再会編1
舞欄高校1年1組の生徒達は、とある森にいた。
皆、強くなっていた。
そんな生徒達を尊敬の眼差しで見上げる、これまた生徒達。
現在、舞欄高校1年1組――勇者達と地元の騎士学校の生徒達は、合同訓練を行っていた。
勇者達のひとりひとりにファンがいる。
中でも最も多いのは、白亜だった。
アイリもそのうちの一人だ。
「大丈夫?」
他の白亜ファンなら熱狂しているはずだが、アイリは憧れの白亜に話しかけられたにもかかわらず、落ち込んでいた。
「はい」
ただ、本人はそれをうまく隠しており、いまの白亜の問いかけは、転んで膝を擦りむいたことへの心配だ。
「そ、その、怖かったら、俺が……守って……なんでもない!」
黒髪の短髪の少年、ケインが顔を赤らめて逃げていく。
そんなケインを見つめ、次にアイリを嫉妬の籠った目で睨むそばかすの少女に、アイリは頬を掻いた。
「それにしても、今ごろ無神君なにしてるんだろうね?」
「ねー。集君なにしてるんだろう」
……シュウ?
アイリはぱっと顔をあげる。
そして、勇者の女子達の会話に割り込む。
「シュウって、誰ですか?」
「あー。一緒にこっちに連れてこられた子なんだけど、連れてこられてすぐに行った森で私たち、リッチに襲われたのよ。で、その集って子は一人だけ遠くへ逃げちゃってね。今どこにいるのか分からないの」
「スティア王女が言うには、凄腕の冒険者に拾われたから、逆にこっちにいるよりも安全だろうって」
まさか、シュウは勇者だったのだろうか?
いや、まさか。
「そのシュウって、属性はなんですか?」
「たしか、氷だったような……」
そんな、まさか……。
いやいや、偶然だと、アイリは可能性を否定した。
あの日から、アイリは一度も忘れたことはない。
今は亡きシュウを思い、アイリは涙する。
「え!ど、どうしたの!」
「あ、いえ、なんでもありません」
余計な心配をかけてしまった。
今は忘れておこう。
そう思い、アイリは笑顔を取り繕った。
「どうしたアイリ!寂しいなら、俺が…………なんでもない!」
またしても顔を赤らめて逃げていくケインを、少女達は微笑ましく見送った。
「あんなマナ量100しかない雑魚なんか忘れろよ」
「鎌戸君ひどくない?無神君は同じクラスの仲間じゃない」
突然悪口をいい始めた少年が気に入らないので、アイリは少し場所を移動する。
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天界。
美しい者達の住まう、美しき世界。
その光溢れる世界の、最も偉大なる者のみが座ることの許される、至高の場所。
玉座、ゴッドレコード。
そこに座る、美貌の天使ユリエルは、その側近から言われる。
「あの、ユリエル様……そろそろ伴侶を決めていただきたく……」
「もう決めてありんす」
「!……なんと!!……それはどのようなお方でしょう?」
「人間界に行くでありんす」
「………はい?」
「だから、人間界に行くでありんす」
「それだけはなりません!あそこには、あの恐ろしい『無なる者』が!」
「ええ、行くでありんす」
「ですから!あそこには、あの『無なる者』が!」
「はぁ~~♡」
「分かりましたか!あそこだけはなりません!」
「……行くで……ありんすぅ~~♡」
「ああ、もう!」
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「おい!その柱は垂直に立てるな!」
「はーい」
「俺らがこうして生きているのも、全て『白銀の救世主』様のおかげだな……」
「え?お前そっち派?どう考えても『終焉の英雄』様だろ?」
「違うわよ!『愛しの英雄様』よ!」
「それなんか違くね?!」
「どうでもいいから木材運んでくれ!……あと『神々の覇者』が正解だぞ」
「ちげーよ!『めっちゃ強いやつ』だよ!」
「なんですの?!そのダサい呼び方は!正しくは、『麗しの君』ですわ!」
「ちげーよ!」
「あなたこそ違うわよ!」
「お前こそちげーよ!」
「わたくし以外違いますわ!」
集が去ったあと、大陸では、国家がちゃくちゃくと再建されていた。




