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亡霊のアルゴリズム(冷徹なる処刑装置)  作者: 風風風


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【第1部】亡霊の混迷:手探りの犯罪インフラ(2024-2026)  第3章:亡霊の思考 (4) 海の向こうの司令塔

新宿で逮捕された「案件屋」の藤堂から押収したパソコンには、暗号化された膨大なチャットログが残されていた。サイバー班の徹夜の解析により、藤堂と指示役「黒金」との間で交わされた、報酬の支払いに関する決定的なデータが浮き彫りになる。


「松永さん、出ました!」

志村刑事が画面を指さした。

「藤堂への報酬、暗号資産で支払われていますが、その送金元のIPアドレス……日本国内じゃありません。東南アジア、カンボジアのシアヌークビルにある複合リゾートビルです」


「やはり海外潜伏か」

松永は深く椅子に背をもたれ、煙草を吸う代わりにペンを指先で回した。


トクリュウの最大の特徴であり、警察を最も悩ませてきたのが、この「国際分業」だ。実行役や案件屋といった手足を日本国内に置きながら、頭脳である指示役は、現地の警察の取り締まりが及びにくい海外の治安無法地帯に拠点を置く。彼らは現地のビルを一棟いっとう丸ごと買い取り、武装した警備員を雇って「詐欺村」と呼ばれる要塞を築き上げていた。


「これまでの警察なら、ここで手詰まりだった。だがな、志村。時代は2026年だ」

松永の目に、獰猛な光が宿る。


近年、日本の警察庁は国際刑事警察機構(ICPO)や東南アジア各国の治安当局との連携を劇的に強化していた。相次ぐトクリュウの凶悪事件に対し、日本政府は相手国へ強力な外交圧力をかけ、「現地拠点の一斉摘発」に向けた合同タスクフォースを極秘裏に結成していたのだ。


同じ頃。熱帯の熱気に包まれたカンボジア、シアヌークビルの高層ビルの一室。

冷房がガンガンに効いた部屋で、何十台ものスマートフォンとモニターに囲まれ、足を組んで指示を出している若い男がいた。彼こそが、拓海や亮太を地獄へ突き落とした指示役「黒金」の正体であり、組織の幹部・石川(いしかわ・28)だった。


「チッ、日本の案件屋のラインが一つ死んだか……。まぁいい、代わりはいくらでもある。リクルーターに言って、新しい『ホワイト案件』の広告をSNSにバラまかせろ」


石川は缶ビールを飲み干し、画面の向こうの「日本の使い捨ての駒たち」を見つめて冷笑した。日本警察の手が、海の向こうの自分に届くはずがない。その絶対的な油断が、彼の命取りだった。


ビルの外、灼熱の太陽が照りつける路上に、数台の大型バンが音もなく滑り込んできた。

車内から降りてきたのは、自動小銃を構えた現地の国家警察の特殊部隊。そして、その先頭に立つのは、日本の警察庁から派遣された国際捜査専従班の捜査員たちだった。


「ターゲットは8階のオフィスだ。通信機器の全破壊が予測される、電撃的に突入しろ!」


現地語の号令とともに、武装した特殊部隊がビルへと突入していく。

日本の若者たちの人生を画面一つで弄んできた「国際トクリュウ」の本拠地が、ついに物理的に破壊されるカウントダウンが始まった。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

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