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魔王編4

 超絶魔法も見れたし、あのまま見ていても一方的に帝国が壊滅するだけでつまらないので、ルリアは最近発見したダンジョンで遊ぶことにした。

 そこは、魔王と勇者の戦いの場所から遠く離れたとある森。

 この辺は人間にとっては強すぎるモンスターがうようよいるので、未だ人間にはこのダンジョンは発見されていない。


 入ると、早速オーガがお出迎えだ。

 オーガでさえも、人間にとっては強いモンスターなのだ。

 人間とは、どれほど弱いのか。

 オーガなど、魔法を使うまでもない。

 ちょっと走って手刀を叩き込むだけで、簡単に首が落ちる。

 ヴァンパイアは身体能力も桁違いなのだ。


「うふふ、弱いですわ」


 オーガ7体が一瞬で葬られる。


「《帝王の威圧(コードレガリア)》」


 ルリアが圧倒的な存在感を放つ。

 これで、ある程度雑魚はよってこない。

 時々出てくるモンスターを瞬殺しながら、ルリアは何階層も降りていく。


「аκκаωΟаΟн」


 大きなモンスターが立ちふさがる。

 硬機エンシェントゴーレム。

 ゴーレム種の最上位種。

 ルリアが神級魔法を使うに足る相手だ。

 ルリアのもつ最も攻撃力の高い魔法で、すぐに決着をつける。


「《断罪の極光(ジャッジメントレイ)》」


 流石最高位種だけあり数秒は耐えたが、すぐに体の中心に直径2メートルの穴が空き、息絶えた。

 この辺りのモンスターは大分強い。

 最下層には果たして何がいるのか?

 もしサファイアドラゴンやエメラルドドラゴンなど、ドラゴン種の最上位種が出てきたら手に負えないが、暴剣ゴブリンエンペラー位なら戦える自信がある。

 ふと、少女の声が聞こえてきた。


「らん、ららん、ららん」


 空色の髪の少女がスキップで現れた。


 ――なんだこいつ!


 少女が近づくにつれ、ルリアのヴァンパイアとしての何かが警鐘を鳴らす。

 まず、このダンジョンのこんな深くに人間がいることがおかしいし、それがなんの武器も持たないワンピースの少女なこともおかしい。

 こんな場所でスキップしていることもおかしいし、それにヴァンパイアである自分がこんなに怯えていることがおかしい。

 何もかもがおかしい。

 魔王なんてゴミのように思えるほどの何かを秘めていながら、見た目はどう見てもただの少女だ。

 ………謎過ぎる。

 ひょっとして精霊なのだろうか?

 いや、それはない。

 精霊は周りにマナが漏れでているのだが、彼女からは一切漏れでていない。

 人型精霊は保有マナ量が少ない筈はないのにだ。

 少女は、《帝王の威圧(コードレガリア)》で圧倒的な存在感を放っている筈のルリアの横を、気にもとめずに通り過ぎる。

 これで普通の人間な訳がない!

 少女が通り過ぎたことで、体の震えが止まる。

 一体、なんだったのだろうか?



 ∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈




「ドラゴン種の最上位種ってなんで二つ名がつかないの?」


「一説では、最上位種が複数存在するからと言われていますが、私は違うと思います」


「スティアさんはどう思ってるの?」


「私は、ドラゴン種の最上位種は他に存在すると思います」


「スティアさんはどんなドラゴンが最上位種だと思ってるの?」


「そうですねー。あの4種の上ですから、うーん。想像がつきませんね」



 ∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈


 円卓がある。

 そこで、3人の黒いローブの男達が話し合う。


「どうしたのだ。急に円卓会議など」


「結論から言おう。魔王軍が壊滅した」


「「なっ……」」


「魔王はどうなった?」


「失踪した」


「そうか」


 3人は、過去の記録に目を落とす。


 ――救世主計画。


 その、悪魔の実験を。

 魔王誕生の瞬間が記された記録。


 大陸で最も優れた魔法師の骨を全て抜き取り、魔骨ノーブルリッチを移植するという禁忌の実験。


 実験は成功した。

 そう記されている。

 しかし、結果はどうだ。

 その実験を行った国、神聖ホール帝国をはじめ、周辺の国々を、魔王は破壊しつくした。


 だが、その魔王の強さでも足りないことを3人は知っている。

 もし仮に魔王が理性を持ち、人類に味方するとしても、それでは足りない。

 魔王は救世主たり得ない。

 無論、異世界から召喚された勇者など、話にならない。


「我らバハムート教は、新たな計画を進めなければならない」


「新たな計画?」


「魔王軍を壊滅させた者を探しだし、救世主とする」


「ほう」


「では計画を整理しよう。その者を救世主とし、どうするのだ?」


「その者を徹底的に鍛えあげ、終焉の神と対峙しても数秒は持ちこたえられるほどの実力をつけてもらう。その間に我々がこの古代文明秘宝中の秘宝、ワールドゲートを取り付ける。あとはそれを遠隔操作で起動させ、終焉の神を異世界へとばす」


「異世界の住人に申し訳がないな」


「だが、これで我らの世界がすくわれるのだ」


「うーむ」


「だが、終焉の神を相手に数秒耐えるなど、可能なのか?」


「望みは薄い。だが、可能性は零ではない」


 知らないうちに熱くなって前のめりになっていた3人は、それに気づいて姿勢を整える。


「ただ現在一番の問題は、マクヌール派だ。彼らは、終焉の神の位置をだいたい掴んだという噂が流れておる」


「それは真か!」


「……まずい、まずいぞ。救世主もいないのに終焉の神を目覚めさせられたら、人類などあっという間に滅ぶぞ」


「バハムート教の異端め……」


 重苦しい沈黙が支配する。


「終焉の神を目覚めさせないという計画はどうなった?」


「救世主に寿命がある以上、救世主がいるうちに終焉は取り除いた方が良い。いつ目覚めるか分からんからな」


「そうだったな」


「ともかく、我らシハベリ派は、例の者を探し出す。よいな」

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