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アキラ達の訓練を終えたソウタとアヤネは、三和市の管理ダンジョンにほど近いアパートに拠点を移していた。

ある程度金銭的な余裕ができたし、そもそも孤児院から三和市の管理ダンジョンまではかなり距離があるため、孤児院からはすでに出ている。

ソウタとアヤネは新しく買ったパソコンとにらめっこしながらある動画を見ていた。

その動画には、狐の仮面を被った2人が映っている。


「やっぱり思ったようにはいかないね・・・。軽くコメント欄も炎上してるし・・・」


「まぁ全然知名度もないしなぁ。視聴者数に比べてコメントしてくれてる人が多いのを喜ぶべきか、見てる人数に比べ批判的なコメントの多さに悲しむべきか・・・」


そう、動画に映っている狐面の2人はソウタとアヤネであった。

2人はアキラ達からあるお願いをされていた。

それは、2人がアキラ達から教わった内容を一般に公開してほしいということだった。

ソウタとアヤネはアキラ達から、ダンジョン探索で必須と呼べる知識を学んでいた。

しかしその知識は一般には認知されておらず、それがダンジョン探索者の質を落としていたのだ。


アキラ達に大きな恩がある2人としては断る理由はない。

しかし、うまくすれば大きな富や名声を得ることもできる情報を、許可を得たとはいえソウタ達自身で広めることに抵抗を覚えた。

それについてアキラ達に聞くと、単純にめんどくさいという理由ではあったがとにかくソウタたちに任せるということであった。


そういう経緯があり、ソウタ達はアキラ達から学んだことを動画としてネットで公開することにしたのであった。

しかし、現実はそう上手くいくものではなかった。


「うーん、全然信じてくれてないね・・・」


「まぁ魔力感知スキルは一般的にはゴミスキルだからなぁ」


2人が最初に上げた動画は、ダンジョンのスキルの正しい知識についてとそれに伴う魔力感知スキルの習得方法についてだ。

この魔力感知スキルが全てのスキルの基本であり習得は必須ではあるのだが、なにぶん習得に相応のDPを消費する。

上位の探索者でも今まで貯めたDPが吹き飛ぶくらいの消費があると思われるし、それだけで習得できる保証もない。


当然そのような情報は他のところでは一切確認されてもいない。

そのため、2人の投稿した動画は、意図的に虚偽の情報を流している悪質な動画だと認識されているのだ。


「ほんとだと信じてもらえるように追加の動画も上げたのになぁ」


ソウタ達は今度は別の投稿動画を開いてみる。

そこにも視聴者数こそそこまで多くないが、コメント欄には批判的なコメントが溢れている。


「こっちはフェイク動画だと思われてるみたいだな・・・」


「全然フェイクじゃないのに~」


そこにはいろいろなスキルを使うアヤネが映っている。

魔力感知を習得することで、どういう事ができるようになるかの説明動画のつもりだったのだが、こちらも信じて貰えなかったようだ。

一般的にはダンジョンのスキルは3つまでしか取得できないと言われており、それは実際に正しい。

しかし、それはあくまでスキルの「取得」が一度に3つまでしかできないだけであり、スキルの「習得」数については上限は存在しない。

そのことが一般に認知されていないので、結果的にフェイク動画という認識にされたらしい。


ソウタとアヤネについても、アキラ達から教えてもらっていなければ信じられなかったかもしれないと思っているため、それについては怒りの感情などは存在しなかった。


「でも実演してもフェイクって言われるならどうすればいいのかなぁ」


「そうだなぁ・・・。このまま動画を投稿続けるべきか・・・」


ソウタは机においてある狐の仮面を見て、今後の方針を考えるのであった。

ちなみに2人が動画で被っている狐の面については、実はミズキの趣味だったりする。



ソウタ達はひとまず動画の投稿は中止して三和市の管理ダンジョンに潜ることにした。

まだ三和市のダンジョンに慣れていないこともあり、このダンジョンに慣れる目的と気分転換も含めてのダンジョン探索だ。

ソウタ達はダンジョン入場の受付を終え、ダンジョンに入った。

このダンジョンに潜り始めた当初は入場時に申告する探索予定階層でトラブルがありはしたが、それ以降は申告階層を実際よりも低めにすることで対応した。

本来であれば探索予定階層について虚偽の申請をすることは非常に危険なことであるが、ソウタ達にとってはあまり関係がなかったためだ。

救助隊が来れる階層よりも深く潜っていることが多いし、なによりダンジョンの1階に転移できる帰還のオーブを2人とも所持している。


ちなみに帰還のオーブについては一応一般に認知されてはいるが、過去に数個しか発見されていない非常にレアなものである。

とはいえあくまでも低階層ではレアなだけであり、アキラ達が潜る階層では必須のアイテムである。

ソウタとアヤネもアキラ達の教育もあり、ダンジョン探索に必須のアイテムと認識しているのだった。


「やっぱりあっちのダンジョンに比べて見通しが悪いなぁ」


「まぁこっちは洞窟型のダンジョンだからな」


三和市の管理ダンジョンは、内部が鍾乳洞のような洞窟になっている。

アキラ達と散々潜っていた管理外ダンジョンが森林のような空間になっていたのと比べると、こっちのほうがかなり狭く感じる。

実際一部屋の大きさはおそらくこちらの方が小さいし、なにより石の柱などにより見通しが悪い。

全体的なダンジョンの空間としては、どのダンジョンでもおおよそ同じくらいの領域を持っているらしいが、ダンジョンの種類や場所によっては部屋の数や大きさが変わってくるらしい。

天井には変わらず光る石が埋め込まれている。


ソウタ達は5階層まではほとんどダンジョンの探索は行わず一直線に降りていった。

そろそろ探索を始めようということでアヤネが提案する。


「猫ちゃんたちを出したほうがいいかな?」


「ああ、そうだな。頼めるか?」


アヤネはうんと頷いたあと目をつむって集中し、自身の影から子猫サイズのクロネコを3匹召喚した。

これはアヤネの使い魔であり、戦闘などはできないがモンスターや他の探索者を探知する補助を担ってくれる。


「じゃあお願いね~」


アヤネが使い魔達に簡単に指示をすると、クロネコ達はアヤネ達が進む方向へと先に進んでいった。

これでアヤネは使い魔を中継としてより広い範囲の魔力探知ができるようになるのであった。


このスキルはもともとはミズキが多用していたスキルだ。

習得難易度も高いためアキラ達はそこまで優先してソウタ達に教えるつもりはなかったのだが、アヤネの強い希望でアヤネのみこのスキルの習得を行ったのだ。

そのためソウタは習得していないスキルではあるが、ダンジョン探索においては非常に有用なスキルではあるので、アヤネが習得してくれて助かったのは間違いない。


アヤネが使い魔を介して周囲を探知しながら進んでいく。

探索者がいそうな部屋はさけ、モンスターが多そうな部屋は寄り道して倒していく。

今のソウタたちにとってこのあたりの階層で探索することはそれほど旨味のあるものではないが、せっかくなのでモンスターは倒していく。


そして暫く進んで7階層に到達した後、アヤネは今までにないような大量のモンスターの気配を感じたのであった。

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