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やまねこ隊の配信が終わってしばらくしたある日、ソウタ達にやまねこ隊のタツアキから連絡が来た。
どうも、やまねこ隊が配信をした内容を見て自衛隊の人が話を聞きたいという話があるということらしい。
それについてソウタ達に関する情報提供についてと、話の場を設けることについて、ソウタ達に可能かどうかの確認を取るために連絡してきたとのことだ。
「お兄ちゃん、どうする?」
「まぁ断る理由もないからなぁ」
内容は以前のダンジョン探索時のモンスターハウスの件らしく、ソウタ達にとっては特に断る理由はなかった。
そのためソウタ達はやまねこ隊に問題ないと返信をする。
そして具体的な日程を決めて、ダンジョン管理局、自衛隊、やまねこ隊、ソウタとアヤネで、会って話をすることとなったのであった。
話自体はダンジョン管理局からやまねこ隊に来た話であり、日程や場所の調整は管理局が行うらしい。
ちなみにやまねこ隊もしれっと参加する予定になっているのは流石だなと思ったソウタであった。
◇
-- とある管理局の役人 --
私は管理局の建物内の一室で座って待っていた。
隣には自衛隊の田万川さんが私と同様に椅子に座って目的の人物が来るのを待っている。
自衛官の制服のぴしっと着こなした壮年の男性だ。
今回管理局に依頼を持ってきた人でもある。
「沢田さん。今回の件、どう思いますか?」
「そちらでも確認されているかと思いますが、あの動画に関しては無編集であることが確認できています。にわかには信じられないですが」
私達はとある動画の真相を当事者に聞き取りするために集まっている。
これからやまねこ隊と名乗って活動している探索者と件の動画に映っている2人がここに来る予定だ。
動画はやまねこ隊から提供してもらったもので、事前にいろいろな専門家などに解析をお願いしていたのだ。
「編集が無いことはこちらでも確認しております。しかし、自衛隊におけるダンジョン探索のプロでもあれほどのことができる者はおそらくいないでしょう」
その言葉に私は驚きの声を上げる。
自衛隊は日本におけるダンジョン探索ではトップを行く存在だ。
もちろん一般の探索者では使用できない重火器などのおかげである部分もあるが、それでも最もダンジョンに精通しているのが自衛隊のダンジョン部隊である。
田万川さんは更に話を続ける。
「もちろん重火器を使って複数人で当たれば、あの規模のモンスターハウスでも処理できるでしょうが、2人では無理でしょう。しかも話に聞くところによると、件の2人は探索者登録して間もない上、年齢も非常に若いという話です・・・」
やまねこ隊に事前にある程度聴取をしたところ、いろいろと驚くべきことを聞くことになった。
その一つはやはり彼らの年齢だろう。
なんと一人は17歳、もう一人は中学卒業してすぐの15歳だという。
「それについては私も非常に驚いています」
今回の会談が決定してから、今日までに一応件の2人について調査を行ったが、あまり有用な情報は出てこなかった。
あくまで今回は管理局で保持している情報を対象に調査を行ったためでもある。
さすがに今の状態では探偵まがいのことまでして調査することはしなかった。
「しかし確かに初心者とは思えないような高階層のアイテムをたびたび換金していたようです」
「なるほど・・・、それはどのくらいものですか?」
「報告によると、大体10階層くらいまでのものらしいですね。しかし毎回ではなかったため、担当者も単純に運が良いと思っていたようですが・・・」
ダンジョンのドロップアイテムは階層により固定ではなくランダム性があるため、低階層でも10階層くらいのアイテムが稀にだがドロップすることもある。
「そうですか・・・。それを聞くと信憑性も少しはありそうですね・・・。--いえ、疑っているわけではないのですが、何か新しい希望になればと思っておりまして・・・」
自衛隊でもダンジョンについては非常に苦慮しているようだ。
ダンジョンはたしかに今の世の中、資源として非常に重要なものではあるが、それと同時に非常に大きな脅威でもある。
なんとか管理区域内のダンジョンについてはモンスターの発生を制御できているが、管理外のダンジョンについてはモンスターが溢れている状況だ。
今はまだなんとかなっているが、今後さらに人類の生息範囲が狭められる可能性は十分にある。
件の2人はその自衛隊が知らない情報を持っている可能性が高い。
普通の人間ではなし得ないような動きをしていたし、動画では判断できなかったが何かしらのスキルを使用している可能性がある。
現在の情報では、あのようなことができるスキルは確認されていないのだ。
「とりあえず今は、待ちましょう。予定ではもうすぐ来るはずです」
私はそう言って田万川さんを落ち着け、私自身席について2人が来るのを辛抱強く待つのであった。
◇
ソウタ達が指定された管理局の建物へ向かうと、すでにやまねこ隊の2人、タツアキとサクラが入り口のところで待っていた。
「よう」
「こんにちは」
タツアキとサクラの挨拶にソウタ達も答える。
「こんにちはー」
「こんにちは。待っててくれたんですね」
「ああ、まぁいろいろ話したいところではあるが、とりあえず中に入るか。先方も待ってるだろうしな」
そう言ってソウタ達とやまねこ隊の2人は玄関へと向かっていった。
玄関を入ってすぐ、受付で要件を伝えるとすぐに係の人が目的の部屋へと案内してくれる。
「こちらです」
そう言って開けてくれた扉に入ると、2人の男性が中が待っていた。
彼らはソウタ達が入室するとすぐに立ち上がり、礼をする。
「こんにちは、本日はお忙しいところご足労いただきありがとうございます。それではこちらへどうぞ」
管理局の職員らしき人に進められ、4人は席につく。
どうも今回の会談をセッティングした管理局の人と、自衛隊の人らしい。
先ほどこの部屋まで案内してくれた女性職員も補助として参加するのか、こちらは座らずに後ろに控えている。
そこでそれぞれの自己紹介を簡単に済ませ、さっそくと本題に入る。
「こちらの動画についてですが・・・」
管理局の男性がそういうと、後ろの職員がPCを操作してプロジェクターに動画を流す。
それはやまこね隊が撮影した、ソウタ達がモンスターハウスで戦っている映像であった。
「この動画についてはご存知だと思いますが・・・、単刀直入に聞きますがこの2人は・・・君たちで間違いないでしょうか?」
いまだ半信半疑のような職員が、ソウタ達に質問する。
ソウタ達はそれに、はいと頷いた。
ソウタ達の反応に、わかってはいただろう管理局と自衛隊の面々は改めて驚きの表情を見せた。
「なるほど・・・。いや、疑っているわけではないのですが、どうもにわかには信じられないことでして・・・」
管理局の男性は言葉の通り、何も疑いたい訳では無いがソウタ達を見てやはり確証が持てないのだろう。
そこでやまねこ隊のタツアキとサクラが助け舟を入れる。
「そこに映っているのは間違いなくコイツラですよ?なあ?」
そういってタツアキがサクラの方に顔を向ける。
「うん。当時見たときは私も目を疑いましたから・・・」
2人の言葉にまた「なるほど」と呟く職員。
今度は自衛官のほうがソウタ達に質問を始める。
「これはスキルか何かを使っているんでしょうか?うちの隊員にも見せましたが、格闘技のエキスパートでも無理だと言ってましたよ」
「それはもちろん使ってます」
「それは具体的に何かお聞きしても?」
質問されたソウタ達はなにを使っていたかなと当時を思い出す。
「正確なスキル名とかはわからないですけど・・・、主に使ってるのは魔力探知とか強化とかですね・・・」
その言葉に不思議そうな顔をするソウタとアヤネ以外の面々。
「魔力探知と強化だけであれだけのことを・・・?」
魔力探知については一般にはあまり使いがっての良いスキルではないという認識であるし、強化スキルについても動画内であるような動きができるほど身体強化率があるわけではないはずだと自衛官は考える。
そこで自衛官の男性がすっとカード状の物をソウタ達に差し出してきた。
「これはご存知ダンジョンカードですが・・・」
ダンジョンカードについては当然ソウタ達も知っている。
探索者登録すると誰もがもらえるものであるし、そもそもダンジョンのDPストアで購入もできる。
探索者が触れることによって、その人の所持DPや所持スキルを確認できるのだ。
確認できるのは、あくまでもスキルオーブを使用して取得中のスキルのみであるが。
ダンジョンカードにはその他にも重要機能がいくつかあるが、一般的に有名なものはこの機能だろう。
なおダンジョンカードは触った人によって内容が表示されるため、自分の持っているカードでなくてもどのカードでも触れば自分の情報が表示される。
「このカードで取得スキルを見せていただくことはできますか?もしあまり人に見せたくないようでしたら人払いしますし、内容はできるだけ伏せるように配慮します」
「あー・・・。見せるのはいいですけど・・・」
ソウタも別に断る理由がないのだが、今は取得しているスキルは特になかったことを思い出す。
まぁそれについても説明するいい機会だろうと、深くは説明せずにソウタはカードに触れて、スキル表示が見えるようにテーブルの上に差し出した。
「「「!?」」」
そこになにも表示されないことに驚く4人。
ソウタはすかさず補足情報を追加する。
「すみません。今はどのスキルも取得してなくて・・・。ちょっと次なにを取得しようか考えてたんで」
そう言われて確かにダンジョンでは取得済みのスキルを削除する機能があったことを思い出す面々。
いち早く復帰したサクラが、その疑問について質問を投げかける。
「それは取得していたスキルをわざわざ削除したってこと!?」
「そうです。ええと・・・」
「なんで!もったいないじゃん!?」
「いや、だってもうできるようになったから・・・。残したままだと逆に邪魔なんですよ・・・」
オーブを使用して取得するスキルは、ダンジョンの補助により発動できるようになるものだ。
完全に自分で発動できるように習得したあとは、その補助が邪魔となる場合が多々あるのだ。
今度はタツアキが落ち着いて質問する。
「それは・・・、ソウタ達からしたら何かスキルを削除する理由があったってことか?」
ソウタはその質問に頷き、ダンジョンのスキルについての知っている知識を皆に説明していくのだった。
いろいろと推敲できていない部分もあるので、将来的には少し手を入れるかもしれません(しないかもですが・・・)




