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異界のアイオライト  作者: アンディオス
六章 一枚のページを捲るために
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第六十四幕 面白そうなもん、発見~♡

「あ”~っ疲れた」


 退院直後の早朝、大柄な男もといアルベリ・ラーフィットはあくびを噛み殺し朝日の眩しさに目を細める

 上空を見れば天を覆いつくすほどの巨木の枝が所々の日差しを遮っている

 不規則に生えそろった枝が地面を奇妙な模様に照らす


「な”~グレイ、なんかおもろいことないか?」


 アルベリの後ろに付き従うような立ち位置にいる女性

 長く綺麗な銀髪を風に靡かせる容姿端麗で〝いかにも〟なメイドは主からの問いに応える


「特段何も御座いません。それよりもアルベリ様、休息を取らなくても良いのですか?」

「あっあ”~、まぁな。姉貴の治療がやっとこさ終わったんだ、身に覚えのねぇ入院のせいで身体がなまりまくってんだ、身体を少しでも動かしとかなきゃだろ?」


 アルベリは思いっきり伸びをして体をほぐしながら歩き続ける

 どこへ行きたいわけでもない

 ただただ暇を潰せる何かがないかと街を散策しているだけに過ぎない

 丁度今、上層と中層を隔てる門を潜り抜けた所だ

 現在通った門は円形に広がるこの国にある門のうち、正門の同一直線状にある〝第一の門〟

 その門は中層の中でも一際にぎわっている場所、中央商業区に繋がっている


「……ん~?」


 門から中央商業区に足を踏み入れた瞬間、何かを感じ取ったアルベリは鼻から匂いを嗅ぐように息を吸い込む


「どうかなさいましたか、アルベリ様」

「いんや?ただちょっっっと気になる匂いがしただけだ」

「匂い、ですか?」


 グレイの問いかけに頷きつつ、アルベリは鼻を抑える


「ああ、血の匂いがするんだ。少々遠いが間違いないと思う……が、どうだかな」

「なにがですが?」


 歩みが明確に目標を定め、町はずれの方角に歩き始めたアルベリに付き添いながらグレイは問いかける

 単純に言葉足らずな所もあるが、アルベリが今感じている違和感は確定している物ではない

 手探り状態で当てになるかもわからない勘を頼りに歩いて行っているだけ

 記憶凍結処理を受けていないグレイは、凍らせて封じ込めた内面にある傷がどんな拍子に解放されるか気が気でない

 主君の意向に異を唱える訳ではないが無茶をしてほしい訳ではない

 だからこそ〝危険がないか〟の確証が欲しいのだ


「人が死んでるって感じがしなくもないんだが……わっかんねぇ。行ってみりゃわかる」

「……」


 迷いなき足取りでグレイの一足先にアルベリは路地に入り込む

 路地からすぐに曲がり角があるとか落とし穴があるとかそういう事を心配している訳ではないが、万が一に備え、グレイもすぐに路地に入り込む


「ッ……申し訳ございません」

「……」


 路地に入ってすぐのところで立ち止まっていたアルベリの背中に顔が当たってしまい一歩後ろに引く

 普段ならばグレイの心配やフォローを入れるアルベリだが何かを凝視し一切動かない

 狭い路地、平均的な成人男性ならば横に二人ほど詰めればぎゅうぎゅうになってしまうほどに狭い

 そこに平均など軽く越しているアルベリが立てばほぼほぼ隙間はない

 グレイは僅かにある小さな隙間から奥を見る


 そこには激しい戦いの痕跡と、溶けかけの雪に埋もれた大量の人間の山が見えた

 達人級の腕前を持った人物でもいたのだろうかと思ってしまうほど綺麗な断面を魅せる穴の開いた壁

 それらの奥に足を頑強な根で固定された老人が死んだように佇んでいた


「……」


 何も言わないままアルベリは老人の元へ歩く

 そっと首元に手を添え、脈を確認している


「生きてんな。起きろ、ジジイ」


 顔を伏せている老人の頬をひっぱたく


 このジジイこの状況でよく寝れるな

 鼻提灯まで出してぐっすりか


「はぁ~。グレイ、奥の雪からはえてる奴ら頼めるか?」

「了解しました」


 にしてもこの根から感じる魔力……まぁこのジジイ起こしゃあ色々聞けるだろう

 事情を聴くまでは殺さないでやるよ


「ほっ」


 ジジイの足につき差会っている部分の根はどうしようもねぇが繋ぎとめてる部分は簡単に壊せる

 俺の破壊はこういう拘束系にはめっぽう強いからな


 ガシャンというおおよそ植物が立てていい音とは程遠い音を立てて根が崩れ落ちる

 足を固定した根がなくなった事で老人の身体の支えがなくなり倒れそうになる


「おっと、迂闊迂闊……寝て居ったか」


 地面に触れそうになったその瞬間に身体がブレ、いつの間にか傷付いた二本の足で立っていた


「おいジジイ──」

「おお! 主が儂を助けてくれたか、いやはや助かった。この礼は必ず!」

「ちょいちょい待て待てジジイ」

「いや待てぬ、恩は忘れぬように──」


 老人はアルベリの手を取ってブンブンと上下に揺らす

 その興奮を覚まさせるために数分かかった




 色々理解できた

 このジジイ、サンガツは俺の知ってる英雄〝月割〟のサンガツだろう

 だがコイツは百五十年ほど前の時代の英雄のはずだ

 ……これはバリオスんとこの血の影響かな

 にしてもコイツの話はちょっとおかしいな

『家出した孫を捜索していると使用人が攻撃され、孫が見知らぬ二人に誘拐されそうになったと感じ交戦し、敗れた』

 どこまでがホントか判別はつかんが実態はわかった

 殺そうとしていたっていう意思は見えなかったしな

 ここに残っている魔力、というよりかはサンガツを固定していた根から感じた魔力でおおよその事はわかる

 コイツはソラとマサミチと戦ったって事だ

 そこいらに流れてる血には能力使用の影響でただの血になっている

 英雄サンガツには能力はない

 ってことはここについてる血の大半はマサミチかソラの血だろうな


 死んでるかもしれねぇな

 致死量なんざ知らねぇがこれだけの血を流せば死ぬ可能性は十二分にある、が……


「仇討ちってのは性に合わん、それにサンガツよぉ、お前は怪我人だろ?

 それによぉ、俺の感が正しかったらバリオスの恩恵を受けてんだろ?あそこに恩を売る機会があるんだったら願ったりかなったりだ」

「ほぉ……なかなかの観察眼じゃのう。儂は今バリオスの家族(ファミリー)の一員じゃ」

「だろうな」


 あそこのは死にぞこないの集まりだってのは有名な話だしな

 百数年程度昔のやつくらい入るだろうな


「おい! グレイ、そっちは終わったか!?」

「はい。全員救出しました。幸い命に別状はなさそうです」

「おーっし! ジジイ、案内しろや、おぶってやっからよ」

(かたじけな)い」


 別に用事はねぇがちょーっとマサミチ達の安否が気になるからな

 とっととこいつらをバリオスん所に投げて探しに行きたいしな


「おーっし、飛ばすぜ。しっかり捕まってな!」


 いくぜぇ!




 時間が進み夕暮れ時

 大きな広場のベンチにドカッと座る大男はその横で座ることなく立ち続けているメイドに話しかける


「はぁ~、収穫無しか……心配だな。なぁグレイ?」

「そう、ですね。ですが明日は用事が出来てしまいましたし、それに連絡する手段のないこの状況で探すというのは些か無謀です」

「だよなぁ……。しゃーねぇ、家はなんでか封鎖されてるし宿でも取るか」


 ここいらは辺りが暗くなってき始めている時間帯だってのにギンギラ輝いて仕方ねぇからな

 無駄にはしゃいで疲れるくらいならとっとと寝ちまおう

 明日、なーんかありそうだからな


 と、いう事で俺とグレイは中央商業区の外れの方にある安い宿で一晩過ごした

 俺はなんでも贅沢したいわけじゃないし質素な店にもいいとこはある、それにこういう老舗?っつうのを巡るのは楽しい物だからな

 つっても安い店はそんなに広くはねぇし見て回ったり探検するような設備もない

 だからすぐにぐっすりと寝た



 締め切ったカーテンの隙間から差し込む薄い朝日で目が覚めた


「くぁあぁ……」


 あ”ー久しぶりに早く起きたな

 今は……九時くらいか?

 早く寝たから早く起きるってなんかめっちゃ健康的な感じがしてテンションが上がるな、眠ぃけど


「グレーぃ。水ぅ取ってくれぇ」

「……なんだか今日は早起きですねアルベリ様。はいどうぞ、少々冷たいですよ」


 グレイから受け取ったコップの水を飲み干し、勢いよくベットから立ち上がる

 大きく伸びをして、寝て凝り固まった身体をほぐす


 朝日が昇り切る前だが……やることないしなぁ 


「もう行くか?することないし早く行っても問題ないだろ」

「……おもてなしをすると言ってらっしゃったので準備にはそれ相応の自壊委が掛かるのではないでしょうか。それにあまり早くに着いて手持ち無沙汰になるのはアルベリ様は嫌でしょう?」

「おー、まぁそうか。じゃあゆっくり歩きながら行こうぜ」

「かしこまりました」



 数分くらいかけて着替えて、朝飯も喰い終わった

 寝ぐせとかもあんましなかったからスムーズに宿を出た


 朝日が昇り切る前に外に出たのは何時振りかな……姉貴が仕事で家にあんましいなくなったくらいから早くに起きなくなったんだよなぁ

 ちょい懐かしい気分だな

 ……ん?あれは──


 決して早いとは言えないペースで歩き続けてきた

 目的のバリオス邸は中央商業区の正に中央にある

 離れの宿からゆっくりと歩いて来たアルベリとグレイからしたら中々に時間をかけた散歩の様な物なのだが、バリオス邸に着く間際、アルベリが遠目に人影を見つける


 あの服……それにあの髪色、それにあの魔力……間違いなくマサミチだ

 だが、あの引っ付いてるのは……いやまさかな


 アルベリは昨日感じていた心配をよそに何かに興味が移っている

 その何かは──


「なぁグレイ」

「……何でしょうか、アルベリ様」

「あれさ、もしかしなくてもソラか?」

「……十中八九そうですね」


 アルベリとグレイ、その二人が目にしていたのは駄々っ子のような、甘えん坊の様な何とも言えない格好でマサミチに引っ付き続けているソラだった

 いつもアルベリにもガンガン喧嘩を売ったりしている強気なソラ、それが二人のソラに対する印象だった

 それが今、幼子の様に甘えているソラを見たアルベリは


 面白そうなもん、発見~♡


 と、そう考えたのであった

大分書いてなかったせいで下手になってしまった……

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