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異界のアイオライト  作者: アンディオス
六章 一枚のページを捲るために
71/73

第六十八幕 選択

長くなってしまった……もっとコンパクトにできたらよかったのに(悔やみ)

 前に来た時とは雰囲気が違う。

 サンガツに蹴り飛ばされて入った扉に手を掛けた時、言い表せない違和感を感じた。

 本能的で、潜在的で、理屈も理由もない、そんな違和感。


 一度気になってしまうと調べたくなってしまうのが人のさがなのだろう。

 ドアノブ越しに魔力を這わせると微細な隙間が部屋を隔離する様に覆われている魔力のズレを見つけた。

 明確に感じた違和感に口が勝手に動いてしまう。


「ここ、二重になってる?」


 質問をした訳ではない、自分に問うた訳でもない。

 その真意を理解していないベィリィーンは僕の疑問に答える。


「やっぱり、お兄ちゃんは気づくんだね。でも、入り方はわからないでしょ?()()の自信作だからね」


 私達、と言う言葉に引っ掛かりはしたもののそれについて質問することは無かった。

 その答えがこの扉の先にあると()が知っているから。


 ノブに手を掛けていたマサミチの手にベィリィーンの手が重ねられる。

 ベィリィーンの濁った水のように重い魔力に呼応するように扉の端から光が漏れる。

 その光には今まで感じた事のない独特の雰囲気を纏っていた。


「お兄ちゃん、私の言葉に続いて」


 ベィリィーンの放った言葉は説明としては不十分だった。

 だが、マサミチには十分だった。


「「〝血は、原初によりて道を記す。覇道を歩まずとも足跡に意味は有り。英雄が遺したその命、今世を変える(えにし)と成る〟」」


 声は一つ、魔力は二つ。

 寸分狂い無く詠唱された詩は、一つの言の葉にて締めくくられる。


「「祖、無死の英傑の記憶(ディア・メモリー)」」


 重い扉が、運命の扉が今、開かれた。




「やぁ、先程はすまなかったね。いきなり部下をけしかけるようなまねをして」

「いえ、大丈夫です。きっと、必要な事だったんでしょ?」

「そう言ってくれるとありがたいね」


 部屋の中に()()、純白の部屋で会合する。

 目の前にいるワルプルギスが指を鳴らすと、僕の後ろに椅子が現われる。


「是非、座ってくれ。話をするのに立ったままだと疲れるだろう」

「ありがとうございます」


 言われるがまま椅子に腰かける。

 そして、左右を見る。

 ベィリィーン、特徴的とも言えた彼女の髪は全てを浄化してしまいそうな白に染まっている。

 そしてもう片方、ワルプルギスの後ろにいた青髪の──


「貴方からしたら初めまして。私はバリオス」

「えっと……よろしく?」


 バリオス、家名のみを名乗った青髪の彼女は目を合わせようとしない。

 疑ってるわけではないが、彼女の名前は違う気がする。


()、その名は彼には意味ないでしょう」


 ワルプルギスが目を瞑ってそう言った。

 先程から違和感がある。

 彼女達はお互いを呼ぶときに名前ではなく〝私〟と言っている。

 家族、と言う訳ではないのだろう。


「……そうね、私はバリオス・ヴァン・パーヤ。貴方とはいろいろと話すことがありそうだわ」

「うん、わかったよ」


 奇妙な対談が、今始まる。




 まずは僕が聞くターンだ。


「君たちがなんで〝純人族〟って呼ばれてるか知ってる?」


 聞くターンだと思ったら質問されたんだが……。

 それに聞いたことのある言葉だ。

 前にこの質問をしてきたアキラからの情報も踏まえて話した方がいいだろう。

 と言ってもアキラとの話は僕らが純人という総称として呼ばれているとしか聞いてないから意味はあんまりないか。


「正直、あんまりわかってないです」


「素直だね。嫌いじゃないわそういう所」


 なぜか意外と好感触みたいだ。

 あまり変化があるようには見えないが僅かにヴァンの口角が上がってるように見える。

 まぁ今まで純人族という言葉についてとやかく考えたことは無かったが、よくよく考えてみればおかしい単語だ。種族の呼称でしか使われないはずの()という単語が使われている。まるで、別の種族がいるみたいな……。


「なにかいろいろと考えてるみたいね。貴方の考えてること、多分だけど当たってるわよ」


「何を考えてるのかわかるんですか?」


 何を考えているのか気取られる……なんて言葉を使うのは攻撃的過ぎるけど、僕の考えてることがわかるような事はしたつもりはないんだけどな。

 そういう能力なのかな?


「あっ、あー。警戒しないで、予測の範疇よ、私の能力は思考を読む系ではないわ。もちろん他の二人もよ」


「いやっ、別の警戒してたわけでは……」


 色々と考えてただけなんだけどなぁ。


「そう?ならいいわ。さっさと本題に入りましょう。

 大前提として、この世界にいる人間は二種類いるわ。

 〝純人族〟と〝亜人族〟。

 もともとこの世界にいた連中が〝亜人族〟で、この世界にやって来た方が〝純人族〟よ」


「亜人……、亜人……?」


 どういうことだ?

 この世界にもともといたっていう条件ならアルベリやソラも当てはまるはずだ。

 でも、そんな感じは全くしなかった。

 普通の人間にしか見えないし……。


「亜人って単語にピンと来てないっぽいわね。ならわかりやすく物語も含めて教えてあげるわ。」



「君はさ、〝百年戦争〟って知ってる?」


 さっきとは違い、今度はワルプルギスが説明し始めた。

 役割分担でもしてるのだろうか。


「百年戦争……ですか」


 ジャンヌ・ダルクが活躍したあの百年戦争の事だろうか?

 いや、こっちの世界の人が元の世界の事件なんか知らないか。


「〝百年戦争〟は、今私たちがいるユグレシア王国が出来る前、なんの国もなかった戦乱の時代に起こった、国を創るための戦争だよ」


「国ができる前……ですか」


 あれ、そういえばユグレシア王国以外に国を知らないような。

 百年戦争?になにか関係があるんだろうか。


「ああ、最初、この世界は荒くれ者たちが物資を奪い合うだけの無法地帯だった。

だが、やがて力を持った何人かが自分の縄張りに仲間を集め、都合のいい〝国〟を作ろうと動き始めた。そうした集まりは無数にあったが、最終的に三つだけが残った」


「それが、〝万物京ばんぶつきょう〟、〝世界樹せかいじゅ〟、〝狂瀾花きょうらんか〟の三勢力――いわゆる三つ巴だ。

 ある時、〝万物京〟が〝狂瀾花〟と和平を結び、長く続いた百年戦争はついに佳境を迎える」


「牽制し合うことで保たれていた均衡が崩れ、〝世界樹〟は二勢力を同時に相手にしなければならなくなった。

 戦力も物資も単純に二倍必要になる一方、敵側は余裕をもって圧をかけてくる。

 それでも〝世界樹〟の者たちは節約と無理を重ね、なんとか前線を支え続けていた」


「そんな中、〝万物京〟が本領を発揮する。

 その首領、セントル・ミラカーレの能力は万物支配。名の通り、あらゆる物質を生成・操作できる。

 圧倒的な魔力量と魔力技術によって、その消費はゼロに近い。

 彼が戦場に姿を見せてから、戦況は一気に悪化した」


「苦境に追い込まれた〝世界樹〟だが、そこに救世主が現れる。

 私たちの育ての親であり――多分だけど、君の実の親でもある ユイガ・トウヤ だ」


「……やっぱり、父さんはこの世界に来てたんですね」


 それに私達……つまりはヴァン、ベィリィーン、ワルプルギス達は父さんに育てられたって事か。

 血のつながってない姉弟的な……?な訳ないか。

 にしても亜人という単語となんにも関連性を見出せないんだけど。


「話を続けよう。

 トウヤが来てから情勢は変わり始めた。

 同じ集落の仲間でも、劣勢が続けば心は荒み、雰囲気も最悪になり、仲違いも起きる。

 連戦続きで主力が疲弊していたため、その内輪揉めさえ処理できずにいた。

 そこへ現れたトウヤは、人との関わり方を熟知していたとしか言いようがないほどの好人物で、皆が自然と彼に惹かれていった。

 最初は戦力にならなかったが、周囲から教わるうちに兵士一人分の働きができるほど成長する。

 そして、その成長をきっかけに状況が大きく動いた」


「トウヤは一人前になってから、後進の育成を始めた。

 十五歳の少年に教えられるのを嫌がる者もいたが、最終的には皆が彼の教えを受け入れた。

 そうして今の貴族家系が頭角を現す。

 潜在能力だけ高く、扱いきれなかった連中が、ようやく力の使い方を理解し始めた。

 作戦を練る余裕も生まれ、そのおかげで主力も温存できるようになった。


 最終的に、トウヤ考案のヒットアンドラン、プロパガンダ、そしてゲリラ戦などを駆使し、敵を疲弊させ内部分裂まで誘発したうえで、総力戦に勝利した。

 こうして ユグレシア王国 が誕生した。」


 ……歴史好きとしては興味深かったし、父さんがえげつない活躍をしてたことを差し置いても言いたい事がある。

 結論は!? と。

 そう質問をしようと口を開こうと思ったが、まだあるらしい。

 先走らなくてよかった。


「しかし、相手は倍の戦力。決して容易な戦いではなかった。

 主力である〝神獣〟ヘル・サビア と、〝戦竜ヴァルドラゴ〟グリンド・ラーフィット が、〝狂瀾花〟の フィニス・ムンディ の呪いを受けてしまった。

 完全に呪いに侵されたのはヘル・サビアだけだったが、その効果で敵味方の区別がつかなくなった。

 彼を止めるため、グリンド・ラーフィットは能力を封じられた状態で仲間を庇いながら戦い、戦場には大きな被害が出た。

 だがそこで、今の時代にも名が残る初代国王、〝世界樹〟の長ミグレド・リーフ・ユグドラシルが奇跡を起こした。

 だがその時、初代国王 ミグレド・リーフ・ユグドラシル が奇跡を起こした。

 近くにいたトウヤの血を扱い、傷ついた全生命に与えたのだ。


 その結果、純人族であるトウヤの血が混ざり、全生命が亜人へと変化した。

 ――こうして “亜人族” と “純人族” という分類が生まれた、というわけだ」


「なるほど。……待ってください、人に人の血を輸血したって亜人にはならないんじゃないですか?」


 そういう事なら僕も亜人でしょ、テレイズの所で治療してもらった時に輸血してもらったし。


「あぁ、言ってなかったね。昔は人間なんていなくて、いろんな生物がいたんだ」


「いろんな、ですか」


「そうだ。例えば悪魔とか精霊とか、私たちみたいな純血の吸血鬼も昔は沢山いた」


「純血ってことは亜人にならなかったって事ですか?」


「いや、私、というか最初の私であるヴァンは戦ってないんだ。傷を負ってない奴らにトウヤの血は入らないからな。当時まだ七十半ばくらいだったからトウヤが戦いの場に連れて行ってくれなかったんだ。

 私以外の純血は臆病者のバスカーの所の犬畜生共くらいだな」


 最初の私?七十半ば?

 推測するに分裂してるのかな、いやそんなことよりも……。


「ヴァンさん、いったい幾つなんですか……」


「おいおい、そういうのは女性に聞いちゃいけないってトウヤに習わなかったのか」


「す、すいません」


 確かにそうか、失礼だったな。

 でも意外だ。

 見た目で言えば一番若く見えるのはベィリィーンだけど、ベィリィーンとヴァンはそんなに年が離れているようにも見えない。

 長命種の特徴なのかな?

 にしてはワルプルギスは大人びて見えるけど。


「ああ、そういえば話が逸れたな。

 亜人と純人の違いはもう分かっただろう?」


「まぁ、はい」


「なんでいきなりそんな話をしたかって言うと実は今、君は純人ではなくなってる。

 限りなく純人に近い亜人だ」


 覚えがない……訳でもない。

 サンガツにに心臓を刺された後、消えた意識の中で何かが身体に入って、満たされた感覚があった。

 察するに純血のベィリィーンの血の力で治療をしてくれたが、代わりに亜人になったって事だろう。


「眷属みたいな感じですかね」


「ん、捉えようによってはそうだが、あまりのそのような言い方は好ましくないな」


 何か気に障ったみたいだ。

 けど、吸血鬼の配下の呼び名って(あだ)とか徒弟(とてい)とかしかないんじゃ……。

 いや、そういう話でもなさそうだけど。


「私たちは家族、血縁者であって眷属じゃないさ。上下関係など要らない。

 故に私たちは〝家族(ファミリー)〟だ」


「そういう事だったんですね。さっきの発言、撤回します」


「いや、これから気を付けてくれるのなら何も言わないさ。

 と、また話が逸れたな。本題に入ろう」


 長時間の話で少しだけ崩れた姿勢を正し、改まって座りなおす。


「君は、私たちの〝家族(ファミリー)〟に入るつもりはないか?」


「と、言うと」


「〝家族ファミリー〟の者たちには、皆同じく私たちの血──不死の血が分け与えられている。

 本来これは、〝家族ファミリー〟として迎え入れる際の〝絆の証〟として授けるものだ。

 しかし、君はその手順を踏まずに血を得てしまった。もし望まないのであれば、その血を浄化し、元の純粋な人間へ戻すこともできる」


「さぁ、君はどうする?」


 恩恵をあるから入るか?でも無く、血を与えたから入れって訳でもない。

 あくまで僕自身に選択を委ねてくれている。

 きちんと言われている訳ではないが不死がメリットの様にはあまり思えない。

 勝手な主観だけど、不死と不老はセットな気がする。

 ま、でも、最初から答えは決まっている。


「永遠の命なんていりません。僕は最初から最後まで、人として生き、人として死にたい。

 そして、その過程を友と、ソラと歩んで行きたい。だから血の浄化を頼んでもいいでしょうか」


「……トウヤと同じような事を言うんだな。流石親子と言ったところか。

 にしても、〝家族ファミリー〟の方は断らないのか?」


「まぁ、ソラが駄目と言ったらやりませんが僕としては家族(貴女たち)と仕事がしたいかなとも思うから。それに、やっぱり生きて行くにはお金はいりますからね」


「っふ、いろいろ考えているのだな。

 君が〝家族ファミリー〟に入ると言うのなら家族(私たち)はもちろん、全員歓迎するさ」


 そう言って差し出された手を取り、握手を交わす。


「あ、因みにだが血の浄化には三か月はかかるからな」


「うぇ!?」


「それと、許可証に関してはすぐに用意できるが、〝試練〟を始められては治療ができないのでな、三か月後、君が完治した時に渡すよ」


「試練って……ってか許可証の事なんで知って……」


「ははっ、知ってるさ。

 私たちはバリオス財閥だからね。

 それと、その三か月の間、仕事を手伝ってもらうよ、家族との交流も含めてね」


「……それは、いいんですが」


 もう暇になる事はなさそうだ。

 でもこれも、父さんの事を知るためだ。

 頑張ろう……。

 ん?父さんの事もう分かったくないか?

 まぁ、いいか──

長かったから簡潔に説明!

無法地帯が三つの勢力に分かれた! 二対一の構図になった! 主人公のお父さんが来てからなんか良くなった! たくさん怪我人出しつつも勝った! 治療の時一番近くにいた主人公のお父さんの血がみんなの身体に入った! みんな亜人になっちゃった! って感じです。

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