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アキラ達は男から紹介された買い取り屋に来ていた。
放棄された住宅を改造して使っているらしく、外見は店らしくないものであった。
中に入ると、カウンターで老婆が店番をしていた。
「ん?これはまた珍しいお客さんだねぇ」
老婆がアキラ達を見て呟く。
「ここってこれ買い取ってくれるって聞いたけど?」
アキラがそう言って魔石を取り出す。
「ああ、魔石だね。買い取りしてるよ。結構いいもんじゃないか。他にもあるのかい?」
「ああ、一応何個かある」
アキラが店の老婆と話をしている間、ミズキはカウンター裏においてある商品らしきものを見ていた。
「へー、ダンジョンで取れるものを扱ってる感じなんだねぇ」
ミズキの言葉に、老婆が答える。
「そうだね。それだけじゃないが、ダンジョンで手に入るもんは需要があるからね」
アキラがいくつか換金する魔石を取り出し、それを老婆が受け取る。
これならこんなもんだねと、老婆がお金を取り出した。
見ると日本国円になっているが、2人が知っている通貨とはやはり若干違うものであった。
アキラたちは魔石の相場をしらないため、とくに交渉せずに老婆が提示した金額で了承した。
「それでだ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「なんだい?あんたら妙な格好だが、一応探索者なんだろ?こんなとこで換金するくらいだから訳ありなんがろうが」
「そうなんだよ、ちょっといろいろとあってね。常識に疎いところがあるんだ。いろいろと聞いてもいいか?」
「まぁ内容によるが、いい取引をさせてもらったからねぇ。とりあえず言ってみな」
「それなら---」
◇
アキラたちは買い取り屋の老婆から色々なことを聞いた。
それこそ、ここは日本なのか、今何年なのかなど、常識的なことから、ダンジョンについてなどいろいと。
老婆はアキラ達のことを非常に怪しんでいたが、金になると分かれば正直に教えてくれた。
結論から言えば、ここは日本であり、約60年前にダンジョンが各地に発生して、管理できなくなった地区を国が放棄したらしい。
ここ数十年で海外とのやり取りは途絶しており、日本国内だけですべての食料、エネルギーなどをまかなう必要があり、そのためダンジョンを活用しているらしい。
また、探索者というダンジョンに潜って資源を回収する職業もあり、危険は承知で結構人気の職業らしい。
「しかし、身分証の提示が求められるんだな、やっぱり」
買い取り屋が言うには、ダンジョンで取得した物品については国のダンジョン管理局が管理しており、売買には身分証が必要になるとのことだった。
アキラたちが身分証を持っていないことを知ると、買い取り屋は身分証を作ってやろうかと話を持ちかけてきたが、あきらかに違法のものっぽかったのでとりあえず保留にした。
最悪は頼むことになるかもしれないが、当面必要な訳では無い。
街に入って普通の買い物をするくらいなら、特に身分証も必要ないとのことだ。
「でも街に入れるのはよかったよ。せっかく帰ってきたんだから久々の日本食を堪能しないとなぁ」
ミズキが楽しそうに笑う。
そもそもアキラと違い、日本に帰ることをそれほど重視していなかった。
しかし帰れることを知ると、それならとアキラについてきたのだ。
「そんじゃまぁ、ひさびさの日本を満喫しますかね」
アキラ達2人は、管理区画に向かうことにしたのだった。
◇
-- 買い取り屋の老婆 --
「婆さん、あいつらはどうだった?」
管理外地区の町でアキラ達が取引していた買い取り屋の老婆のものに、一人の男が訪れていた。
「ああ、不思議な連中だったねぇ。ただ、手出しはしないほうがいいよ」
それを聞いて男は若干驚いたような表情となる。
「ほぉ。婆さんがそんなこと言うのも珍しいな。結構お得意さんになりそうだったのか?」
「それもあるが、そもそも怪しすぎる。おそらくは外国のスパイかなにかだろう。それにしては目立つ格好をしていたがね」
老婆は先ほどの2人について思いだす。
男の方はまぁ比較的普通と呼べる格好だったが、女の方はどう見ても頭がおかしいと思うような格好をしていた。
こんなモンスターが襲ってくるような場所で着飾ってどうするというのか。
その点はスパイには不釣り合いのように感じたが、女の方が陽動して、男が隠れて行動するのかもしれない。
老婆の回答に、男は驚いたような表情になる。
「それは・・・、他の国は他国にスパイが送れるほど復興したということか?」
「それはわからないねぇ」
あの2人はここが日本ということすら知らなかった。
もはや人工衛星も活動を停止し、GPSも使用できないような世の中だ。
なんとか日本らしき場所に上陸できたはいいが、ここがどこだか確信はもてなかったのだろう。
いろいろと一般常識的なことも聞いてきたが、ここ数十年の日本の情報が欲しかったとしたら理解できる話だ。
「私にとっちゃ儲けさせてくれるのなら何でもいいさね」
「まぁ婆さんからしたらそうか。とりあえず手を出さないように皆に言っておくわ。なにかそいつらのことでわかったことがあれば教えてくれ。それなりの値段で買い取るぜ」
「おお、そりゃあ助かるねぇ。楽しみにしてるよ」
男の提案を聞き、老婆は嬉しそうに笑った。




