと思っていた。しかし、ここ数日、指示役からの要求はエスカレートしていた。

『電気メーターの回る速度を確認しろ』

『留守がちな時間帯を特定しろ』

『犬を飼っているか、防犯砂利が敷いてあるか調べろ』


(これ、本当に普通のマーケティングリサーチなのか……?)

蓮の脳裏に、かすかな疑念がよぎる。しかし、アプリの向こうの指示役は、蓮のそんな迷いを見透かしたように、追加の報酬をデジタル決済アプリ経由で即座に振り込んできた。

『丁寧な調査にはボーナスを出す。お前は優秀だ、L』


褒め言葉と金。その二つが、二十歳の大学生の倫理観を巧みに麻痺させていく。蓮は「深く考えるな、これはただのデータ入力だ」と自分に言い聞かせ、スマートフォンの送信ボタンを押し続けた。


――同じ頃。港区のタワーマンション。

「案件屋」の神崎は、蓮から送られてきたリアルタイムのデータを、自作の管理システムへと流し込んでいた。


画面上には、世田谷区、目黒区、杉並区といった都内の高級住宅街の地図が広がり、無数のピンが立っている。ピンをクリックすると、そこに住む高齢者の氏名、年齢、家族構成、さらには「推定保有現金」までが、まるでゲームのステータス画面のように詳細に表示された。


「いいね、この『L』ってガキ、いい目の付け方をしてる」

神崎は高級チェアに深く寄りかかり、ワイングラスを傾けた。


神崎が構築したシステム、それこそがトクリュウの強盗や特殊詐欺を成功させるための「スコアシート」だった。名簿業者から数万件単位で買い叩いた「高齢者名簿」を土台にし、蓮のような末端の実行役に「現地調査」をさせて最新の情報へとアップデートする。


「防犯カメラの死角あり。裏手の勝手口の鍵は旧式。これでスコアは『AAA』だ」


神崎の指先がキーボードを叩く。彼が作り上げた情報は、テレグラムの秘密チャットを通じて、海外のサーバーを経由し、フィリピンやカンボジアに潜伏する指示役たちへ「1案件・数百万円」の価格で売り渡されていく。


神崎にとって、画面の向こうにあるのは人間の命でも生活でもない。ただの、効率よく稼ぐための「商材」に過ぎなかった。


しかし、神崎が次の極上案件を海外へ送信したまさにその瞬間、彼のタワーマンションから数キロ離れた警視庁のサイバー犯罪対策課の一室では、別のモニターが不気味なパケットの異常を検知し始めていた。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
次の話が楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ