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異界のアイオライト  作者: アンディオス
七章 断ち切れない赤い影
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第七十九幕 鍛造するは心

文章ボリュームの差で風邪をひくんじゃぁ

「で、お掃除をして帰って来たと?」


「ああ、その認識で間違いない」


 鉄を打つ快音が響き、暑苦しいほどの熱気が籠った工房で男が二人、話をしている。

 部屋には煤と火の粉が舞う。壁には埋め尽くすほどの武器や防具が飾られており、飛び交う煤で所々が汚れてしまっている。普通なら気にするだろう、だがここの主は「その汚れこそが美しいだろう」とでも言ってのけるだろう。目の前にいる、この場所の主なら。


「にしても君はいつ見ても面白いな! 長い間来てくれなかった友人からの土産話としては満足だ! 寂しい時を過ごしたが水に流そう!」


 作業着のまま、額に滲んだ汗を拭おうともせず話を聞いている。

 太腿を叩いて笑ったりと、いちいち行動は五月蠅いがそれこそ彼だと自分は言うだろう。


「ありがたい。ただ俺も多忙だったんだ、勘弁してやってくれ」


 自分の胸に手をやり、謝る。それは他ならないマサミチ(自分)からの謝罪だ。


「いやいや、気にしていない! 水に流すと言っただろう!」


 煤の付いた顔を破顔させ、屈託のない笑みを浮かべる。

 アルドルフ・グラドーワ、彼は久しく会う友人との会話に花を咲かせているようだ。


「で! 私の所に来た理由はなんだい? 友人として久しぶりに会いに来てくれた、と言うストーリーなら感動に涙を流して抱擁を交わしただろうが、違うだろう?」


「まぁ、そうだな。ってかもしその要件で来てたと思うとゾッとするね。汗かいたおっさんと抱き合うなんざ鳥肌物だろ」


 肩を抱き、寒気を抑えて腕を擦るふりをする。

 それにアルドルフはニコニコと笑いながら話をする。


「そう悲しい事を言わないでくれたまえ! いくら”皇帝”と言えど傷つく心は持ち合わせているんだ!」


「あーそうかい。そりゃ悪かったねっと」


 傷つくと言ったものの愉快そうなアルドルフは、平謝りをする琥珀に、アルドルフは一拍おいて話を続ける。目は真剣そのものだ。


「話は脱線したね! さあ! 本題に入ろうか!」


「そだな。まぁ、単純に武器の製作依頼ってとこだな」


「ほう! 武器とな? 武器種はおいおい話すとして………理由を聞かせてもらおうか!」


 ”理由”、それはアルドルフにとって大切なものだ。

 基本的に自分が造る以外で武器は造らない。造るのは家具や便利な魔道具が大半を占めている。

 その理由はアルドルフの心中にある。

 ”命を奪う”武器を造る、それは人殺しを手助けした共犯者になることに他ならない。


 かつて何も考えず格好良く、強い武具だけを造っていたアルドルフにその考えを与えてくれたのは唯一の家族であるオーラナ・グラドーワだ。

 アルドルフの妹として生を受けた彼女は、兄の造った武具で職人としての命(手)を奪った。


 その出来事が、アルドルフの心に深い傷を付け、今まで生きて行く上での戒めとして今も残っている。

 だからこそ明確な”理由”が欲しいのだ。いくら友人とは言え、”理由”によっては製作を断る。

 それが”皇帝”アルドルフ・グラドーワとしての絶対だ。


「俺は──」


 アルドルフは生産職としての誇りを持っている。客が望むのなら何でも造るのが誇り。

 その誇りを全うできるか。


 ──さあ、君はどっちだ?

 心の中でそう問うた。


 琥珀は、語る様に口を開いた。


「俺は、自分(マサミチ)を死なせたくない。腐れ縁だが、大切な仲間から任された命なんだ。俺はずっと中から見ていたからコイツに合う武器がわかる。それを、持たせてやりたい」


「──ふむ」


「俺が狙われてるんだ。今、本来のマサミチは眠っているみたいなものだ。精神的に弱り、その代わりとして俺が一時的に身体を借り受けているに過ぎない。自分の身は自分で守らなくちゃいけないんだ。そのための手段として、俺はお前に依頼したいんだ」


 言い終わると、沈黙が流れる。アルドルフは顎に手を当て、真剣な表情を崩さない。琥珀はそのアルドルフを見つめ続け、答えを待っている。

 その間にも鉄を打つ音は響き続けている。


 カンカンカンカン──カン…………カン………。


「ちょっと、アタシの居ないとこでやってよね! 気が散るし、雰囲気悪い!」


 鉄を打つ音が止まり、沈黙が強制的に破られる。

 男二人、声のした方に首を向けると、煤で汚れた赤毛の少女が一人、不満を目で訴えている。


「おぉ愛しの妹! せっかく格好良い雰囲気だったというのに水を注すとは!」


「さっさと結論を言えばいいのに! にいちゃんは勿体ぶり癖があるんだから!」


 腰に手を当て、今度は全身で不満を表す。勿体ぶり癖とはいったいなんだろうかと琥珀は目をパチクリさせる。

 その事が目に入っていない少女、オーラナは指を立てとある言葉を詠唱する。


「「鉄は熱いうちに打て」」


 その言葉にアルドルフは寸分違わず声を合わせる。


「わかっているとも妹よ! その金言はいつでも心の内にある!」


 勿論わかっているぞと胸を張り、堂々とそう言い放ったアルドルフにオーラナは──


「ふぬ!」


「だっ!??!」


 手に持ったままのまだ熱い金槌で兄の頭をゴスンと殴った。

 その威力は抗議の目を向けることを許さず、ただ痛みに堪え頭を抑えることしか許さない。

 そんな状態の兄を気にも留めていないオーラナは頭を抑え苦しんでいる兄を横目に琥珀の方を向く。


「すいませんです。にいちゃ──兄はその依頼、謹んで受けます。兄には兄の理由はありますがきっと造ってくれますよ」


「あ、あぁ──」


「兄と話しているとすぐに話しが脱線するのでオーダーは私が受けます」


 淡々と、事務的に仕事をこなすオーラナ。

 その姿に兄であるアルドルフは──


「ひ、酷いではないか。妹よ………」


 と、涙目で呻くことしかできなかった。

オーラナは赤黒いぼさぼさ髪に黒マスクのポニテっ子(一応後ろで髪をまとめてるって感じ)です。描写する時間がないんじゃあ。

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