50. 突然婚に速攻慣れ
白の光が電気のように音を鳴らす。頭痛がする。また誰かと繋がった証拠だ。一体、誰なのだろう。いつも変な夢を見せる者。
「何だか辛い夢だった……。死に場所とか、対珠がどうとか……というか、何で女だけ殺すのかな?」
容が首を傾げていると、横から衣擦れの音がした。
「大丈夫か?」
同じ布団の横で寝ていた天贖を起こしてしまったらしい。
「起こしてしまいましたか? すみません」
「いい。俺も夢見が悪かった」
あまり疲れた様子を見せたがらない天贖だが、今日だけは隠す気力もないようだ。
式から1週間経った。容は天贖と一緒に目覚めを迎えるのが日常となった。それと同時に悪夢を見ることも増えていったように思う。
「なんか、最近お互いそうですよね」
「まあ、幸せは人を不安にもさせるからな。その不安が夢に表れているのかもしれないな」
天贖が「幸せ」と言ってくれて、容は嬉しさのあまり彼に抱きつきたくなった。それを何とか止めて、思わず零れそうな笑みを、唇をきゅっと締めて耐えた。
これほどに幸せなら、それを失いたくないと不安になるのも、わかる気がした。
その不安の元である男は、今は微笑んでいる。
目の前の天贖の身体を見ていると、どうにも身体が熱くなり、昨日のことを思い出してしまう。
最初のうち、天贖は容に段々慣れていけばいいと言って、手加減していた。しかし、容がすぐに慣れてきたので、今ではもう彼も我慢していないようだ。それも容は難なく受け入れられるようになった。気持ち良いのは言うまでもない。
「突然婚に、速攻慣れ。私ってもう、本当、信じられない」
「どうした、容。何が速攻だ」
天贖が身体を起こすと、夏掛けが剥がれて、裸身全体が見えそうになった。
「わああ!」
恥ずかしさで顔を手で隠しても、指の隙間から見えてしまう。
引き締まった彫刻のような胸筋と腹筋、そこから流れる腰へのラインも綺麗で、頭の中が熱で爆ぜそうだ。色気の暴力だ。
対する自分も寝衣が乱れまくっている。身体が緊張で強張る。明るい中で互いの身体をまじまじと見ることは今までなかった。
天贖の方も容の身体を見て、切羽詰まったような顔をした。
「容……」
そのまま抱きしめられて、降ってくる唇に応えた。容の背中を天贖は愛おしむようにゆっくりと撫でた。
天贖が容に触れる手つきはいつも優しい。情熱だけではなく慈しまれているということを、嬉しさと共に実感していた。
そこでふと、我に返る。
「ややや、止めてください! こんな朝っぱらから!」
枕を天贖の頭に何度も叩きつけると、彼は笑って手を止めた。
「悪かった。しかし、少し撫でただけでえらい慌てようだな。昨日のことが忘れられないか?」
からかうように言った天贖は、容が赤い顔で黙って頷くのを見て、息を止めた。
「――本当に、悪かった」
天贖は口元を抑えて照れているようだった。




